はじまりの里
「そんな……。ウソよ……」
少女は青ざめると、何かを呟きながら家の壁にもたれ掛かった。体調でも悪いのだろうか?
ならば仕方ない。後で俺のスキルを使って検査してやろうではないか。
「真実ですじゃ、姫様。オババのババ占いに間違いはございませぬ」
「でもっ! だって、あの伝説は村一番のうんちを出す人が選ばれるって、オババ様が……!」
「左様。勇者の供を定めらし村一番の《大糞出し(おおくそだし)》、それが姫様なのですじゃ」
「そんなっ!?」
「「「うおおー! 糞神様バンザーイ! 我らが糞姫様、バンザーイ! 新しい糞巫女様の誕生だ!!」」」
村中がこれでもかというくらいの歓喜に沸いた。
酒だ、祭りだ、めでてえなどと大騒ぎだ。心暖まる光景である。
「わ、わたわた、私が、村一番の大糞……ああっ」
だが喜びも束の間、気を失って倒れ込んだ少女を見て、俺たちは一瞬にして静まり返ってしまった。
「なんと!? 姫様!?」
「ブリッ!(いかん!)」
俺と老婆が慌てて駆け寄ると、悪夢にでもうなされているかのような荒い呼吸で、少女が何やら「イヤイヤ」と呟いている。やはり重い病か!?
「ブリッ!(老婆よ、離れるのだ! これより我が《アルティメット・ウンコ・スキル》の、直腸検査を敢行するッ!)」
直腸検査とは、ノーマルスキルの鑑定の兆倍の性能を誇り、創世の神魔すら看破する糞野郎固有のスキルである。
検査後は尻穴が少し大変なことになるかもしれんが、多分大丈夫という信頼性の高いスキルだ。
「ブリ(よし、始めるぞ)」
「お待ち下されっ、糞神様っ!」
息も絶え絶え(精神的に)といった少女の尻を丸出しにしようとした俺を、老婆が慌てて止めに入った。
「ブリッ(老婆よ! 何故、邪魔をするのだ!?)」
「糞神様っ、姫様は痔なのですじゃ!」
「ブリッ!?(馬鹿なッ!?)」
老婆の突然の(他者のプライバシーを)カミングアウトにより、村中がざわつき始めた。
小さな村だけあって、3秒で全村民に知れ渡ったようだ。
「ですから糞神様、この秘密を漏らぬため、どうか姫様が大痔主であることは御内密にお願いしますじゃ!」
「姫様が大痔主だって!?」
「あの若く美しい姫様が!?」
「なんとお労しい……」
村中のザワザワが倍増したか。うむ。ドンマイ、少女よ。