少女と、糞の勇者
――暗い。ただただ暗い。
「……ふぅっ。スッキリしたわ。やっぱりお野菜はちゃんと食べなくっちゃね」
――臭い。ただただ臭い。
「さてと、後は業者さんに頼んで、溜まったうんちを《便上の光ウォシュレット・エターナリィ》で大地に還すだけね」
――なんだと!?
「ブリ(……メロ……)」
上の隙間から見える、少女のケツ的なものに語りかける俺。
「!? 誰ッ!?」
「ブリ(ヤメ……ロ……)」
驚いた少女が、下を向いた。その顔は恐怖に歪んでいるようだ。
「ブリリ(……ヤメロ。女よ)」
少女の、その透き通る真珠のような顔が、みるみるうちにブルー○ットのような色へと変わっていく。
「う、嘘……。私のうんちまで、魔物化を……?」
首を振り、否定する。
「ブリリ(魔物ではない。俺は女神様より遣われし、聖なるウンコだ。故あってお前の尻からひねり出されたようだがな)」
うんしょっと、と言いながら便器から這い上がると、俺に向かって兄弟たちが手を振ってくれていた。満面の笑みだ。きっと、応援してくれているのだろう。
どうやら俺は、他のウンコたちの気持ちがわかるようだな。
「きゃあああっ! 這い上がってきたわっ!」
トイレの隅に背中を押し付けるようにして逃げ、ヤダヤダ来ないで来ないでと首を振る少女に、ずるり、ずるりと這い寄る俺。
少女の瞳から光は完全に消え失せているが、まあ何とかなるだろう。
「ブリィ(そして女神様はこう仰っている。『少女よ、この世界を救うには貴女の力が必要なのです。その太くご立派な黄金をひねり出す力が』とな)」
「ううう、嘘よっ! 私のうんちはそんな立派じゃないもの! 女の子らしい可愛いうんちだもの!」
便器の中に溜まった超高校級、いや、オーガ級の太さを持った兄弟達が、ブリブリッと嬉しそうに飛び跳ねている。
女の子らしいかはさて置き、言われてみれば確かに可愛いな。