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【学校】

 【学校】

 

 おっと、また俺のターンか。

 次は学校行こうか。

 

 昔は学校の怪談って映画がシリーズでやってたんだが、姫ッち世代は知ってるかな?

 あ……やっぱ知らない、か。

 

 俺が中学辺りで廃れたからなぁ。架空の恐怖より、現実の恐怖のほうがより怖いしな。

 

 で、この学校の話ってのは、「紫の鏡」から始まる。

 

 〜〜〜〜

 

 学校の怪談の話にこぎつけて、小学生の数人が集まって、肝試しをやることにしたんだ。

 だが、そこで起こった不思議な怪現象。

 

 運動場に、懐中電灯を持って、全員集合。

 気分を引き上げるためにか、懐中電灯は二つだけ……

 気を引き締めて、集まった六人は学校にタッタッタッタと侵入していくんだ。

 

 さて、この学校にある教室のドアの窓と、廊下に面した手洗い場――金属製の洗面所にある鏡と窓で、実は『鏡合わせ』ができあがっちまうんだな。

 今の小学校にはあるのかな、廊下の手洗い場。便所に備わってる奴じゃなくて、単に手洗いのみ、洗面所だけってやつ。

 まぁ、俺の学校にはあったんだよ。細長くて金属製で、よくゴシゴシ掃除してたよ。

 

 でだ、その合わせ鏡が出来上がっちまって、急に鏡が紫に輝きだしてな、生徒が全員、飲み込まれちまったんだよ。

 

 紫の鏡、で連想して現れるのは紫婆ってのが相場かな? だかコイツはこの話では単なる入り口。

 紫って色霊では『成仏』『霊界』とかの意味に当たるんだとさ。

 

 で、次はアリスの話になっちまう。

 鏡の世界だ。

 

 ただし、そこは現実の学校で、現実の世界で、鏡合わせみたいにアベコベになった世界。

 なんであべこべって言うんだろうね、リナっち、検索して後で調べてみて。

 

 生徒たちは脱出を考え、もう一度合わせ鏡を作ろうとして、ガシィッ! て、何か変なものに阻まれたんだ。

 ハラハラハラ、どき、どき、ドキッ、ドキッドキドキ――――

 最初に気づいた生徒は、足に何かが絡まっている、と思って、

 バクバクバク、バクッバクッバク!

 

 ……足元を見たら……

 

 下半身の無い人に、捕まえられてたんだ。「あし、くれ……」って。


 はい、有名なテケテケさんですね。

 

 思わず悲鳴をあげて逃げ出した先には、運動会で使う大玉が転がってきて、ニャリ、と口だけが笑ったんだ。

 まるでゲームみたいな大口が開いて、中から犬歯が剥き出しに見えて、生徒たちは一斉に逆走。

 ところが、覚えていた道と場所がまったく違う。

 なぜなら、鏡向こうの世界だからね。道順も全部あべこべになってしまったんだ

 

 見覚えがあるけど、逆転した世界で混乱していると、どこかの部屋から音楽が――音楽室が近い。

 そして音楽室の傍にはトイレがあって、トイレには鏡があったはずだ!

 

 とりあえず、音のする部屋をゆっくり、通り過ぎようと思ったけど、扉が開いた。

 予想通り、壁にかかっていた作曲家たちの顔が歌ったり踊ったり酒を飲んだり……

 

 お酒?

 

 なんと、中央には……鬼、がいるじゃありませんか。

 生徒の誰かが「酒天童子だぁ!」と、叫ぶと――鬼が気づいて追いかけてきます。

 

 生徒たちは散り散りになって、トイレに逃げ出しました。

 男子は男子便所、女子は女子便所に。

 

 鬼は……女子トイレに入りました。エロイですね。何、話し手の俺がエロイだと?

 ……否定はせん、ドツボに嵌りそうだから続ける。

 

 で、ただ黙って逃げてるわけにもいかず、女子トイレに行ったと気づいた男子の一人が、用具箱からモップをとりだし、もう一人はすっぽんを手にし、最後の一人はバケツを構えて、女子トイレに侵入。

 男の子、大人の階段へ一歩、上ります。

 

 鬼が、一個一個、トイレを調べようとした背後から、ガボッ! と頭からバケツを被せ、手当たりしだいにモップでガンガン殴りつけ、女子を救出、とどめにお尻にすっぽんを突き立てて、鬼を退治し、皆大慌てで逃げ出しました、と。

 

 おばけと戦えることを知った生徒たちですが、怖いものは怖い。

 

 

 最後は、脱出――合わせ鏡のお話。

 

 結局、一階の職員室まで下りて、卒倒しかけます。

 ペラペラペラペラペラ〜〜〜……皆のテスト用紙が大暴れしていました。

 

 シュレッダーから撒き戻しで吐き出される紙切れが宙を舞い、担任の先生の机からはテスト用紙が生徒に襲い掛かり、その中の一人が自分の得点を見て驚きます。0点でした。

 でかでかと「わかりません」と答案いっぱいに書いてたら、そりゃ0点でしょう。ただし、それも鏡文字で。

 

 で、ガキどもは女性教諭の机の上に、案の定、コンパクトの鏡があり、それを使って合わせ鏡にしようと考えていました。

 

 テスト用紙が一斉に集まって、生徒たちを包んでしまおうとして、一人の男子が男性教諭の机から、ライターを取り出して、火をつけました。

 

 当然、事態はホラーからボヤ騒ぎへ。テストは何枚も燃え、スプリンクラーが発動して、職員室内をびしょ濡れにし、室内を目茶目茶にして、ついでに仲間に火のついたテスト用紙が飛び掛ったり、大変な目に。

 

 だけど、女性教諭のコンパクトを手に入れて、生徒たちは一目散に逃げ出した。

 さぁ、トイレの鏡へ突入しようとして、鏡から紫の手が伸びてきた。

 

 女子が気転を利かせ、その手にコンパクトを翳すと、手はその鏡に吸い込まれて、無限の鏡向こうに消えていってしまったとさ。

 

 それから勇気を出して、全員が合わせ鏡の向こうに飛び込んで、脱出。

 

 〜〜〜〜

 

 さて、オチが二つあったりする。

 

 一つ目は、懐中電灯。

 大冒険の末、全員がほっと安心した瞬間、学校を後にした瞬間、懐中電灯がぱっと消えちまったんだ。

 慌てて予備の二本目をつけて、最初の懐中電灯を調べたんだ。

 

 

 電池が入ってなかったんだ。

 

 

 二つ目のオチは、後日、学校へ頑張って登校すると、職員室が現れて、テストが燃やされる事件に加えて、不審者が便器に突っ込んだまま気絶していた姿が発見されて、大騒ぎ。

 何から何までマッチングしていたので、忍び込んだ六人は不安と恐怖から自ら事実を告白して、その不可解極まりない事態は、とりあえず不審者の仕業と言うことでかたがついたんだ。

 

 その一番肝の据わっていた生徒が、一言。

 

「俺たち、あの鬼、和式便所の中に頭から突っ込ませて、尻にすっぽん突っ立てたよな? よく生きてたな、アイツ」

 と、不謹慎なことを言ったとさ。

 

 

 

 俺のことだけど。

 

 〜〜現実に戻って〜〜

 

「お前の話かい! しかも事実じゃねえな!」

「ノンフィクションだったら逆に不可解すぎます!」

「なんでお前の話はんな馬鹿馬鹿しいのばっかなんだよ!」

「まて、発言からキャラが一致しない。って、俺の仕事仲間! なんで混じってんだよ!」

「先ほど、靜が寝ている合間に参加なさってましたよ。話しながら気づきませんでしたか?」

「いや、見慣れた顔で、しかも話に熱中してた」

「アホだ」「善がりだ」「自己陶酔(ナルシス)万歳」

「うっさい、参加したんだったら怖い話しやがれ」

「じゃあ、ッ僕、ねるねるじぇらじぇらのオバさんの」「駄菓子CMのおばちゃんは古いわ、小僧実年齢幾つだ!」

「じゃあ、僕はオペラ座の怪人でも」「マニアックだな! っつか名作引っ張り出すのかよ!」

「僕は、しゃべる人形でいいかな」「お前、本人やがな」「ひ、酷ッ!」「わぁぁぁ! マジに傷つくな! ノリ突込みだ、本気じゃねえって! 泣くなぁぁぁぁぁ!」

「本当の恐怖を教えてやろう、台風の本当の怖さ」「日本人なら誰でも知ってるわ! 災害大国なめんな!」

「じゃあ僕は、死体に咲く花」「普通に怖いから良し。次お前のターン、の前にそっちは何話す予定?」

「……私? ……妖刀、紅静刃でも」「本人談却下! ネタバレ禁止」「ネタバレとは何だ!」

「……俺が語れるのは、せいぜい呪いの武器防具ぐらいだぞ」「ネタ被りさらに厳禁! もし無い場合は仕方ないけど!」

「恐怖、底なし胃袋女」「ギャル曽根は黙れ」

「んじゃ、シデン式軟派テクを」「吊れないしもはやホラーじゃない死ね。それがホラーだ」

「では、実際に起こった、船の人失踪事件の解説を」「もうホラーじゃなくてミステリーだよ!」

「……ある勇者に起こった悲劇」「三度目の自分ネタ禁止! お前らも自意識過剰(ナルシー)だなぁ! をい!」

 

 〜〜〜〜

 

 鏡の向こう……

 実際に鏡向こうへ行けば逝くほど……

 その存在は霞んで、やがては(ゼロ)へと消える……

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