もう少し話すことあると思うけど、ジョギングのことしか話していない
休日の朝、目が覚めてしばらくゴロゴロした後、修三は陽介に電話を掛けた。
修三「うーん、むう・・・むにゃむにゃ、ぬあああ」
陽介「はっはっは、頭が狂ったの?」
「いやあ、まだ布団の中だけど、疲れが抜けなくてねえ」
「そう?」
「昨日の仕事がきつかったからな」
「そうかい」
「朝が来たよ。(スロットに)行っちゃう?今日休みでしょ」
「特に予定はないけど、今日は河川敷にジョギングでも行こうと思ってるよ」
「ジョギングかあ、でも今日休日だから通学路は誰もいないよ?」
「はっはっは、それで?カスが」
「楽しくないと思うんだけど・・・じゃああれだな。きれいで襲われそうな女性を探して、そっと後をつけて見守る」
「それ犯罪だよ」
「違うよ河川敷ガーディアンだよ。警察に職務質問されたらガーディアンですって言えばいい」
「ぷあっはっはっは!カスが!」
「ふっ、別におかしくないと思うんだけどな」
「充分おかしいよ」
「でも何か楽しみがあった方が長続きすると思うんだよね、俺は」
「ふうん」
「よし、ちょいとシミュレートしてみるか。河川敷をジョギングする30代独身男性。うむ、今日も世界は平和だな。そこへ通りがかった綺麗系のお姉さん。セクシーだ。男の目が細くなる」
「もうそれが犯罪者だよ」
「まあ待て続きだ。男はジョギングでは追い越してしまうから、歩くことにしてお姉さんのあとをついていく。不審者がいないか周囲に目を配る。お姉さんに気付かれないようにすこし距離を置く。遠くにパトカーを見つけてドキッとする」
「どうしてドキッとするんだよ」
「さあ?君のことだからな~。お姉さんがたまに振り向いたらシャドーボクシングをして誤魔化す」
「あはは」
「ふふっ、そしてお姉さんのマンションまで見送ったところで、部屋番号、表札、郵便受けをチェック、安全を確認してまたジョギングを始める」
「格好良く言ったところでやっぱ犯罪者だよ」
「犯罪者と罵られようともお姉さんを守る、それが男、それが河川敷ガーディアン、だよね?」
「あっはっは、君がやれば?」
「やだよ、捕まるかもしれん」
「つまり君がカスだと」
「まあ、いいよ。俺も暇だけどどうするか。雨っぽいしなあ」
「(スロット)打ちに行けば?」
「君が行くなら行ってもいいよ」
「行くよ行く♪」
「もしも行かなかったら金くれる?」
「いいよ」
「ふ、嘘だな」
「てへ♪」
「まあ、もう少し布団でぬくぬくしてから考えよう。ふう・・・おやすみ・・・」