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忠犬ソラと捨て猫ウミ  作者: 秋野有香
1/1

彼等の日常


彼が朝起きたときにすることは大抵決まっている。それはカーテンをあけ窓から空を眺めることだ。

どんな天気でも構わない。清々しくなるほど青い空でも、胸の奥が叩かれるような雨の空でも、透き通るような雪の空でも。なんだって構わないのだ。ただ彼は空を眺める。動かず何も話さず。その時間は五分の時もあれば半日以上見ているときもある。流石に社会人でもある彼が空を見ていて遅れました、そんなことを言えるはずもなく平日のその行事は数分で終わる。


毎日毎日律儀にその行事を繰り返す彼を見てきた同居人はいつもため息をつく。ため息だけで済むならいい方なのだが、気まぐれな同居人は空を見ている彼に向かって背中を殴り、太ももに蹴りをすることもあるのだ。それならまだ彼は我慢できる。しかし彼が同居人にされたらどうしても我慢できないことがある。それは甘えられることだ。同居人は茶色で軽く跳ねる髪を彼の首筋にこすり付ける。そしてなーなーなーと甘くとろけるような声で鳴くのだ。それだけなら彼もまだ我慢できる。同居人もしつこく甘えたがりなときは諦めない。白く長い指先についた小さな爪で彼の肌を撫で付けたり、真っ赤な舌先で彼の頬や唇を舐めるのだ。そうなったらもう彼だって我慢できない。同居人の細い手首をつかみ自分のもとへ引き寄せる。そしてその仄かに日向のにおいがする首筋に口づけ、同居人の赤い唇にキスを落とすのだ。同居人は勝ち誇ったように、しかしどこか怒った顔で言うのだ。

「空ばっか見てんじゃねーよ」

その言葉に彼は眉を下げ困ったように、しかし嬉しそうに笑うのだ。


同居人は知らない。何故彼が空を見るのかを。

彼が空を見るのは同居人の言葉があったからだ。

『空が好き。お前と同じ名前だから』

同居人が好きなものは彼も好き。それはずっとずっと変わらないことなのだ。今までも、そしてこれからも。だから彼は同居人が好きと言ってくれた空も、自分の名前も大切なのだ。

沖田空は今日も天を見上げる。そこは同居人の由宇海、その名ように透き通った青が広がっていた。



これは彼等の小さな小さな日常である。

初投稿です。

これから二人の過去やまたちょっとした日常を書いていきたいなあ。

予定は未定ですが(笑)

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