らぶりーフォーエバー
※主人公は不死身
休日の昼下がり、少し静かな喫茶店の窓側の席に男女が向かい合って座っていた。
「では、本題なのですが・・・」
男は、少し申し訳なさそうに口を開いた。
「貴方は人間なのですか?」
「ええ、少しだけ他の人とは違うけど、れっきとした人間よ」
女性はカフェオレを飲みながら答えた。
黒く艶があるロングの髪をたなびかせ、足元まである漆黒のコートに身を包んでいる。カップを持っている手は細く、あまり肉が付いてないように見える。整った顔立ちは凛とした表情と相まって、言いようのない不思議な雰囲気を纏っているように感じる。
「ほう・・・違う点というのは一体?」
メモを書きながら、男は更に尋ねた。
「運が試されるのよ。私と関わった人は」
男は返事をする代わりに首を傾げた。
「どういう意味です?」
「まぁ、簡単に言えば一瞬だけ不幸になるのよ。ただ、その不幸を乗り越えられれば素晴らしい成功者になれるわ」
「不幸?というと、全財産を失ったり、家が燃えたりとか?」
女性は呑み終わったカップをテーブルへと静かに置いた。
そして顔を覗きこみながら尋ねる男に、少し嫌悪感を示す。
「いえ、死ぬか生きるか試されるのよ。」
そう言って、女性は席を立った。
「もういいわ、このまま話してもキリがないし。会計は貴方がお願いね、記者さん」
記者は少しムッとしながらも、一緒に席を立ち、二人分の会計を済ませた。
店を出た瞬間、ムワッとした熱気が体を包んだ。
もう夏終わりだというのにまだまだ気温は高いままだ。
だが、そんな中でも女性は顔色一つ変えずに歩き出す。
「あっ」
女性は急に駆け出した。
「田中さん、危ないですよ」
記者は叫んだ。
その瞬間、記者の体はトラックに跳ね飛ばされた。おそらく即死だろう。
一方、田中と呼ばれた女性は、
「滝沢さん!久しぶり」
と言いながら、大通りを歩く青年に抱きついた。
同時に手に隠し持ったナイフで腹を刺した。
「132年もどこに行ってたの?私もう貴方が死んじゃったんじゃないかって心配で心配で・・・」
「はは、僕は死にませんよ。でもいい加減離してくれませんかね?」
滝沢と呼ばれた男性は田中を引きずりながら話す。歩みを止める気は無いようだ。
「美裕さんは僕の事が嫌いなのですか?」
「ううん、大好き。殺したいくらいに」
「普通の人だったら死んでますよ」
二人は笑い合いながら、雑踏の中へと消えていった。