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Genuin  作者: 麻友里
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first contact

待ち合わせの時間より随分早く到着してしまった。

このまま凍えてしまうかと思うほど冷え込んでいた。

息を吐いて手を温める。指がかじかんで足踏みをした。


数十分後、年配の人を乗せた大きなバスが駐車場にはいってきた。

それを機に、いろんな大型バスが到着し、

バスガイドが様々な団体客を従えてぞろぞろと正面入り口に集まりだした。


私は隅のほうで、ぽつんと外国人の一団をまっていた。

その中に哲也の友達がいるらしいのだ。


「どうやって見つけたらいいのだろう・・・」


私の記憶にあるあの国の人たちは、茶色い肌、小柄で華奢な体格、短く整えた髪。

よく言えば・・ユーモアがあって、ジョークが好きで、常に笑っている。

悪く言えば、真剣さに欠ける、事なかれ主義。


思い出しながらまた口角がきゅっとあがっていく。

あの国のその良さがわかるまで、何度泣かされたっけ・・

そうそう・・公の場所ではシャツを好んで、キレイな身なりをしているはず。

意外と見栄っ張りなんだよなぁ・・Tシャツにまでアイロンかけたりするし。



目の前に外国人の集団が流れてきた。

私は目をこらして、茶色い肌の小柄できれいな身なりの人物を探した。


数名該当者を見つけ、話しかけるタイミングを待っていた。

その時、別の方向から彼が人並みを掻き分け私の名を呼んだ。


彼は私の想像から離れた人物で、濃紺のフリースに破れたジーンズとスニーカー、

アフロのような小さな天然カールした髪の毛、丸い目、丸い鼻、丸い顔。

どれも私の予想から外れていたが、一目で親近感の湧く人物だった。


片言で挨拶をされ、私も早速彼の母国語で挨拶をすると、

「ワーアライクムサラーム」と嬉しそうに驚いた顔で返事をしてくれた。


それが私たちのファーストコンタクトだった。





今思っても不思議な出会いだった。

2年もあの国に住んでいて、一度も、あの国の男性を好きになった事はなかった。

恋愛対象外というか、それ以前の問題だった。


でも、私は彼と言葉を交わした瞬間から、何か不思議なものが生まれたのを感じた。

懐かしいとか、親しみやすいとか、その部類だと思った。



私たちは一緒に熊本城を見学して回った。

自己紹介や、彼の国での思い出話、熊本城の説明、そんな他愛もない事を

彼と同じ言葉で話巣私に彼は何度も「すごい!」と嬉しそうに褒めた。


あっという間の時間だった。


明日には彼は九州から広島、東京、そして帰国する予定だった。

私は久しぶりに、あの国の人に会って、会話できたことを純粋に楽しかった。


帰り際、彼と握手をした。

私が初めて彼に触れた日だった。



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