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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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"春药"

掲載日:2026/10/01

ある種の植物には、カナビスの幻覚作用の様な形で誘血効果が存在して居る


審問官として、邪悪な宗教組織の知識は幾つも有して居るつもりだったが、こと此処に至るまで、僕は其れが自分に向けて使われるとは一度も考えた事が無かった



「こうした辱めを受けた所で」


「それは、教会の敗北を意味しない」


拷問官達がくすくすと嗤う小さな声が、牢内で反響する

嘯(うそぶ)いてみたが、熱を持った血管が全身で震え出して居る様にさえ思えた

手枷をされて無理矢理に飲まされた誘血剤は、既に僕の躰を駆け巡り意識を支配し始めて居た


僕は、瞼を固く閉ざしながら内心で『此れは』『精神の屈伏では無い』と唱え続けた


動悸がする

窒息した血液の濁流が、全身の皮膚総てから外側に出る事を求めて、酸素を懇願しながら壁を叩いて居る様に感じられた


手枷をされて居る為に実行出来ないが、もし両手が自由ならば僕は、躰中が潰れた果肉の様な姿になるまで掻き裂いてしまうに違い無かった



拷問官が鞭を振り上げる音

一瞬遅れて、自分が『期待に昂揚しながら、眼を視開いて居る』と気付いた


拷問官が鞭を降ろし、にやにやと僕を視る


気付くな、気付くな、と心の中で焦る

拷問官から視線を逸らそうとした顎を掴まれ、乱暴に彼の側に向き直させられた


ぎりり、と革手袋を鳴らして拷問官が拳を握る

無意識に視界が其れを追ってしまう

拷問官は遂に声を立てて笑い始めると、握った拳を開いた



「そんなにされたかったのか?」


明確な意図を持った率直な嘲りを聞くにつけ、頬が紅潮して頭部に血液が登り詰める感覚が在る

拘束されたままの姿で、怒りに任せて手近な拷問官に飛び掛かる

直ぐに其の背を蹴飛ばされ、転んだ所を、幾つもの靴底が侮蔑と共に踏み付けた




「まあ」


「そう焦るな」


抵抗の意志が完全に奪われるまで暴行されたあと

拷問官の一人が、横向きに倒れた僕にそう云った


からん、と金属音が頭の横で響く

意図は解らないが、彼らは僕にナイフを与えると帰り支度を始めた


拷問官達が一人、また一人と僕に背を向けて歩き去っていく

逃げるのか、と立ち去る背に声を掛けようとした刹那、廊下で拷問官達とは別の足音が聞こえた


懐かしい音だと直ぐ解った

聞こえたのは、僕の救出に駆け付けた同僚達の足音だった



廊下の拷問官達が去ったのとは逆の方角から、武装した審問官数名が周囲を警戒しつつ現れる

彼らは牢の中の僕に気が付くと、扉を開き、急ぎ駆け寄った


『助け出されれば、精神は安堵に包まれる』

僕はそう考えて居たが、現実は違った

心臓が割れそうな程の動悸は、覚めるばかりか激しさを増して居た


仲間の誰かが、僕の額から血と汗を拭う

其れが誰なのかも僕は認識する事が出来なかったし、眼が視え無かった

ぼやけた視界の世界で、唯一はっきり視えるものが在った


床に落ちたナイフだった




不意に手枷が断ち切れて、僕は呆然とした

一瞬遅れて

仲間が剣で切断したのだと、ようやく解った


完全な無意識の状態で、僕は飛び付く様にナイフを拾って握り締めた



握り過ぎたナイフが、弾けそうに震えて居る

全身が痒くて、気が狂いそうだった

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