婚約破棄を手続きで処理した事務官の妻は、今日も強かった
本作は「制度で殴る事務官」シリーズの外伝です。
本編を読んでいなくてもお楽しみいただけますが、ぜひ本編を先に読むことをオススメします。
今回は、主人公を支える“妻視点”の短編集となります。
表には出ないけれど、確かにそこにある一手と、静かな日常をお楽しみください。
「……遅い」
扉の前で、私は腕を組んでいた。
時計の針は、もうとっくに日付を跨いでいる。
分かっている。
今日もまた、あの人は帰ってこない。
仕事だから。
大事な仕事だから。
――それでも。
「遅いものは遅い」
小さく呟いて、息を吐く。
テーブルの上には、冷めかけた夕食。
何度も温め直して、三回目でやめた。
それ以上やると、味が死ぬ。
「……あの人みたいに」
ふっと、苦笑する。
そのとき、鍵の回る音がした。
「ただいま」
少しだけ遠慮がちな声。
私は間を置いてから返す。
「……遅い」
扉が開く。
立っていたのは――
干からびた何かだった。
「……誰?」
「夫です」
「嘘でしょ」
靴も脱ぎきらないまま、その場に崩れ落ちる。
私はため息をついて近づいた。
「生きてる?」
「たぶん」
「たぶんって何」
顔を覗き込む。
ひどい顔だ。
けれど、どこかやりきった顔でもある。
「何やってたの」
「王太子を処理してた」
「そう」
頷く。
それ以上は聞かない。
聞いても、どうせ長くなる。
「ご飯、食べる?」
「食べる……」
よし、まだ人間だ。
私は立ち上がり、火を入れ直す。
「ちゃんと終わったの?」
背中越しに聞くと、少しの沈黙のあと。
「……終わった」
その一言で、十分だった。
「ならいい」
鍋をかき混ぜながら言う。
「仕事をちゃんと終わらせて帰ってくるなら、それでいい」
後ろで、かすかに笑う気配。
「怒らないのか」
「怒ってるわよ」
振り返らずに答える。
「遅いし、連絡ないし、体ボロボロだし」
一拍。
「でも」
火を弱める。
「中途半端で帰ってくるより、ずっといい」
皿に盛り付け、差し出す。
彼は少し驚いた顔をした。
「……温かい」
「さっき温めたからね」
「そうじゃなくて」
「何が」
「……なんでもない」
変な人だ。
私は頬杖をついて、食べる様子を眺める。
「ねえ」
「ん?」
「その“王太子を処理した”ってやつ」
彼の手が止まる。
「ちゃんと、誰も損してない?」
少しだけ、真面目な声。
彼は考えてから言った。
「……全員、相応のものは背負った」
「そう」
私は頷く。
「なら、あなたの仕事は正しい」
彼が、ほんの少し目を見開く。
「そんな簡単に言うな」
「簡単よ」
肩をすくめる。
「だってあなた、楽な方選ばないでしょ」
沈黙のあと、小さく笑う。
「選ばないな」
「でしょ」
それでいい。
難しいことは分からない。
でも、この人がどっちを選ぶかは分かる。
――食事が終わる頃。
彼は少しだけ顔色を取り戻していた。
「……そういえば」
ぽつりと言う。
「差し入れが来た」
「差し入れ?」
「公爵家から」
「何したの?」
「王太子を処理した」
「それさっき聞いた」
少し笑う。
「あと、転職の誘いも」
「へえ」
私は興味深く聞く。
「行くの?」
「行かない」
即答だった。
「なんで?」
「今抜けたら困る」
「誰が?」
「俺が」
「あなたが?」
「後処理が終わらない」
「……ああ」
納得する。
この人はそういう人だ。
私は食器を下げながら言う。
「ねえ」
「ん?」
「行きたくなったら、行っていいよ」
少しの沈黙。
「……いいのか」
「いいよ」
水を流しながら答える。
「ちゃんと終わらせてからなら」
一拍。
「どこに行っても、やること同じでしょ」
「……まあな」
振り返る。
「ただし」
指を一本立てる。
「ちゃんと帰ってくること」
彼は少し考えてから答えた。
「……努力する」
「“する”でいいの」
「はい」
その返事に頷く。
「じゃあ寝なさい」
「もう限界だ……」
そのまま倒れ込む。
本当にダメな人だ。
毛布をかけながら、小さく呟く。
「……お疲れさま」
返事はない。もう寝ている。
静かになった部屋。
私は机の上の書類に目を向けた。
何気なく、一枚手に取る。
目を走らせる。
「……雑ね」
思わず漏れる。
構造はいい。
判断も早い。
けれど――
「詰めが甘い」
指で軽く、行間をなぞる。
制度の抜け道。
貴族院の通し方。
王の意図。
全部、読める。
全部、見える。
「……この人、やりすぎ」
小さく笑う。
そして、ぽつりと呟いた。
「制度ってね――」
誰もいない部屋で。
「人を守るためにあるんじゃないの」
一拍。
「壊れた後でも、崩れないようにするためにあるの」
紙を置く。
視線を、眠っている彼へ向ける。
「……似てる」
ぽつり。
「壊れるまでやるところ」
昔を思い出す。
同じように、終わらせるまで止まらなかった日々。
だから、辞めた。
「この人は――」
静かに息を吐く。
「壊れる前に止まらない」
毛布を、もう一度整える。
「だから」
小さく、優しく。
「止まれる場所くらいは必要でしょ」
◇◆◇◆◇◆
翌朝。
彼が出ていった後。
静かな家に、来客の音が響いた。
「――お久しぶりです、監査官殿」
振り向く。
見覚えのある男。
「その呼び方、やめて」
「では、“元”監査官殿」
「それもやめて」
ため息をつく。
「で、何?」
男は淡々と言う。
「今回の件、陛下がご興味を」
「断る」
即答。
「即答ですね」
「もう現場には戻らないって決めたの」
窓の外を見る。
朝の光が、柔らかく差し込んでいる。
「今は」
少しだけ笑う。
「ただの主婦よ」
◇◆◇◆◇◆
その日の夜。
「ただいま」
「遅い」
いつも通り。
彼が靴を脱ぎながら言う。
「今日、王宮が妙にざわついてた」
「へえ」
「監査がどうとか」
「そう」
興味なさそうに返す。
そして、いつものように言う。
「ご飯できてるよ」
彼は気づかない。
――隣にいるのが、もっと厄介な側の人間だということに。
そして私は思う。
この人が、また壊れる日が来たら。
そのときは――
「……まあ」
小さく息を吐く。
「その前に止めるけど」
誰にも聞こえない声で、そう呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
王宮事務局。
「……無理だな」
アルトは書類を机に落とした。
同僚が顔を上げる。
「珍しいな、お前が詰まるの」
「詰まるよ」
アルトは額を押さえる。
「今回の案件、制度的に詰められない」
机の上には一枚の報告書。
『南方大運河整備計画』
莫大な予算。
複数の貴族が関与。
そして――
「全部合法」
アルトが吐き捨てる。
「抜け道を全部踏んでる」
「でも黒なんだろ?」
「ああ、真っ黒だ」
だが証明できない。
制度の外ではなく、制度の中で腐っている。
「……どうする」
同僚が低く聞く。
アルトは答えない。
答えられない。
「時間もない。明日、貴族院だ」
沈黙。
アルトは椅子にもたれた。
「……クソ」
その一言に、全てが詰まっていた。
◇◆◇◆◇
その夜。
「ただいま」
「遅い」
いつも通りの声。
だが、今日は少しだけ違う。
アルトは椅子に座るなり、動かなかった。
「ご飯」
「……あとで」
珍しい。
私は少しだけ眉を上げる。
「何」
「……詰んだ」
短い言葉。
それで十分だった。
私は何も言わず、向かいに座る。
「話して」
彼はゆっくりと説明した。
制度の穴。
合法の皮をかぶった不正。
どうやっても止められない構造。
全部、聞いた。
全部、理解した。
「……なるほど」
私は一言だけ言う。
アルトが顔を上げる。
「何かあるか」
「ある」
即答。
「でも」
指を一本立てる。
「一つだけ」
アルトは黙る。
それがどういう意味か、分かっている顔だ。
「……聞かせてくれ」
私は少しだけ考えてから言う。
「今回の計画、通る前提で組んでるでしょ」
「ああ」
「なら、止めるんじゃなくて」
一拍。
「成立した瞬間に崩す」
アルトの目が細くなる。
「……どうやって」
私は軽く言った。
「監査条項、見た?」
「見た」
「読み込んだ?」
「当然だ」
「じゃあ、その“例外規定”は?」
沈黙。
アルトが、固まる。
「……例外?」
私は頷く。
「“緊急性が認められる場合、事後監査を簡略化できる”ってやつ」
アルトの脳が高速で回り始める。
「……それが?」
「逆よ」
私は静かに言う。
「その条件、満たさせなければいい」
一瞬の静寂。
「……は?」
アルトが聞き返す。
私は続ける。
「今の計画、“緊急性”を理由に簡略化してるでしょ」
「ああ」
「じゃあ、それを否定する材料を一つだけ入れる」
「……どこに」
「別の部署」
アルトの目が見開かれる。
「……まさか」
私は肩をすくめる。
「気象記録」
一拍。
「“今年は水量が安定しているため緊急性は認められない”」
沈黙。
アルトの思考が、繋がる。
「……緊急性が否定されれば」
「簡略監査が使えない」
「フル監査になる」
「そう」
アルトが立ち上がる。
「フル監査になれば――」
「全部、出る」
私は静かに言う。
「合法だったものが、“検査に耐えられなくなる”」
長い沈黙。
そして。
アルトが、ゆっくりと笑った。
「……一手でいいのか」
「一手でいい」
私はあっさり答える。
「無理に全部壊そうとするから詰むの」
一拍。
「支点をずらせば、勝手に崩れる」
アルトは深く息を吐いた。
「……助かった」
「どういたしまして」
私は立ち上がる。
「ご飯食べる?」
「食べる」
今度は迷いがなかった。
◇◆◇◆◇◆
翌日。
貴族院。
「本計画は、緊急性を理由に簡略監査を適用――」
議員の声を遮るように、別の声が入る。
「異議あり」
静まり返る場。
提示されたのは、たった一枚の書類。
気象局報告書。
「当該年度、水量は安定。緊急性の根拠は不十分」
ざわめき。
「よって、本案件はフル監査対象とすべきである」
沈黙。
そして。
誰かが、小さく呟いた。
「……終わったな」
◇◆◇◆◇◆
数日後。
関係貴族、全員失脚。
計画は白紙。
王宮事務局。
「……何したんだお前」
同僚が呆然と聞く。
アルトは淡々と答える。
「何も」
「嘘つけ」
「本当に何もしてない」
一拍。
「一つ、条件を整えただけだ」
同僚が頭を抱える。
「それで全部ひっくり返るか普通」
アルトは肩をすくめる。
「制度ってそういうもんだ」
◇◆◇◆◇◆
その夜。
「ただいま」
「遅い」
いつも通り。
アルトは靴を脱ぎながら言う。
「終わった」
「そう」
私は頷く。
「うまくいった?」
「ああ」
少しだけ間を置いて。
「……ありがとう」
私は首を傾げる。
「何が?」
「いや」
アルトは少しだけ笑う。
「気のせいだ」
「そう」
それ以上は聞かない。
ただ一言。
「ご飯できてるよ」
アルトは席に着く。
何も知らない顔で。
――本当に、何も知らないまま。
私は思う。
「一手で足りる」
それでいい。
全部を動かす必要はない。
動く場所だけ、間違えなければ。
「……まあ」
小さく呟く。
「たまにでいいけど」
そうして私は、いつも通りに戻る。
ただの――
帰りを待つ人として。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ただいま」
「遅い」
「今日は早い方だ」
「昨日も同じこと言ってた」
いつものやり取り。
靴を脱いで、肩の力を抜く。
「……終わった?」
「一応」
アルトは椅子に座り、深く息を吐いた。
私は湯気の立つ皿を置く。
「はい」
「ありがとう」
しばらく、静かに食べる音だけが続く。
――こういう時間が、一番落ち着く。
ふと、思い出したように聞く。
「ねえ」
「ん?」
「定時退庁権」
アルトの手が止まる。
「……ああ」
遠い目になった。
「どうなったの」
「存在はしてる」
「使ってる?」
「……」
沈黙。
私はじっと見る。
「使ってないんだ」
「使えないんだ」
即答だった。
「どう違うの」
「空気」
「空気で権利が死ぬの?」
「死ぬ」
真顔。
私は小さく笑った。
「もったいない」
「もったいないな」
アルトも苦笑する。
「でもな」
少しだけ真面目な声になる。
「今抜けると、後で自分が困る」
「ああ」
すぐに理解する。
「未来の自分に押し付けるタイプね」
「そうとも言う」
私は肩をすくめる。
「じゃあ仕方ない」
「仕方ない」
一拍。
「……まあ」
私は箸を置く。
「その分、ここではちゃんと休みなさい」
アルトが少しだけ目を細める。
「努力する」
「“する”でいいの」
「はい」
同じやり取り。
少しだけ笑う。
食事を終えて、片付ける。
アルトは椅子にもたれて、ぼんやり天井を見ている。
「……なあ」
「ん?」
「俺、ちゃんと帰れてるか」
少しだけ弱い声。
私は手を止める。
そして、振り返る。
「帰ってきてるでしょ」
当たり前のように言う。
「ここに」
アルトは少し黙って、それから小さく笑った。
「……そうだな」
私は近づいて、軽く肩に手を置く。
「だからいいの」
一拍。
「定時じゃなくても」
少しだけ顔を寄せる。
「ちゃんと帰ってくるなら」
アルトがこちらを見る。
ほんの少し、距離が近い。
「……それは」
言いかけて、止まる。
私はそのまま、軽く額をぶつける。
「なに」
「いや」
少しだけ照れたように笑う。
「十分だと思って」
「でしょ」
そのまま、ほんの一瞬だけ。
軽く、触れるだけの距離。
長くは続かない。
続けると、この人はそのまま寝る。
「ほら」
私は離れて言う。
「寝なさい」
「うん……」
素直に立ち上がる。
本当に限界らしい。
寝室に向かう背中を見ながら、ふと思う。
「……まあ」
小さく息を吐く。
「定時じゃなくてもいいか」
どうせ――
この人は、ちゃんと戻ってくる。
それだけで、十分だ。
灯りを落とす。
静かな部屋。
「おやすみ」
小さく呟く。
返事はない。
もう寝ている。
私は少しだけ笑って、隣に入った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
朝。
「……何してるの」
玄関で、私は腕を組んでいた。
靴を履こうとしている背中に、声をかける。
「仕事」
即答。
「今日は?」
「休み」
「じゃあ何してるの」
「仕事」
私は一拍置いた。
「靴、ないよ」
ぴたり、と動きが止まる。
「……は?」
「片方、干してる」
「なんで」
「昨日濡れたから」
沈黙。
「……じゃあ別の靴を」
「それもない」
「なんで」
「磨いてる」
「なんで」
「昨日汚れたから」
沈黙。
アルトがゆっくり振り返る。
「……行けないな」
「行けないね」
私は頷く。
しばらく見つめ合って――
アルトは観念したように肩を落とした。
「……どうする」
「じゃあ今日は」
私は軽く言う。
「別の仕事しよ」
「別の?」
「生活」
◇◆◇◆◇◆
市場は、朝から賑わっていた。
「……人、多いな」
アルトが周囲を見回す。
「みんな仕事してるんじゃないのか」
「してるよ」
私は野菜を手に取る。
「これが仕事」
アルトは少し考えてから言った。
「……なるほど」
分かっていない顔だった。
「これ、いくらだ」
「値札見て」
「交渉は」
「いらない」
「そうか……」
少しだけ残念そうだ。
「癖?」
「仕事でな」
「ここは違うから」
「……難しいな」
私は小さく笑った。
◇◆◇◆◇◆
昼前。
家に戻ると、アルトは少しだけ疲れた顔をしていた。
「……疲れた」
「歩いただけでしょ」
「歩いたな」
椅子に座って、ぼんやりしている。
「次は?」
「洗濯」
「仕事か」
「仕事」
真顔で言うと、アルトは少しだけ笑った。
◇◆◇◆◇◆
洗濯物を干しながら、ふと空を見る。
風が、穏やかに吹いていた。
「……静かだな」
後ろから声がする。
「うん」
私は頷く。
「何も起きない」
アルトがぽつりと言った。
その言葉に、私は少しだけ手を止める。
「休みだからね」
一拍。
アルトは何も言わない。
ただ、空を見ている。
「……変だな」
「何が」
「何も起きないと、落ち着かない」
私は少し考えてから言う。
「それ、慣れすぎ」
「そうか」
「そう」
洗濯物を一つ、留める。
そして、静かに言った。
「何も起きない日ってね」
アルトがこちらを見る。
「ちゃんと守られてる日なの」
風が、少しだけ強く吹いた。
アルトはしばらく黙って――
「……そうか」
小さく呟いた。
◇◆◇◆◇◆
午後。
結局、何も起きなかった。
書類も来ない。
呼び出しもない。
誰も困っていない。
ただ、時間だけが過ぎていく。
アルトは途中で昼寝をしていた。
珍しい。
私はその様子を見ながら、少しだけ思う。
(やればできるじゃない)
◇◆◇◆◇
夕方。
「……悪くなかった」
ぽつり、とアルトが言う。
窓の外は、少し赤くなっている。
「でしょ」
私は軽く返す。
「でも」
アルトは少しだけ考えてから言った。
「毎日は無理だな」
「知ってる」
即答。
一拍。
「たまにでいいよ」
「……たまになら」
頷く。
それで十分だ。
◇◆◇◆◇◆
夜。
食事のあと、アルトはいつもより少しだけ早く立ち上がった。
「寝る」
「早いね」
「今日は、なんか……眠い」
「健康的でいいじゃない」
アルトは少しだけ笑って、部屋に入っていく。
私はその背中を見送る。
静かな家。
何も起きない一日。
「……まあ」
小さく息を吐く。
「たまにはいいか」
灯りを落とす。
そして、ゆっくりと後を追った。
布団に入ると、アルトはもう半分眠っていた。
「……なあ」
「ん?」
「またやるか」
少しだけ考えてから、私は答える。
「靴、ちゃんと用意しとくね」
アルトが小さく笑う。
「……それは困る」
「でしょ」
少しだけ距離が近い。
そのまま、何も言わずに目を閉じる。
外は静かだ。
何も起きない。
でも――
それでいい。
今日は、ちゃんと守られていた日だから。
「おやすみ」
小さく呟く。
「……おやすみ」
かすかな返事。
そのまま、静かに眠りに落ちた。
読了ありがとうございました。
この視点が読みたい、とかあれば感想欄で教えてください。




