1話
3月は別れの春と言われる。卒業式、引っ越し、転勤など、多くの場合、別れの時はだんだんと近づき、だんだん別れを実感してくる。特に卒業式、これはいつ催されるかをあらかじめ知らされているため、別れの感覚が徐々に濃くなってくる。
いずれやってくる別れに対し、ある者は思い出作りのために誰かと旅行に行ったり、ご飯をたべたり、ある者は仕事の引き継ぎをするだろう。時間の経過とともに来る別れに対する哀愁に慣れつつ、次の始まりを待つこととなる。
大学生活をつつがなく送れるよう、この町に越してきて、6年ほど経つ。悲しいことに恋人ができることはなかったが、大学の友人やバイト先の人たちとは、この町を出る前に遊びに行った。別れを惜しむために行う遊びといったイベントの予定はまだまだある。
しかし、別れとは事前に教えてくれることばかりではない。急な転勤が決まることもあれば、恋人と喧嘩して別れることもあるだろう。
俺の場合、今挙げたような例ではないものの、突然の別れがやってきた。6年間世話になったこの町をなんとなく散歩していたところ、間抜けなことに足をくじき、バランスを崩して車道に身体がはみ出る。その刹那、走っていたバスにぶつかり、この世界に別れを告げることとなった。
「24年間、人生お疲れ様でした」
目の前の誰かが俺にそう話す。
誰だろうか。
「私は12神の1人、ネロ。今回、貴方の次の人生を導く存在です」
導く?俺は俗に言う輪廻転生ができるってのか?そんな善い行動をとってきた人生だっただろうか?
「善い人生を送ったかどうかは直接的な関係にありません。今回、貴方は私が原因で死んでしまったと言っても過言ではありませんから、そのお詫びのようなものです」
この神が俺の死因だと?だが、俺は自分で足をくじいてバスに轢かれて死んだと記憶しているが、これの何がこの神が言っている原因に繋がるだろうか。
「私が貴方の世界を観測していたところ、たまたま貴方を観ていました。神である存在から長時間見られると、身体が思うように動かなくなる場合があるのです。貴方たちの世界でいう…金縛りに相当するものですかね。貴方をしばらく観察していたので、本当でしたら貴方は全身固まるはずが、全然固まる気配がなかったので、不思議に思って凝視していたら、貴方の片足が固まって、結果的に足を挫いてしまったようです」
え?確かに足をくじく前はなんか身体が凝るというか、重いというか、不思議な感覚を味わっていた気がする。てっきり寝不足によるものだと思っていたのだが。目の前にいるこの神の仕業だったのか。本来ならば、怒ったり悲しんだりするのかもしれないが、不思議とそういった負の感情は訪れない。逆に今起きているこの現状がどういったものであるか、これからどうなるかといった興味の方が大きい。
「貴方は神との相性がどうやら良いようです。そのため、私の観察による金縛りがあまり貴方に効かなかったのでしょう。次に貴方が生まれる世界では聖職者とかが向いているかもしれませんね」
それは聖職者になれってことなのか?
「いえ、貴方がどう生きようが、私たち神は関与しませんよ。強いていうならば、貴方の次生まれる世界には魔王という存在がいます。魔王を倒してくれると少し嬉しいです。魔王の存在自体は私たち神に直接影響はありませんが、私たちの信者が減らされると私たち自身の力が減っていくんですよ」
俺が魔王を倒すメリットってあったりするのか?
「そうですね。我々12神が貴方の願いを1つ、例外なくなんでも叶えましょう。どうですか?魔王を倒してくれますか?」
じゃあ、倒すよう努力はしてみますよ。でも、倒せる想像とかは全くつかないんですけれど…
「1つ、我々12神から貴方に能力をさしあげます。本来ならば、貸し出す程度なんですが、大サービスです。さしあげます!貴方なら使いこなせそうですし!」
何か制約とかあるんだろうか?
「私たちが能力を貸す場合はそういったことはありますが、今回、あなたには差し上げますので制約はありません」
もし、魔王を倒せない場合はどうすれば?
「倒せず、残念ながら死んでしまった場合、他の人に頼むしかないですね。死んでしまった貴方は…運が良ければまた転生できますよ。運が悪ければ転生できずに、天国か地獄行きです」
もし魔王を倒した後に死んだら天国とやらに行けるのか?
「それが貴方の魔王を倒した際にする願いであれば。ただ、天国なんていっても慣れるまでは退屈かもしれませんよ?慣れたら穏やかで良いかもしれませんが」
…一旦転生した先で今後のことは考えようかな。
「では、次なる人生を楽しんでくださいね」
「いってらっしゃい!」
「元気な男の子ですよ!おめでとうございます」
「この子が、私たちの子なのね…!初めまして、私が母親よ…!目元なんて、貴方そっくりね」
「ああ。よく頑張った。お前も、生まれてきたお前も」
なんか、聞こえてくる。あれ?赤ん坊から意識があるのか。俺は生理的に出る自分の泣き声に驚きつつ、この世界で聞く初めての言語を理解できることにも驚いていた。…日本語じゃね?それとも俺が日本語レベルでこの世界の言語を理解しているだけなのか?まぁ、いいか。
これから文字通りの第二の人生が始まるのか。前の人生は適当に過ごしたわけでもなければ、未練が無いわけではないが、これからの人生、精一杯頑張っていこうかね。
「旦那様、お子様のお名前はもう決まっているのですか?」
「ああ、もう決めてある。この子の名前は“司”にしようと考えている。どうだろうか?」
ん?
「良い名前じゃない…。これからよろしくね司…!」
えっと…
「司様、これからよろしくお願いいたします」
…ここ、日本じゃね?本当に魔王とかいるの?
頑張って週一で投稿をしようと思います。応援、よろしくお願いします。




