第十四章:崩壊の序曲
聖誕祭の数日前。私の完璧な城塞である『救済の家』に、ネズミが入り込んだ。
あのにえという少女だ。
報告を聞いた私は、鼻で笑った。
愚かな。私の支配領域に自ら飛び込んでくるとは。
だが、侵入者は予想以上に厄介だった。彼女は、仲間の冒険者たちと共に、夜間の見回りをかいくぐり、施設の地下に潜入したという。
私は、私室のソファに座ったまま、報告を聞いていた。
「聖女様、地下祭壇が……破壊されました」
神官が、青ざめた顔で報告する。
「……何ですって?」
私の声が、低く響く。体内の石が、激しく脈打った。
地下祭壇。それは、子供たちから魔力を吸い上げるための、最も重要な装置だった。
「スケルトンナイトを配置していたはずでしょう?」
「それが……にえという少女が、聖なる力で浄化してしまったと……」
聖なる力?
ふざけるな。私こそが、この国で唯一の聖女だ。
「……子供たちは?」
「多くが、洗脳を解かれてしまいました。特に、アンナという少女が、裏切って侵入者を手引きしたようです」
アンナ。
あの、最後まで完全に支配しきれなかった、面倒な子供。
「……そう」
私は、静かに立ち上がった。
焦燥感が、胸の奥でチリチリと燃えた。
なぜ? なぜこの子だけ、私の思い通りにならない?
前世のラムと同じだ。
私の所有物であるはずなのに、勝手に意志を持ち、勝手に動き、私を否定する。
「許さない……絶対に、許さない」
私は、爪が食い込むほど拳を握りしめた。
地下祭壇は失ったが、まだ本命がある。王都の神殿、その最深部にある、真の魂の貯蔵庫。あそこには、数百、数千の魂が蓄えられている。聖誕祭の儀式で、あれを全て解放し、神になる。
明日の儀式で、あの子の魂を一番に喰らってやる。
骨の髄までしゃぶり尽くして、私の養分にしてやる。




