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王立魔法図書館  作者: 三日月 帆立


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初来館

 ラビ族のワールはゆっくり扉を開ける。中は広大な空洞が中心にあり、10階層ほどの大きな図書館が広がっていた。外からはおよそ4階建てほどの大きさしか見えず、館内案内図の説明欄には空間魔法を使用していると書かれていた。館内案内図を見て歩いていると、ドンと激しく誰かにぶつかった。


「いったた……っひ」

 上を見上げるとまるで神話に出てくるガネーシャの様な象の顔を持つ大きな人物がいた。本を手にぶつかられてもビクともしておらず、少年を見下ろしている。ワールが怯えていると、

「坊ちゃん平気? ごめんね怖いでしょう?」

 すこしハスキーな声で話しかけてくる。……女性だったのか。ワールはホッと息をつき、立ち上がる。


「すみませんでした。案内図を見るのに夢中で…」

「わかるわぁ~私もここ始めて来た時は他の方吹き飛ばしちゃって! アハハハハ。なつかし!」

 気を付けてーと手を振るエレファ族の女性を背に司書さんのところへ行く。列ができており、白い鳥が整理券を配っている。配られた番号は、2851番だった。司書カウンターでは三人の司書さんが長蛇の列をさばいている。


「1847番さんこっちおいでー!」

 と元気な司書さん、

「1848番の方、次どうぞ」

 とぶっきらぼうな司書さん、

「はぁい1849番さん。こちらへどうぞぉ」

 と穏やかなお姉さん。それぞれ全く違う性格をしている。


「あの、えっと。東北大陸の本が読みたいんだけど」

「はい!8階A列からJ列です! 8って書いてある階段に乗ってくださいね!」

 元気な司書さんは声を抑えながらも活気のある声で喋っている。

「ここの土地の生物知識が欲しくて…」

エラ・トレラ(紙媒体飛翔呪文)…はい、次の1851番の方」

 声が小さすぎて図書館なのに彼女の席だけスピーカーが設置されている。しかしスピーカーを通してようやく聞き取りやすいくらいの声だった。

「”ドク族とモキ族に関する参考書”が読みたいのですが」

「はぁい、エラ・トレラァ~」

 心なしか飛んでくる本もフワフワしているかのようだった。三人の司書は全く違う声質だが、キト族の女性という共通点があった。


 ワールが呼ばれたのはスピーカーの付いた司書さんだった。マイクが口元についており、彼女の前だけプラ板で区切られている。

「2851番さん36分の待機お疲れさまでした要件をどうぞ」

 一切区切らずに一息で全てを言い切る。板の中央の会話口から話をした。

「森の恵みを司る…ドライアドに関する本を探してるんです!」

 青い帽子の司書の表情が固まる。

「規則に基づき、理由をお聞きします」

 いきなりの毅然とした態度に驚きながらも返答する。よく見ると、両隣の司書も横目でこちらを見ている。


「そ、その。僕の村は紛争で荒廃して…ドライアド様の栽培する果実でならその地は緑豊かに回復するという伝承を息絶える前の村長に聞き、世界を探し回ってます……」

 目的をはっきり伝えるも、足は震えていた。今まで聞かれた事が無かった、または無いと突っぱねられるかの2択であったからだ。


 キト族の司書は、はぁ…とため息をつく。安堵のようにも見えた。

「9の階段に乗って待ってて。動き出したら歩かないこと、到着したらA-Hの列まで進んで。そこに伝承系はあると思う」

 じゃ、と言われ司書は次の番号を呼ぶ。ワールは耳をぴくっと動かして、階段を探す。カウンターの両隣に階段が並んでいる。2階に行く階段以外は全て繋がっておらず、人が乗ると浮かび上がり手すりの番号の階層まで運んでいた。


「9…9……これか」

 一番左端の階段に9と彫られている。ワールの他にホク族、ドク族が乗車し、階段は浮かび上がった。

登場人物


・ワール

ラビ族。大きなウサギの耳を持ち、時折ロップイヤー種と呼ばれる耳が垂れている特別な種が生まれることもある。

 彼の村は、食糧難から来る紛争に巻き込まれた。村長は死の間際にワールにドライアドの伝承を伝え、彼を隠し穴から逃がした。以来3年にわたって世界を飛行船(定期旅客便)で渡り歩き、伝承の書物が無いか探している。


・王立図書館の司書三人

キト族、猫耳の種族で瞳孔の動きしっぽの動きで感情が読みやすい種族でおなじみである。

元気いっぱいな朱色の制服リツ、

ぶっきらぼうで青色の制服レン、

とてもおだやか緑色の制服ミャーチ。

 この三人が本を自分で探すより司書に聞く方が間違いないと聞きに来る軍勢をさばいている。どの司書にも固定のファンが存在し、誰に当たるか毎日ワクワクしながら来館する者もいる。(もちろん読書もするが…)

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