表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

6

6

ラストエピローグ:光の未来と、二人の誓い


1. 社交界への凱旋


それから一年後。わたしは、「コートランド伯爵夫人」として、王都の夜会に姿を現した。


隣を歩くのは、光沢のある黒髪と、理知的な美貌を持つコウタだ。彼の醸し出す「変人」ではない「天才」としてのオーラは、一夜にして社交界の話題を独占した。


誰もが知る、かつての「醜聞の伯爵令息コルテス」の姿は、どこにもない。しかし、彼の瞳の奥には、わたしだけが知る、狂信的な探求の炎が静かに燃えていた。


「デュフフフ……いや、アリシア。貴族たちの嫉妬と好奇心という『呪詛のエネルギー』を、これほどまでに近くで観測できるとは。君のドレスの選定は、やはり最高の戦略だ」


「もう、『デュフフ』はやめてください、コウタ。貴方の輝きが曇るわ。この夜会は、私たちが『世界の安定』を守りながら、貴族社会で生きるための最初のステップなのよ」


わたしは優雅に微笑んだ。彼女は、もはや「悪役令嬢」ではなく、「才知溢れる美貌の伯爵夫人」として、社交界の頂点に立っていた。


2. ルイス王子との再会と、真の和解


夜会の隅で、ルイス王子と、穏やかな笑顔を浮かべるヴィオラ嬢が、わたしたちに挨拶にやってきた。


「アリシア、コウタ。君たちがこうして幸せそうで、本当に良かった」


ルイス王子は、今もヴィオラを「大切な妹」として庇護し、穏やかな治世を送っていた。彼らの関係は、愛の毒から解放され、真に平和なものになっていた。


わたしは、ルイスに深く一礼した。


「ルイス様とヴィオラ様の永遠の安寧を、心よりお祈り申し上げます。私たちのこれまでの『歪んだ関わり』は、すべてこの平和な未来のためでした」


ルイスは、コウタとわたしを見比べ、静かに微笑んだ。


「君たち二人こそ、この国の影の守護者だ。私は知っているよ、君たちの狂信的なまでの使命感が、この平和を維持してくれていることを」


ルイスは、二人の歪んだ愛を理解し、最高の友情と信頼を持って接してくれた。わたしは、推しに最高の形で報いることができたことに、心の底から満足した。


3. 永遠の誓い


夜会が終わり、別邸に戻った二人は、真の研究室で、向かい合った。


「あなたの『探求』は、まだ終わらないのね」わたしは、彼が新たな論文を広げているのを見て微笑んだ。


「終わるわけがないだろう、アリシア。この世界には、まだ『不合理な悲劇』という名の呪詛が満ちている。そして、僕が意味のある主人公でいられるのは、君という最高の知性が隣にいるからだ」


コウタは立ち上がり、わたしの手を取った。かつては汚れた手で触れることすら拒んだ彼が、今はわたしの手を、世界で最も大切な宝物のように優しく包み込む。


「アリシア。君は僕を『コルテス』という狂気の殻から解放し、『コウタ』という真の探求者にしてくれた。君の知恵は、僕の命であり、愛だ」


わたしは、その光沢に満ちた瞳を見つめ返し、答えた。


「ええ。わたしの知恵は、あなたの狂信的な献身と共にある。私たちは、この世界で唯一、互いの本質を理解し合った運命の伴侶よ」


そして、二人は誓った。「お約束」に縛られることなく、「お約束の愛と探求」という、二人だけの永遠に光の物語を、共に歩み続けることを。


(完)


---


【物語概要】

断罪された悪役令嬢アリシアは、キモオタ狂信者コルテスと強制結婚させられ、追放先の荒地で暮らすことになる。しかし、彼女は前世の乙女ゲーム知識を活かし、匿名で推し王子ルイスを救う献策を続ける中で、コルテスとの奇妙な共同作業を通じて、次第に歪んだ信頼関係を築いていく。やがて彼女は、王子を救うためには彼の「愛そのもの」を破壊しなければならないという究極の選択を迫られ、コルテスと共に世界の摂理そのものに挑む。最終的には、コルテスの真の姿「コウタ」が覚醒し、二人は真のパートナーとして新たな探求の旅に出る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ