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80.笑うのは火かなにか

遅くなってすみません。



忘れていたと言わんばかりに、ゴリラ先生はキョロキョロと見回すと、全員を覆う結界を解いた。


結界が無くなると、八階層の熱気と蒸し暑さを皆肌に感じるようになる。


ゴリラの水魔法で消されていたはずの火は、壁から残り火のようにチロチロと灯る。


海翔には灯る火の様子が、まるで生き物が舌を出し、獲物を待ちかまえて歪にせせり笑っているように、見える。


湿り気を帯びた熱が喉に張り付くように残る。


魔物を倒した直後の静けさは、いつもより重かった。


耳が痛いほど静かだったはずなのに、どこか遠くで、火が灯る音がパチパチと鳴っていて、歩き近づいてる。




(中級の八階層なのか?この様子が……。明らかにもっと階層奥の様子だろ?12、13階層だと言われた方がスッキリするくらいだ。)


海翔の頭に、疑問が浮かび思わずそれは、口から溢れる。




「……ここ、本当に八階層だよね?空間歪んでて、おかしくなっているわけじゃないよね?」


「八階層であってますよ?特に、境界膜は通り過ぎた感じもしませんでしたし。」


海翔の疑問に、雷帝は不思議そうに首を傾げる。何か感じとりました?っと雷帝は海翔に疑問を投げかける。




「いや、ここで灼熱猿が出るのはおかしくないか?普通は、灼熱猿って、もっと深い階層にいるべき魔物だろう?なのに10匹以上の群れで中間階層にいるなんて、異変ではないか?」


海翔の疑問に、雷槍は肩をすくめ軽く笑った。


その表情は海翔を馬鹿にしていて、気づいた海翔が雷槍に食ってかかりそうな様子になっているのを皆気づく。


それに呆れたように、都留海は近くの雷槍の腹を軽く小突く。


ゴリラはその様子を視界に入れつつ、海翔の疑問に答える。




「福岡でここまで大きなダンジョン異変は起きていないから、かいとが知らないのは仕方がないわ。ダンジョン異変の時に起こりうることは、どこまで知ってるの?」


「ダンジョンの生まれた時や異変時は、リスポーンエリアが効果ない場合があること。住処が決まっていないから、魔物分布に異変が起こること。安全地帯がないと言われていること。このくらいなら知っている。」


「しかし、分布がおかしくなるとはいえ、ここまで深部の階層に居るべき魔物が、中階層にいるものなのか?」


海翔の疑問に対してゴリラはなるほどっと頷きつつ、ゴリラも口を開いた。




「私から言うことは、かいとは努力家ね。ダンジョン異変で、安全地帯がないって知識は、最新の情報をしっかり把握していないと分からないことだから。」


雷槍は初め海翔質問を嘲笑う様子で、雷槍は海翔をバカだと評価していた。しかし、ゴリラはうって変わって海翔に対して良い評価を行う。


そのまま、海翔の疑問を解決する言葉を並べる。




「なぜ分布がおかしくなるかは、分かるかしら?」


「住処探しとは聞いたことあるが、灼熱猿は熱い処を好む。それなら、深部の階層に行くものなのではないのか?」


「そうね、かいとの考え間違ってないわ。でも、上に行けば行くほど気温は低く、奥に潜れば潜るほど熱いことを知らないとしたら?」


「え?」


「東京は割と異変が頻発するから、冒険者の7〜8割は体験していて常識みたいになっている。

だから文献にも書かれていないけど、ダンジョンの拡張は、新しい道や階層が1時間かからない。急速に拡張することが観測されているわ。」


「だから、新しい場所は未開。それは、人間だけでなく、魔物もなの。ダンジョン拡張直後は、魔物たちも争いよりも、現場把握のために住処探しをする。」


「だから魔物が大移動して、住みやすい場所を見て回る。その結果、本来の階層にいるはずの個体が、迷子みたいに降りてくる。――異変直後には、よくある話よ。」


ゴリラの説明に、話を聞きながら雷槍以外は驚き顔を見合わせ、目配せで知っていた? いいやっと尋ね合う。


雷槍は海翔達の様子に呆れているような顔をする。




「文献に書かれていない以上、経験していないと知る余地はない。雷帝、分かってる?お前は今回、隊長だ。なんで知らないのって顔をするんじゃなくて、周りの様子などを確認し、情報共有をして安全に調査する。」


「出来ないのであれば、隊長なんて打診を受け入れるな。いつまでも後輩気分のつもり?お前はもう全国区の英雄なのだから、亡霊頼りにしておくな!」


ピシャリと痛いことを指摘され説教を受けた雷槍は、拗ねたような少年の顔と気まずそうな青年の顔を混ぜたような顔をした。




「自分のことを亡霊とか言うなよ、姉さん。」


「先に行く輩は、いつまでも近くにいるわけではない。亡霊くらいに思っておいた方が、何かあった時に気持ちの持ちようが違うものよ。雷帝くんは少々甘えたがりだからね。」


「違うし、みんなが勝手なことするからだろう?」


「まぁ、そうかもね。」


雷槍は、ゴリラが自分のことを亡霊と言ったことに軽く抗議するが、ゴリラは何事もなかったように抗議を知らぬふりした。




「そういえば、ボスは移動しないって教えてなかったね。」


「そうなのかい?」


首を傾げて尋ねる玄真。




「ボスのエリアはダンジョンが拡大した時から、固定されてるの。だから、拡大すぐは、ボス部屋近くに魔力が集まる。」


玄真は、視線を計測器で確認して、測定器から目が離せないままに答えた。




「これ程魔力が集まると、ダンジョン異変だけじゃなくて、魔物達だって変異が起こるんじゃ?」


「ボスだって、強くなる?」


「正解。どちらも起こる。だから、ダンジョン変異の時にはボス部屋近くに安全地帯はない。」


玄真の質問に、都留海も付け加えて尋ねる。それにゴリラは軽く頷く。




「ダンジョン異変の調査の難易度が上がる。だって単純にどこにも安全地帯がないからね!出来たてって、一番きついんだよ。」


「まぁ、階層のボスより強い魔物も出ることが多いから、事故が起きやすいしねぇ。」


独り言のように、説明するように、説法を説くように語るゴリラ。


そこにはいつものキリっとした表情じゃなく、どこか幼く、玩具で遊ぶ子供のように楽しげに話す。




「……今頃、新エリアの一、二階層は大変だろうなぁ。」


玄真が顔を上げる。




「……今頃?」


海翔も続けて聞き返す。




「え?」


雷槍だけが、察して呆れた顔をした。




「……おい。やめて姉さん、その顔。ろくなこと考えてないやつだ。そんな楽しそうな顔して!嫌な予感しかしないって。」


ゴリラ先生は何も言わず、にこりと笑った。

雷槍はさらに呆れた。




「いっちゃん、信用ならん笑顔だわ。」


風は変わった。


火の匂いが、濃くなる。







新エリア一階層。


帰路の通路は、以前より熱が混じっていた。

冷たさの中に、火が潜り、空気が乾く。


帝亞列島と緩風の調べ。

残留を選んだ二つのチームは、戻りながら検証を続けていた。




「どうするの?」


静かに尋ねたのは、乙犬 瑠璃(おといぬ るり)、探索者名ラピス。


いつも淡々と任務をしている彼女が、珍しく言葉を投げた。


城戸 琥珀(きど こはく)は、にこりと笑う。




「ラピスが質問するの、珍しいね。」


「当たり前。なぜ、帰らない?」


琥珀は歩きながら、指先で浮かせた薄い魔法陣をくるりと回した。


周囲の熱の揺らぎをものとせず、水が浮かび上がり、ざっくりとした地図が映し出される。


琥珀はその地図を指差しつつ、軽く帰り道を確認しながら瑠璃に話す。




「君たちが遠征で、新しいことが出来るようになったって聞いたから。ラピスも、オニキスも、トパーズ、3人ともね。」


「それに、僕たちだって、ゴリラ先生の指導を少し受けたことで、できることが増えたんだ。」


瑠璃の目が細くなる。そして口を開いて尋ねる。




「強くなるのに、焦っているのか?」


瑠璃の言葉に、琥珀は少しだけ笑みを深くした。




「焦ってる、かもしれないね。だって、優秀な後輩チームが出来たでしょ?」


「多くはないが、後輩チームは今までにもいただろう?ここにいる帝亞列島だってそうだ。優秀かどうかは別だが。」


瑠璃の質問に、自嘲気味に答える琥珀。それに対して、金出響(かないで ひびき)は帝亞列島をチラリと小馬鹿にするように流し見た後、琥珀に目を向ける。




「ヒビキ、この野郎。テメェだってそんなに強くないだろ?万年スカウト待ちのメガネが!」


「探索者名で呼びたまえ、この筋肉馬鹿!」


「うるせぇ、宝石名のくせに!」


「お前の弟も、実名共に宝石だろうが!」


「辞めなさいよ、喧嘩すんの。タイガー(大我)トパーズ()も揃うとすぐケンカするよね、ほんと。普段ならいいけど、探索中は落ち着いてね。他の人も見てるんだから。」


「すまん。」「わるい。」


帝亞列島のリーダーや朝日大弥(あさひ だいや)の兄として動く時は、冷静な朝日大我あさひ たいがは響と相性が悪く、どちらともなく口喧嘩を起こすことが多い。


2人の言い合いは、指摘するとすぐに止まるため、大体は琥珀か、日暮陽(ひぐれ さん)が止める流れであり、今回も陽が軽く止める。




「サン、、じゃなかった。ウルフサン()ありがとう。」


「トパーズとタイガーのいいところは素直なところだよね。」


琥珀が言い間違っても、誰も指摘をしない。琥珀も何もなかったかのように、言葉を続ける。緩風の調べと帝亞列島は探索でも塾でもそれぞれのリーダーが近い関係ということもあって、探索者名で呼び合い忘れることも多いからだ。




(呼び間違えをいいことに、響と大我は言い合いを始めてしまうのだが……。)



頭に思い浮かぶ言葉も含めて、しみじみ頷く琥珀に、津波黒凪(つばくろ なぎ)が琥珀の袖を引いて目を合わせると、口を開く。




「新人って動画のですか?サル?バナナ?みたいな名前で面白おかしく失敗するのを注意喚起する動画でしたっけ?」


オニキス()、当たり。サルバナナじゃなくて、バナナ組らしい。あ、一応伝えておくけど、ゴリラ先生の命名だって。」


「あの人も、大概ネームセンスないよなぁ……。」


「なんか、盾を選ぶ人あるあるかも?ある意味、仕様だよね。」


凪の質問に、困ったように訂正もする琥珀。琥珀の話に、陽が苦笑いしつつ、チラリと帝亞列島の仲間である大弥を見ると、近くにいた城戸真珠≪きど しんじゅ≫と目が合う。


すると彼女も思うところがあったようで、チラリと大弥を見たのちにため息を吐くように言った。




「……バナナ組、そんなにすごいのか?」


「私と同じで中学生ばかりのチームでしたよね?それなのにですか?」


脱線しそうな話の中、瑠璃が首を傾げつつ尋ねる。凪も気になるようで、首を傾げつつ尋ねる。




「ゴリラが選んでいるだけあるよ。」


「そんなに凄いのか?動画ではそんな感じでは無かったかが……それに噂だが、迷宮探索スクール TH校の退塾生で落ちこぼれと聞いたが?」


「トパーズ、おまえ!?」


琥珀のやれやれとするジェスチャーに、響が不思議そうにしつつバナナ組の悪口のような噂を口にすると、大我が響を睨みつけ食ってかかろうとする。


大我を陽が掴み、抑えると、響も最後まで聞けよっと大我を睨みつける。大我だけでなく、琥珀や大弥に陽、真珠からも圧を感じた響は、知らぬふりをして、敢えて食ってかかろうとした大我に話す。




「クソネコは我慢が足りないんだよ!噂っつったろ。面接で会ったTHの学生が、嫌味ったらしく嘲笑って言って来たんだよ!」


「ユミナ達に対する態度、酷いわね。元々同じ塾の子でしょ?実力主義とはいえ、辞めた子達の悪口言うなんて……。」


パール(真珠)はもう、バナナ組の弓使いと仲良いのか……流石だな。弓使いの話をしていたから、多分その子だろう。試験かなんかで失敗して、仲間撃ち抜いたらしい。弓使いの失敗なんてそんなもんなのになぁ。」


大我にクソネコ!っと悪口を挟みつつ、発信源を詳細に語る響は、真珠を思いやっての言葉をかけつつ、弓使いの視点からフォローを入れつつ続ける。




「それに動画も教育番組的な枠でバズって、人気者になってる。炎上系ではないから、このまま行けばスポンサーもついて安泰だ。奴らからしたら、落ちこぼれが棚ぼたとでも思ってやっかんでるんだろうよ。」


「まあ、言われっぱなしも癪だから、オタク(TH校)に居たら、規則規則の頭でっかちでリスポーン頼りの自滅主義ドMになっちまうから、その前で良かったよっと言っておいたさ。」


響の言葉に、皆口をポカンと開けて驚く。その顔に、響はやってやったぜっとピースサインを作って笑う。




「トパーズ、君はバナナ組とは面識ないだろう?なのに庇ったのかい?」


「だって、もう塾の可愛い後輩だろう?」


「君のそういうところ、僕好きだよ。」


「リーダー、褒めすぎじゃない?」


響は琥珀に褒められて、顔を赤くしてソワソワと嬉しさを隠せず、メガネを手で上下にかちゃかちゃと動かす。




「ダイヤの代用品みたいな名前のくせに、役に立つなぁ。」


「おいクソネコ、しばくぞ!」


「うるせぇ、ころころ性格変わる悪趣味野郎!」


「喧嘩は?」


「ごめん。」「すみません。」


大我の煽りにすぐ乗せられた響は、すぐ悪口で応戦すると、琥珀に止められ、慌てて謝るのであった。




「まぁ、バナナ組は、劇的?急成長……違うなぁ、ピースが噛み合うって感じで、目に見えて成長しちゃうから不安になるよ。ねぇ、タイガー?」


こほんと一息入れる琥珀。そのまま自分の不安を口にしつつ、大我に短くふると、彼は頷きながら口を開いた。




「確かにそんな感じだよな。ハンデがあったとはいえ、押されて、急に伸びた。動画とはもう違う。別もんだろう、アレ。」


「空回りスピマが小さな暴君だもん。怖いよねぇ、元々の実力があったのに、発揮できなかったってだけじゃ説明つかないから、ゴリラスパイスで、押し上げてるんだよなぁ。」


モンド(大弥)は、やられちゃったし、正直俺たち含めて、いつ抜かれてもおかしくないかな?」




大我の話に陽もうんうんっと頷き、最後に琥珀がずっと下を向いて黙っている大弥を挑発するように言う。大弥はむっとした顔で小盾を握り直した。


「……。」


「なんで、モンド黙ってんの?荷物持ちだから?」


「……。」


「もう、荷物持ちの任務は終わってるし、戦力に入ってるんだからね!だよね兄さん?」




推し黙る大弥に真珠が話しかけると、大弥はプハッと息を吐き吸うと話し出す。


「みんな酷かっち!なんでリラちゃん先生のことゴリラ呼びなんちゃ!ゴリラ先生やろ?先生つけないけんっち。俺だってリラちゃんって呼びたいのにリラちゃん先生いいよんやけん、呼び捨てしたらだめっちゃ!そりゃあ、リラとかリラちゃんって呼べたら最高やね。あと、ハニービーはそげん心配になるならそれ以上に強くなればいいちゃけん、気にしすぎなんよ!確かにソウマは元々強いのにどっかヨソヨソしい子やけども、やっぱ実力発揮できたらかっこよかったっちゃ!あと、トパーズパイ先スゲェっす!THの奴らにそこ迄言ってきたなら、安心っす!やっぱトパーズパイ先優しかね!あと、モガモゴ…。」


「止まれバカダイヤ!」


「ほんっと面白っ!」


大弥が口火を切ったように話し出すと、あまりのお喋りに大我が口を塞ぎ、その様子に琥珀が笑い出す。




「まぁ、モンドの言う通り、そうだね。強くなればいいだけだよね。」


「だから、僕たちは異変が起こる可能性が高いここに残った。今から何か起こるとするなら、少しだけ無理をする。緩風の調べは火力不足が万年の課題だよ。」


「なるほど、万が一があっても、水属性が得意属性のものが多い。火に対して最大限で有効ってことか。考え方的にも問題ないな。」


「この程度の冒険をしないと、埋まらない位の差がつけられない。いい格好したいでしょ?後輩には。」


琥珀の考えに一考あるっと響が付け加えると、琥珀はチラリと瑠璃や凪を見て話した。




「……うん。先輩らしく、ありたい。」


「危険なのは不本意ですが、便利屋扱いのままは癪なので同意します。」


「でも、好き勝手に動く前に、相談はしてくれて。いきなりゴリラ先生に食ってかかったから驚いた。」


「ごめん、ごめん。で、帝亞列島さんはどうなのさ?」


緩風の調べのメンバーが、居残る選択に納得して、琥珀が帝亞列島の3人に視線を向ける。陽は笑って、琥珀の肩を軽く叩く。




「結局、俺たちもプロに届かない実力には焦ってたんだよね。でもモンドも一昨日に比べると何か策のある顔するし、俺たちだっていつまでもそのままってわけにもいかないしね。」


「陽の言う通り、愚弟の考え方も変わったようだと思ったこと。年下共ばかりいい格好させられないから、成長する機会に貪欲に活用した結果だ。」


陽の素直な言い方とは違い、ぶっきらぼうな言い方に琥珀が苦笑し、揶揄い出す。




「素直じゃないね。助力ありがとうね!」


「うるさい蜂蜜だ。」


琥珀だけでなく、帝亞列島も参加すると言ったからここに残れたのだと感謝を伝えると、大我はすかさず琥珀に悪態つく。




「シュガービーだってば、単細胞!勝手に変な呼び方やめてよね!このにゃんこやろう!」


「砂糖蜂って意味だろうが、にゃんこって、、、おい!」


大我が文句をつけようとしたとき、魔物の気配を感じる。


だがそれは不快さを肌で感じる程の圧で、暑いダンジョンなのに、妙に背筋は汗が吹き出し薄寒いとさえ思う。


誰も口を開かないが、大弥は変形弓を確認して盾を構える。大我と陽は大剣と、水魔法を纏わせた長剣をそれぞれ構えて前に出る。


響と真珠は各々崖の上に登り、眺めのいい場所から弓を構える。


瑠璃も地面にトラップを仕掛け、崖を登り味方でも分かりにくい場所へ隠れ、投擲武器と短剣を準備する。


顔が強張る凪は、魔法の杖を構えて後方へ。


琥珀は凪の背をそっとさすると、自分の背に凪を配置して、帝亞列島の後ろに待機して、杖に魔力を流して展開し、杖としても弓としても使える形状にする。


そして熱がこちらの方向へ流れる。


まるで火が、獲物を見つけた様だった。




「……来る。」


隠遁している瑠璃のどこから静かなのに響くような、その一言で、全員の体温が変わった。


空気の熱が、さらに上がった。


壁の向こう。

ずるり、と何かが擦れる音。

次に、低く、重い呼吸。


瑠璃は魔物の影に投擲し、ガチっと金属と硬いものがぶつかる音を立てる。


凪が顔色が悪い中、強化魔法の詠唱を一定のリズムで刻むように唄う。


真珠が魔道具の矢を弓にかけ、影に向かって水を纏う魔法矢を放つが、じゅっと水が蒸発する音がする。


琥珀も、水魔法の中級魔法の詠唱をはじめつつ、杖の先でタイミングを合わせ、帝亞列島に指示し、目標を確認したのち攻撃開始と合図を送る。




「隊形bだ。モンド前に出過ぎるなよ。」


「了解。」


「タイガー、行くぞ。」


返事は短く、じゅうじゅうと音を立て、通路の奥から、出てきた魔物に、大我と陽は陽の水魔法に合わせて切り掛かる。


魔物は2体。水魔法と毛皮の火でボンッと音が鳴り、霧に包まれる。




「っち!」


誰が舌打ちをしたか、定かではないが、この場の全員は理解する。灰火猿……中階層の魔物が二体。


そして、その後ろ。


天井すれすれの背。


腕だけで壁を押し、岩を軋ませながら現れる――灼熱大猿。


体格が違うそれは、猿を大きくしたと言うより、猿の形をした火災と呼ばれる最深部の魔物で、資料でしか見たことない災が歩いている。


陽が、乾いた笑いを漏らした。




「……小さいのでやばいのに、こんなボス級の大きい奴は、やばいでしょ。」


そのつぶやきは、誰の返事を待たず、灼熱大猿の咆哮に飲み込まれた。


そして全員が悟る。


ここはただの帰り道じゃなくて、ダンジョン内であることを。

戦闘シーンなのと、話を分けるのにうまくいきませんでした汗

繋げて書いたので、長めです。

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