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55. 回り道の才能


大弥の胸に矢が打ち込まれ、崩れ落ちたのを見た剣吾は、訓練室の扉越しに冷や汗をかいた。


ゴリラ先生が、琥珀に声をかける。


「琥珀、私の手伝いはいる?」


「いいえ、やり方を見たので、やってみます」


琥珀は、目の前で繰り広げられた追跡魔法の連携を思い出して、穏やかに笑って返した。


「わかった。安定しなければ、手伝うよ」


「お願いします」


魔李は、先ほどの複合魔法の感覚を必死に言葉にしようとしていた。


「説明は難しいですが、感覚としては、凧上げで、高度や向きを糸でコントロールするときのような感じです。篠栗町の方では正月に凧上げをしていると聞いたのですが、いかがですか?」


琥珀は魔李の言葉に目を見開いた。


「あぁ、毎年しているよ。なるほど、分かりやすいね。試してみるよ!」


真珠が兄に声をかける。


「兄さんは矢を遠くまで飛ばせるし、問題ないよ」


弓菜も興奮気味に助言する。


「えっと、速度を出すのは魔力量やコントロールもあると思いますが、大体のトレーニングルームは部屋に風が通り抜けているから、風の流れを読むといいかもです!」


それぞれの助言を受け、琥珀は弓を構えた。


(弓が台頭した理由も、すべては魔力だ。この原理が、僕にチャンスを与えてくれた)


琥珀は、頭の中で、授業で習ったダンジョン兵器学の知識を整理した。


「銃火器はダンジョンで使えない」


――それは探索者界の常識だった。


(銃火器自体が、魔力が通されていないと何故かダンジョンに入れない。魔力を通せば持ち運べるが、それが問題だ。魔力が混じった銃火器を使うと、反発して銃火器に込めた魔力が爆発を起こしたり、銃火器自体が弾け壊れるリスクがある。弾が暴発する危険性も高い。魔力と反発しないダンジョン鉱物で作っても、強度が保てず、あまり長持ちしない)


(さらに致命的なのは、銃は発射の際に瞬間的に莫大な魔力を放出するが、その反動で使用者の魔法が使えなくなったり、治療ができなくなるため、銃を使う人は少ない。)


(だからこその弓、そして、うちの弓道道場もダンジョン出現で、稀に見ないほど入道者が増えた。)


琥珀は、代々弓道道場を営む城戸家の長男として生まれた。


だが、妹、真珠の天才的な弓の才能に圧倒されていた。


琥珀の腕も悪くはないが、年下の妹が自分より軽々とこなす様子に、劣等感と後継者としての申し訳なさを感じ、弓を断念した。



(魔法は弓からの逃げだ。本当は魔法に専念すれば、魔法使いとしてそこそこ大成できることも理解しているが、魔力量的に、世界一の魔法使いとなれるわけではないことも知っている。だから、私は魔法に逃げたんだと、常に自分を責めていた)


そこに舞い降りたのが、追跡弓だ。


(追跡弓は、弓も魔法も精通した魔法使いが得意とする分野。弓の才能では真珠に敵わなくとも、魔法との複合という分野なら、真珠を唯一凌駕できる可能性がある)


そして、ゴリラ先生の意図にも気づいた。


大弥と真珠は幼馴染だが、幼馴染みで弟分に当たるとは言え、大弥の喧嘩の仲裁を琥珀に頼むには薄い関係だ。


今回の複合魔法レクチャーは、弓菜や真珠に教えるのも目的だろうが、自惚れとは思うが、琥珀に追跡弓を実践させるための舞台だったのだ。


本当にこの先生はどこまでが作戦なんだ?と琥珀は呆れ半分、畏怖半分の感情を抱いた。


しかし、弓と魔法が中途半端な自分を、この塾最強と謳われるゴリラ先生に認められた嬉しさが勝った。


「ほんと己の使い方が上手な人だ。」


「まんまとのせられてやる!」


――琥珀は瞳に力を込め、自信を持って矢を構えた。


「ケンゴ君だったかな?君には恨みはないが、倒させてもらうよ!」


琥珀は矢を放った。


初めは遅く、軌道も定まらなかった矢は、琥珀が風の流れと魔力コントロールに集中するにつれ、徐々にスピードを上げた。


剣吾は盾で矢をぶつけて弾き、身体に当たらないよう巧みに無力化していく。


何度かぶつけたことによる負荷で、矢は二つに割れて壊れた。


「甘いよ、ケンゴ!」


琥珀は壊れた矢を二つの新しい追跡矢に作り変え、二つを同時に襲わせた。


剣吾は一つを叩き壊すが、もう一つを防いでいる間に、壊したと思われていた最初の矢の破片が魔法で繋ぎ止められていたことに気づいた。


その矢が、背後から剣吾を刺そうと襲いかかった!


「もらった!」


剣吾はそれを見計らい、地面に大楯を叩きつけ固定。


「あまい!」


剣で背後からの矢を縦に叩き切り、固定した盾に弾かれた前から来ていた矢をも、瞬時の判断で縦に叩き切った!


矢は霧散し、剣吾が勝利した。


琥珀は、晴れやかな顔をした。


コンプレックスを乗り越え、自己の才能を受け入れた満足感が得られたのだ。


「弓菜ちゃんの動きをヒントに射ってやろうと思ったのに、負けたか」


剣吾は、息を荒げながら、盾と剣を収めた。


「ゴリラ先生とユミナとマリの仕業だろ!出てこいよ!」


剣吾が壁に向かって叫んだ瞬間、ゴリラ先生、弓菜、魔李、真珠が盾の訓練室へ入る。


琥珀と剣吾、眠っている大弥を囲んで全員集合した。


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