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53. 世の中、賢い奴ほど騒音の隣で物事は動くものだ。

ゴリラ先生、城戸琥珀、城戸真珠、そして若宮弓菜と大隈魔李の五人は、廊下を歩いて盾の訓練室の前に差し掛かった。


訓練室のドアの向こうからは、朝日大弥と剣吾の怒鳴り声が、廊下全体に響き渡っていた。



「おい、マジでお前ふざけんな!こちとら理不尽ゴリラに言われて修行してんだよ!邪魔すんな!」

「リラちゃん先生を理不尽ゴリラなんて失礼な呼び方かたしてんじゃねぇっちゃ!オメェみたいな奴!ここで訓練する資格なんかなかろうが!」


「ゴリラ先生はゴリラだよ!ごを勝手に省略すんな!失礼だぞ!それに俺はただでさえ重い盾抱えて持たされてフラフラしながら運んだんだ!アホないちゃもんつけてくるアホとやり合ってる暇なんてないんだよ!」


「うるせぇ!ばか!てめえみてえな半端な剣士に、盾の訓練部屋を渡せんっちゃ!さっさと剣使ってあっちいかんね!はげ!」


「お前の方がハゲ!」


耳に届くあまりの幼稚な喧嘩に、ゴリラ先生は大きなため息をついた。


「どうせ止めても聞かないだろうなぁ」


ゴリラ先生はそう言いながら、獰猛な表情とは裏腹に、どこか楽しそうに笑った。


「やむを得まい。ここは実地訓練としよう」


真珠が首を傾げた。

「実地訓練?先生、どういうことです?」


ゴリラ先生は真珠に向き直った。


「真珠。お前は特殊魔法弓、睡眠矢を放てるか?」


「苦手です」


真珠は正直に答えた。


「私も、まだ打てません」


弓菜はゴリラ先生からの視線に応えて首を振る。


「琥珀は?」


「打てますが、追跡弓ができないので、ここからでは壁を隔てて弓を当てられません」


琥珀は冷静に答えた。


ゴリラ先生は顎に手を当て、なるほどと頷くと魔李に声をかけた。


「魔李。視覚魔法で、壁の透過は出来るか?」


魔李は驚きながらも、すぐに訓練の機会だと察した。


「あ、出来ます、えっとあの?」


戸惑いつつも魔李は杖を構える。その様子にゴリラ先生は満足そうに笑った。


「良い機会だ。琥珀や真珠、そして弓菜と魔李にも良い勉強になる。今から、複合魔法と複合弓をしよう」


四人の驚く姿を前に、ゴリラ先生は不敵に笑い続けた。


「まずは理論からだ。魔李の魔法で壁を透過させて、中の状態を確認する」


魔李はすぐに目を閉じ、両手を壁にかざした。魔力の波動が壁に伝わると、分厚いコンクリートの壁が透け、中の剣吾と大弥が怒鳴り合っている様子が、外から鮮明に見えた。


「よし。琥珀、睡眠弓の矢を4本作れ」


「はい」


琥珀はすぐに特殊魔法を使い、矢を生成し始めた。


「琥珀の弓を打つのは私、琥珀、弓菜、真珠の4人だ。剣吾は避けられないだろうが、こちらは牽制で大丈夫」



ゴリラ先生は、指を折って計画を説明していく。


「大弥に向かう矢は、弓菜と真珠、私で打つ。」


「真珠、弓菜。当てれなくても良いから、弓菜は風魔法を、真珠は水魔法を、弓の後ろ部分に繋げておけ。」


「操作の補助を行う。はじめに2人で弓を射らせるから、頑張れよ」


「恐らく大弥は不意打ちでも、特有の風を切る音で魔法弓の攻撃であることを察知するだろう。元弓使いだ、避けられる。それに、お前たちの魔法を繋げた程度の追跡矢は速度が出ていないから、簡単に避けられるはずだ」


「だが、大弥は目の前に剣吾がいるため、剣吾からの追撃を警戒して動けまい。止めに私が魔李の補助魔法と繋げて追跡魔法の基礎を教える」


「失敗しても、良いから、動く人間的で頑張ってみようか」


弓菜は顔を引き攣らせた。


「あの、それって、矢で射られる人大丈夫なの?」


「しぶといから問題ない


ゴリラ先生は呆気らかんと言い放った。


琥珀はゴリラ先生の様子に呆れつつ、冷静に補足した。


「特殊魔法弓は魔法で作れば、魔法と変わらないよ。矢で打たれた傷は傷にならないこともあるし、ダメージとして加算されないから、威力が酷くなければ、致命傷にもならないし」


真珠も頷いた。


「大弥はすばしっこいし、避けるの上手だから、不意打ちで威力がないと当たらないわ」


「まぁ、何があっても、私の責任だしな。こんな良い素材はないから、先輩に学ばせてもらいなさい」


琥珀は呆れたようにゴリラ先生を見た。


「ゴリラ先生が、大弥に会いたくないだけでは?」


「あはは」ゴリラ先生はにっこりと笑い返した。


琥珀はため息をつき、真珠はもうとむっすりする。


「まぁ、お説教しなきゃいけない時に、あれはちょっときついから、少し黙っててもらおうと思ってね。じゃあ始めようか」


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