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51.田舎のやんちゃ兄貴は大体、ネームセンス迷子。

中学生らしいわちゃわちゃとした会話を弾ませながら、四人は塾へと足を速めた。


柚須ダンジョン塾仲原校に到着し、着替えを済ませて廊下を歩く。


指導教員のゴリラ先生の姿はまだない。


「今日は偶数日だから、私たち女子チームは体力訓練よね」


弓菜は疲労を思い出し、ため息をついた。


「ダンジョンに潜る日以外は、奇数日偶数日のローテーションで体力訓練や個室修行って、先生うるさかったもんね」


「うん、ランニングきついけど頑張ろう」


眉を顰める弓菜に、魔李も不安げに頷きながら励ました。



「やりぃ!俺たちは個室訓練だな!きついけど、なんか感覚掴んでたし、ちょっくらレベルアップしてくるわぁ!」


剣吾が元気よく能天気にかけ出す。


その様子に、槍真はやれやれとジェスチャーすると、また帰りなっと弓菜と魔李に声をかけて、剣吾の方に向かって歩き出した。


女子二人は軽く手を振り、それぞれの訓練室へと向かった。


魔李と弓菜は、トレーニングルームを繋ぐエントランスホームへ向かう。運動前のストレッチはそこでするよう言われていたからだ。


槍真は朝練を含め、昨日からの課題を思い出しながら、訓練室の扉に手をかけた。


(昨日、ケンゴの動きを見ていて、俺の指示の判断の遅さが致命的だと痛感した。もっと冷静に、短く、的確に早く……)


その瞬間、訓練室の扉が内側から開いた。


中から出てきたのは、制服姿の2回生の先輩二人。


一人は派手な赤髪、もう一人は明るい黄色の髪だ。


「あれ?あ、そうか、俺たち今日探索日だから違うもんな。今日一回生の日だったか?悪ぃ!」


「お、バナナ組のスピマじゃん。え?一回生でもこのシュミ室使うの?まじ?」


赤髪の先輩、朝日あさひ 大我たいがは、全く悪気のない、呆気からんとした様子で謝罪した上で、槍真を探索者名で呼んだため、槍真は一瞬戸惑った。


「え、あ、すみません……えっと、動画からですかね?探索者名はスピマですが、本名は江辻 槍真です」


槍真は高校生ぐらいの2人に、慌てて名乗る。


「ごめんな。動画で探索者名使ってたから、ついスピマって呼んじゃった。」


黄髪の先輩、日暮ひぐらし サンが、親しみやすい笑顔を向けた。


「俺は朝日大我。こっちは日暮陽。チーム帝亞列島ダイアレットウだ」

大我はニヤリと笑みながら、続けた。


(ダイアレットウ?、ゴリラ先生よりもネームセンスないやつか!ちょ、不意打ちすぎる。)


槍真の脳裏に、率直すぎる感想が浮かび、思わず表情が引き攣った。


その顔を見逃さなかった大我が、ニヤリと笑った。


「おう、ソウマ。今、ダサいと思ったろ?俺も思うよ、このチーム名」

大我はそう言って、陽の肩を叩いた。


「ふざけんな、タイガ!お前の弟が、勝手に付けて提出したチーム名なんですけど?」


「まじで!チーム名に対して文句を言っていいのは俺だけだと思うんですよ、そこんとこどう?ん?」


笑い転げそうな大我に、陽は圧をかけるような笑顔を向けた。


「やめろ、やめろ。そんな怒んなよ、サンさんや。その節はどうも!」


大我は苦笑いした。たくっと大我の肩を軽く殴り、陽はふと真面目な顔になり、槍真に尋ねた。


「江辻 槍真くん、江辻、、、ね。江辻くんはさ、お兄さんいる?」


「はい、いますが?」


急な質問に、槍真は緊張して返した。


「江辻 槍磁だったりする?」


「え、あ、はい。二番目の兄が槍磁です」


「やっぱりか!江辻先輩の弟くんか!なんか、似てる似てる。」

陽は嬉しそうだが、少し複雑そうに笑う。


「俺ら、中学の時、江辻先輩に世話になったんだよ。あの人は本当に強かった!」


大我は懐かしそうに笑った。


「じゃあ、江辻先輩を苗字で読んでるからさ、ソウマって呼んでいい?」


陽がニコリと尋ねる。


「はい」

槍真は素直に頷いた。


槍真は兄を褒められ、誇らしい気持ちになったが、先輩たちのノリに戸惑いを覚え、話を逸らした。


「あの、先輩方もシュミレーターでの訓練ですか?」


「そうそう」

陽が笑顔に戻る。


「俺たち、いつも使ってるダンジョンが点検で一時封鎖されててさ。一回生じゃここ使わねぇだろうなって思ってここ勝手に借りてた。」


呆気からんっと大我が笑って言う。


「本当は許可が必要なんだが、一回生で使う子今までいなかったからさ。やっぱ動画でバズるだけあるな。ゴリラ先生の指導が凄いのもわかるが、シュミレーター使うのは一回生の終わりにチームでのことが多い。」


陽のゴリラ先生や自分を褒める言葉に槍真は言葉が詰まりつつ、嬉しい気持ちに、少し顔を緩ませる。そんなようすに、大我も陽も顔を軽く見合わせた。


「やっぱ見込まれてんのは嬉しいよな!俺たちも二回生になってここ進められたけど、弟は武器も安定してないから、別訓練ってよく言われ出るぜ。因みに俺たちは、俺とサンのコンビネーション確認をメインに訓練中。」


大我がの説明に、陽が苦笑いしつつ補足する。


「うちのチームは、あと一人いるんだ。タイガの弟で、今中2だ。江辻先輩の弟なら学校は一緒だろう。

盾の部屋にいるんだが……。」


少し困った顔をしつつ陽が言うと、大我が俺の弟の話だからなっと、説明を変わる。


「弟は、体が小さくすばしっこい弓使いだったんだが、ゴリラ先生に助けられて、盾使いになるって、盾に変更したんだよ。」


「お前は小さいから向いてないって言ってんだが、聞かなくてな。ゴリラ先生は、中学生なら潰しが聞く。違う武器に触ってれば、視点も増える。盾はサブ武器に悪くねぇって言うもんだから、その気になっちまって、今はその修行中だよ」


「兄としては弟がやりたいことは応援してやりてぇが、中々なぁ。」

大我は複雑な表情で言った。


「大我の弟は俺の弟みたいなもんだから、まぁ、信じて待つ感じだよ。そのための連携だよ」


「盾でも、弓でも俺らが支えれば、と思ってのコンビネーショントレーニングだ」


先輩たちの話に、槍真は、自分たちのチームとは違った、支える関係に少し感心する。


「ま、そういうわけで、コンビネーション練習だが、攻撃の核も欲しいし、よかったらソウマも混ざれよ」

大我は提案した。


「俺、連携とか説明とか下手で……」

槍真は正直に言う。


「動画見たぞ。酷かったな。江辻先輩の弟とは思えねぇほどに。だけど、出来ないからこそ練習あるのみだろ?」

陽は遠慮なく指摘する。


大我も続けた。

「俺は江辻先輩との連携はしたことあるから、槍使いの連携方法知ってるぞ。言っても、槍使いと組んだの江辻先輩だけだから、槍のこと詳しいわけでもないし

、正直他の人とも連携もやってみたかったから助かるぜ!」


「ソウマは他のチームとの連携練習まだだろう?俺らも、いつも使ってるダンジョンが、使えるようになったらいなくなるからな。まぁ、一緒に修行しようや」


槍真はこれを実戦形式での指示出しの機会と捉えた。


「お願いします!」


もしかしたら、何か掴めるかも!槍真は先輩たちとの連携訓練に食らいつこうとするのだった。

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