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馬鹿は馬鹿でも限度はある。



洞窟の入り口にて、空中に赤点滅。ゴリラ先生の魔道具のカメラが静かに光っていた。

バナナ組の初配信――記念すべき第一回目のために、ゴリラ先生が持っていた魔道具カメラを起動している。。


「い、いよいよ、だね……」

魔李がそわそわとローブの裾を握る。


「緊張すんな。いつも通りやればいい」

槍真は短くそう言い、槍を肩に担ぐ。


「そ、そうだよ。……私たち、練習してきたし」

弓菜は弓を握りしめ、深呼吸を繰り返す。


剣吾は、大剣を背にずしりと背負い、声を張り上げた。

「よし! みんな、気合い入れていくぞーっ!」


カメラはバナナ組を優しく映している。



スライム戦


「出たぞ!」

青く光るスライムが、洞窟の床をぬるりと這ってくる。


「ス、、す、す?えっと! ス⚪︎ーピー! 頼んだ!」

剣吾が叫んだ。


「今、ちがうなまえだったぞ?スヌー⚪︎ーじゃなくて、スピマだから!?」

槍真がツッコミを入れるが、戦闘は待ってくれない。


槍真は一歩前へ出て、鋭い突きでスライムを弾き飛ばす。

槍の先がぷるんとした身体を貫き、ゼリーのように飛び散った。


「ナイス! 次は……えっと、ゆ、猿女! ……じゃなくて、えっと、バナナ女? だっけ?」

剣吾が慌てて弓菜に声をかける。


「誰が猿女よ!」

弓菜の顔が真っ赤になり、思わず怒鳴った瞬間――

スライムが飛びかかってきた。


「あっ!」

弓菜は矢をつがえたまま後ろに下がり、剣吾が慌てて前に出る。


「任せろ! 俺が――」

ズボンッ!


スライムに丸呑みされ、光の粒子になって消えていった。

その先に、弓菜が、弓を構えて、スライムの核を矢でいる。


「……剣吾。」

スライムが討伐されたのを確認して、槍真が額を押さえる。そして、自分も名前を思わず言ってしまったことに、マスクを抑える。


「今の、私、悪くないわよね、スピマ?」

弓菜が嫌そうな顔をして、槍真に聞き返す。


「今のは、バナナ男が悪い。ちゃんと探索者名は覚えないとだし、名前が決まってなくても、仮名もちゃんと覚えないとダメ。」

魔李が優しそうに言いつつ、剣吾の待つリスポーンエリアへ警戒ながら戻る。


「ご、ごめん!猿女でよかったっけ?」

リスポーンエリア特有の光の中にいた剣吾が、泣きそうな顔で弓菜に聞く。


「猿じゃないわよ!嫌だけど、仮名はバナナ組からあんたがバナナ男、私がバナナ女よ!」

頭を抱えるように、弓菜は叫んだ。



「切り替えていけよー。名前呼び間違えないようにとは言ったが、最終的に、ばななん、ゴリゴリみたい複製音で消せるから、集中していけー!」

ゴリラ先生は興奮する弓菜の頭を撫でつつ、声をかけた。


「え、えっと……わ、私、撃ちます!」

魔李が必死に詠唱を始める。


「が、頑張れ、スモモ! あ、ちが、魔李! スモモで合ってる?!」

剣吾が慌てて声をかける。


「え?え!い?!い、今の流れで聞かないで!あ、あの、逆に混乱するから。やめてよ。」

魔李の魔弾が一瞬軌道を外れ――だが奇跡的にスライムに直撃した。


「……やった、倒せた……!」

魔李が胸を押さえ、安堵の笑みを浮かべる。


「ナイス! スモモ! いや、魔李!」

えっと、どっちだったか?っと首を傾げる剣吾に、少し余裕のない魔李は声を上げる。


「だから、どっちかにしてよ!!」

珍しい、魔李の叫びに、弓菜の弓と槍真の槍の硬いところで、いい加減にしなさいっと、剣吾は2人にたたかれた。


------


「お、俺もやるぞ! 次は絶対間違えない!」

剣吾は自信満々に大剣を構える。


「バナナ男、後ろ!」

木の上から、弓を構えた弓菜が慌てて叫んだ。


「バナナ男って俺!? 違う、俺は勇者……!」


その一瞬の油断。


背後から襲いかかるスライムに、また飲み込まれて消える剣吾。


「……七回目」

槍真が淡々とカウントしつつ、代わりにスライムの核を槍で破壊する。


「……ほんとに大丈夫かな、この人」

魔李が呟いた。


「いい奴なのに……残念」

弓菜まで額を押さえていた。


探索終了後


スライムをなんとか殲滅したものの、リスポーンの光がまだ眩しく残っている。

剣吾は息を切らしながらも、大剣を掲げた。


「ど、どうだ……俺、頑張っただろ……?」


「どんな初心者動画でもないぞ。名前呼び間違えて死ぬ奴なんか、、、。まじで初めて見たわ。」

槍真が冷たく突き放す。


「ち、違う! あれは慣れてなくて……」

剣吾は涙目で弁解する。


ゴリラ先生は腕を組んで、どっしりと構えていた。


「今回の探索は、死なないようにしようと、講義で話して、気をつけて対処できていたように思います。前回より動けていたので、スライムに負けることもありましたが、慌てずに倒せてました。」


弓菜、槍真、魔李の顔をしっかり見てニコリと笑う。

そして剣吾の顔を覗き込んで、笑みを深める。


「私も講師歴は短いし、探索者歴も少ないが探索者名の呼び間違えする方も少なくはないですが、それに気を取られてスライムに10回以上殺される人は初めて 見ました。まじでどうしようもないからね、バナナ男くん。本当に反省して、今回の動画からメインにするから。」


い•.い・わ・ね・?っと低めの声で言うゴリラ先生に、剣吾はそんなーっと叫ぶ。


それを聞いた他の子供達は笑い転げる?


「……馬鹿でいいって言ったの、間違いだったかもしれん」

先生はぼそりと呟いた。


「せ、先生ぇ!?!?」

剣吾が泣きそうに叫ぶ。


「ほんと、この配信……炎上しちゃわないかしら……?」

ゴリラ先生のため息は、カメラにも収録されたのだ。

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