やっぱり、お説教はあります。
教室の空気が少し緩んだのも束の間だった。
ゴリラ先生はまだ眉をひそめ、唇を引き結んでいた。
「……ったく、もう! 塾長、確かに私の授業が不甲斐なかったですが、スタンピートの画像はやめてください。」
「ゴリラ先生、不甲斐ない自覚ありますね?」
玄真塾長の声は氷のように静かだった。
だが、その瞳は鋭く細められている。
「、、、ゴリラ先生。いや、リラちゃん。お話いいかい?」
「え、えっ、今はちょっと……」
「今だからだよ。威圧の被害者の前で怒られるからこそ意味がある。何度も同じことをしなくなるよね? わかるよね?」
有無を言わせぬ玄真の声にびくりと肩を震わすゴリラ先生。
「……う、うむ……」
鋭い睨みに押され、ゴリラ先生は観念したように、するりと正座をした。
子供たちは目を丸くして固まる。
「あ……先生……正座した……」
「……ほんとに……座った……」
玄真は腕を組み、淡々と口を開いた。
「まず、先日も行ったが、君は強引だ。生徒たちを攫うように連れて行った件。恐怖を無視して無理に引っ張り込むのは指導ではない。暴走だ」
「え、えと……その……はい……」
「それから威圧。生徒相手にあんなものを使うなんて。君は自分がどれほど強力な力を纏っているのか、理解していないのか?」
「う……あ……わ、わかって……うむ……」
「理解しているならなお悪い。人を殺す力と同じなんだ、あれは」
「……はい……」
玄真の声は感情を抑えているのに重い。
子供たちは、縮こまるゴリラ先生を見て、かえって不思議な気持ちになった。
後ろの席で、剣吾が小声で呟く。
「……なあ、これ……お母さんが怒ってるみたいじゃね?」
弓菜がくすっと肩を揺らす。
「わかる……なんか色んなこと遡って言われてるし……完全に家庭感……」
魔李は口元を押さえ、必死に声を殺している。
「しっ……聞こえるよ……でも……ぷっ……ほんとだ……」
槍真も耳まで赤くしながら俯き、震えていた。
「……笑うなよ……絶対笑うなって……でも、あれ……完全にお説教だろ……」
抑えた声は、少しずつ大きくなり、ついにくすくすと笑い声が広がってしまう。
玄真は説教を止めず、ゴリラ先生は「うむ……はい……」とどもり続ける。
その対比に、子供たちはこらえきれなくなり、肩を震わせて笑った。
そのとき。
「塾長」
澪先生の穏やかな声が割り込んだ。
澪は静かに微笑み、しかしその瞳は子供たちをしっかりと見ている。
「そんなに怒ってばかりいると……最愛の妹さんに嫌われますよ?」
玄真の動きが、一瞬止まった。
子供たちは目を丸くして固まり、ゴリラ先生も「えっ……」と顔を上げる。
教室に、妙な沈黙が落ちた




