いざ、ヌコスケを探しに!
「飼い猫の失踪事件…ですか。その事件、今回の無料キャンペーンで僕が解決しましょう!僕の推理力があれば、きっとすぐに解決できますよ」
確かに小さな事件かもしれないが、目の前に困った人がいるのだ。探偵として、この事件を解決しないわけにはいかない。
「ほんとですかっ?!神!」
彼女の眼は長い雨が上がった後の虹のように輝き出し、両手を合わせて僕を拝むポーズをした。僕は神と呼ばれて悪い気はしなかった。
「では、早速調査を進めましょうか。まずそのヌコスケ?について詳しくお聞きしたいんですが…」
「あ、そのまえに一つだけいいですか?」
「え?はい。どうしましたか?」
僕が不思議そうに彼女の顔を見ると、彼女の口元がすっと僕の耳に近づいてくた。
「このことは、絶対に、騎士団には話さないでください。ヌコスケのことも、これから何か起きたとしても、全部です。」
今までの明るい彼女の声とは違った、低く小さな声が耳の中に流れ込んできた。僕はその声に圧のようなものを感じ、少し緊張してしまった。
「わ、分かりました。」
どうして騎士団に話してはいけないのか、気になったが深く詮索をしないようにした。きっと彼女なりの事情があるのだろう。
「ありがとうございます!物分かりが良いですね!」
彼女は笑顔でお礼を言うと、ヌコスケの特徴や失踪した経緯について語り出した。
ヌコスケの性別はオスで、全身が白くて、目が真ん丸で青色をしている。他の猫よりもちょっとぽっちゃりしていて、革でできたこげ茶色の首輪をしている、とのことだった。
普段は街の外れにある彼女の家で一緒に住んでいるのだが、彼女が夜ごはんを作っていて目を離したすきにいつの間にかいなくなったらしい。
換気のために部屋の窓を開けていたので、そこから逃げたんじゃないかと思っている、と、話していくにつれ彼女の声は鼻声になり、また涙が目から溢れてきていた。
「とにもかくにも、本当にかわいくて、愛らしい猫ちゃんだったんですぅ…。私、あの子がいないともうだめでぇ…。ご飯の前と後にはいつもヌコスケに顔を埋めて息を吸ってたんですぅ…。あとトイレの後もぉ…。またヌコスケを吸いたい…。」
彼女は泣きながら僕に訴えかけてきた。僕は苦笑いで彼女をなだめながら、ヌコスケがどこにいるのか、思考を巡らせた。
「お話を聞いた限り…おそらくヌコスケはまだ家の近くにいそうですね。」
「…ほんとですか!!」
彼女の表情が再び明るくなった。テンションの上がり下がりが荒波のように激しい。
「室内飼いの猫はあんまり遠い所には行きませんから、家の周辺を隈なく探せばきっと見つかるはずです!」
「そうなんですね…!では、私の家まで案内しますね!ここから歩いて15分くらいでしょうか。」
僕達は彼女の家まで徒歩で向かうことになった。
「そういえば、私の名前まだ言ってなかったですね。スズといいます。どうぞよろしく!」
「スズさん、ですね!僕はライムといいます。」
「ライムさん、美味しそうなお名前ですね!」
そんな他愛もない雑談をしていると、すぐにスズの家まで着いた。スズの家は、見たことのないほどの豪邸だった。
広大な庭には見たことのない種類の花が咲き乱れ、しっかりと見上げないと屋根まで見えないスズの家はちょっとした城のようにも思えた。
僕は、こんなところに住んでいたヌコスケを羨み眩暈がした。




