エピローグ
事件の後、僕たちは騎士団を呼び、事件の詳細を伝えた。火事はすぐに消火され、幸いにも被害は出なかったそうだ。そして、 勇者が剣士を殺して逃亡したことは、国家機密として扱われることになった。国は新しい勇者を探し、次の勇者が決まった段階で、今の勇者は死んでしまったものとして正式に国民に発表するらしい。悔しいが、結果的には勇者は死んでしまった扱いになり、テトラを殺した彼は自由な身分で生き続けるという目的を達成しそうだ。
僕はというと、探偵の仕事をはじめることにした。魔法使いに「探偵さん」と呼ばれたことを真に受け、探偵という仕事に興味を持ったのだ。僕はあの事件の後、町の図書館に通うようになり、探偵の仕事の始め方を勉強し、小難しい手続きを経て、なんとか探偵になることができた。
探偵の仕事は新鮮だった。困っている人を助け、お金が貰える。そのお金で生活ができる。そんな幸せな仕事があっていいのか、と僕は素直に思った。
探偵の仕事で稼いだお金を使って、自分を育ててくれた商人への恩返しもできるようになった。最初に僕が商人に定食を奢った日、商人は魚のフライを食べながら涙を流していた。それを見て、僕も少しだけ泣いてしまった。
探偵の仕事をしていると、迷宮入りになりそうな事件に出会うこともある。そんな時思い出すのはいつも、僕にとっての勇者様が教えてくれた言葉だった。
「君には『考える』という力があるはずだよ」