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家掃除

「AM 3:00」とデジタル時計が表示されている。

前日、睡眠行動を行ったのは21時だったので、きっかり6時間。

いつでもいくらでも眠っても良くなったとは言え、体に染み付いてしまった「睡眠6時間」の制限は取れない。

上体を起こし、睡眠による負担を消し、睡眠前まで生み出していた当人の疲れを全て癒やしてくれる効果持つだろうパジャマと同一色の白いベッドから降りる。

そのまま、部屋に併設された洗面所で歯磨きや顔の洗浄といった起床後に行う行動をした後、洗面所から出てクローゼットを開く。

一部色味や質感の違うものはあれど、思考しなくて良い、同一種類の黒い服を手に取り身につける。

靴もスリッパから履き替えれば、普段と同じ自身となる。

足元に置いたパジャマ類を手にとって、脱衣所の洗濯かご内へ落とす。

かご内へ投入した回数を思い出し、次回は洗濯も行おうと決めて、脱衣所を出て、枕元に置いていた携帯をズボンのポケットにしまい、自室を出る。


自室を出てすぐ、廊下を歩いて2、3角を曲がった所。

両サイドに3つ。ドアが等間隔で並んでいる廊下の行き止まり。そこにあるドアを開ければ、そこにはバケツにモップといった掃除用具が古い新しい、開封未開封関係なく置かれている。

そこから、分解されたワイパーブレードとそれに必要なシート、ホコリ取りとその換え等を入れた、「自身が掃除を行うに必要な道具を入れた取っ手付きのかご」を手にとって運び出す。

それを持って、手近なドアを開けて入り、電気を付ける。

ここはゲストルームで、この家ではめったに使われたことはない。

せいぜい啓介さんのご両親が泊まられた際に使用したくらいだろうか。

それでもだいぶ昔の話で、本来であれば掃除の必要はない。

だが、いつここを使うのか不明であり、急に使用するとなった際に汚れている、またはホコリまみれであるのは良くないだろうと定期的に掃除を行っている。

3つある内の1つのカーテンを開けて窓も開け、残りはカーテンの、ホコリや汚れを必要があれば取りながら確認する。

それが終われば、ベッド周りを同じように確認する。

啓介さんが部屋に入って来て、ベッドシーツ各種を取り替え、メイクをし始めていたのを見た限り、啓介さんはできるのであろうが、使用したシーツを洗濯機のある場所へ持って行けということでちゃんと見ることが出来なかったせいで自身は行えない。

そのため、確認だけして、必要がなければ室内も同じように確認、処理を行って、それが終わり次第ワイパーブレードを組み立ててシートをはかせ、床を拭く。

それが終われば部屋の掃除自体は終わりだ。

後は、開けた窓とカーテンを閉めて、電気を消して部屋を出るだけ。

それをその他の部屋も行う。

最後の部屋はゲスト用の娯楽室で、テレビやビリヤード台、ダーツが置かれ、トイレや風呂場はもちろん、キッチンといったインフラ関連、冷蔵庫等の家電も用意されてはいるが、冷蔵庫の中身は空で家電の電源は抜かれている。

ここもインフラは常に通っているし、正常に使用できることも掃除のたびに確認している。

いつここを使用することになっても安心だが、その日は果たして来るんだろうか。

1階建てとはいえ、啓介さんと2人で住むには余りにも広い家。もはや屋敷だ。

それを考えると、この掃除も意味があるのかはわからない。

だが、「何もしなくて良い」のは睡眠時間同様に改善することが出来ず、過去の自分がどうにか考えたことを今も続けている。

部屋の掃除を終えたので娯楽室の電気を消して、部屋を出る。

携帯の電源をつければ「05:00」の表示。

そう言えば、庭の掃除を2週間前にやったっきりだったな。

そこまでひどくなっているとは思えないが、道具を揃えて見に行くだけ行って必要があれば処理しよう。


掃除用具に持っていたかごを戻して、側に置いていた軍手とビニール袋を1枚取って、庭へ向かう。

ゲストルームに一番近い、庭への出入り口を通って庭へ行けば、予想通り雑草等は生い茂って無かった。

見た程度であれば、やらなくても良いと頭では判断しているが、体が勝手に動いて多少しかない雑草や、枯れ葉の処理を始めた。

ゲストも来ないので、ただただ草とどこからか飛んできて成長した、たんぽぽが数本生えてるぐらいで、先程の時間から考えるに朝方とは言え蒸し暑い今の季節にすることではなかった。

だが、やり始めたなら最後まで行う必要がある。

気づけば、まだ暗さが勝っていた世界が明るくなっていた。

軍手を片手だけ外して携帯の電源をつければ「07:00」の表示。

確か、7時30分に始まる朝番組で、啓介さんが気に入っていたタレントがゲストで出るとSNSで発信していたはずだ。

起こしたほうが良いかと意外と雑草と枯れ葉で多くなったビニール袋を縛って閉じて、家外に設置しているゴミ入れに放り投げて、もう片方の軍手を外して家の中に戻る。

足早に自室に戻って、軍手、着ていた上の服を脱いで脱衣所の洗濯かごに放り投げる。

クローゼットから同一の上の服を取って着て、身だしなみを整えながら啓介さんの寝室へ進む。


3度ノックして反応がないのを見て、ドアを開ける。

開ければ、寝間着を着て行儀よく横根をしている啓介さんが寝ていた。

当人の睡眠サイクルに適しているかはわからないが、浅い眠りであれば声だけでも届くだろう。

ドアからベッドを挟んで反対側、窓側に移動したうえで、啓介さんに声をかける。


「啓介さん。起きてください。」

「ぐ…ぁ…?」

「後二十五分でお気に入りのタレントさんが登場する番組始まりますよ。」


要件を伝えた後、カーテンを開けて陽の光だけをいれる。

そのまま、自身の部屋と同じように設置されている洗面所と脱衣所、バスルームで倒れたりしている洗顔フォームやハンドソープを直すだけ直す。

洗面所から出て、直ぐ側のトイレからトイレットペーパーの紙をある程度だけ引っ張って切り、洗面所に戻って周りの水気だけを拭き取ってペーパーをトイレに流す。

そこまでして啓介さんの方に戻れば、啓介さんは体を起こしていた。


「おはようございます。」

「おあよう…何、誰?」

「全人類アイドルグループ計画の桃井狼火(ももい ろうか)さんです。」

「あーあの子ね…ま、起きたし見るわ…ぐぁ~…」

「番組のゲストですのでいつ出るかはわかりませんよ。」

「いいよ。見てれば出るでしょ。」


ドア側のベッド横から朝の挨拶をすれば、自身の声が届いていたのだろう、タレントについて尋ねてきた。

なので対象の方を伝えれば、頭の中で合致する方を見つけたようで、見る判断をしてベッドから降りてスリッパを履いた。

あくまでゲストであることを伝えたがそれでも見る、としてそのままバスルームへ向かうようだった。

シャワーを浴びて着替えて、とするなら時間はあるだろうと啓介さんの寝室を出て、「自身が掃除を行うに必要な道具を入れた取っ手付きのかご」を取りに1度掃除用具の部屋に行き、応接室件事務所へ向かった。


ここは、唯一人が来る可能性高く、なんなら使用している部屋。

だからこそ、ホコリも汚れもできるだけ少ない様にしていたい。

ドアを開ければ、電気はもちろん着いておらず、窓のカーテンも締め切っていた。

その中で、唯一光を放っているものがあった。ここで使用しているノートパソコン。

元々は啓介さんが寝室で使用していた物をこちらへ移動させただけであるが、基本的に啓介さんが触っていて、触れたことはない。

暗い中で放つ光は白く、何かを書き記していたか、検索していたかの2択だろうと判断できた。

あまりにも不用心だと思い、近づいてかごを机の上に置いて近づけば、画面に映し出されていた内容が確認出来た。

それは、だいぶ昔のネットニュースだった。

太く大きく表示されたタイトルは「誘拐 特殊な生まれが原因か」。

表示されている中で確認出来た内容は、当時病院で保護されていた赤子や幼稚園や小学校に通う子どもが相次いで誘拐されていたらしい。

記事内にはタイトル通り「生まれ」が要因していたとあったが、その「生まれ」の文字から下は表示されておらず、それが「生年月日」に当たるのか、「家柄」に当たるのか判断できなかった。

記事の内容が気になり、接続されていたマウスに手を起き、スクロールをしようとしたタイミングで、部屋の明かりが付いた。


「何してんの。」

「あ、いや。画面が、付いていたので。」

「そう。」


明かりがついた、ということはドア側の電気スイッチを押されたということ。

そう判断してドアの方を見れば、白いUシャツに黒いスラックス、革靴といった直近ではしっかり目の格好をした啓介さんが、ドア縁にもたれかかって腕を組んでこちらを見ていた。

触ったことのない、啓介さん個人の物に触れてしまった事に体が一瞬こわばり、啓介さんがした質問に対して自身の行動を話す際、言葉が詰まった。

それでも、話した内容を伝えれば、目を伏せると同時に頷きながら言葉を返し、顔を上げたタイミングでは目を開いて近づいてきた。

外で作業していたときには感じていなかった、体に汗が伝う感覚を背に感じた。

自身の前で止まった啓介さんが手を伸ばして、自身の肩に手を置く。


「飯作ってるから、食べるぞ。」

「は、い。」


肩に手を置いて2回叩かれ、掴んだと思ったら位置を交替させられた。

慣性でフラついたが、こらえて振り返って啓介さんの方を向く。


「あぁ後、パソコンは俺が触るから、自分の以外触んないで。」

「わかりました。ですが、画面開いたままは」

「じゃあ画面を見ずに閉じて。自分も、何調べてるか見られたら嫌でしょ?」

「自分は困るもの等ないですが…わかりました。」


啓介さんは、マウスとキーボードを操作しながら、今後のそのノートパソコンに対する注意点を指示した。

それに納得はしたが、画面を開きっぱなしは良くないと半ば伝えようとしたら、遮って追加の指示を理由付けをしながら出した。

その理由に自身は納得しなかったが、指示であれば従う必要があると判断して従う。

それ言ったと同時にノートパソコン操作が終わった啓介さんが、ノートパソコンを閉じた。


「っし、飯食うぞ~。」

「僕は掃除してから」

「いいいい。飯食ってからでもいいだろ。行くぞ。」

「わ、かりました。」


伸びをして食事をすることを啓介さんが言ったので掃除をすることを伝えようとしたが、それを遮ってそのまま背中を押されて応接室件事務所を一緒に出た。


「今日は飯食ったら銀行行くぞ。」

「珍しいですね。」

「親父がイカれた額振り込んでたから返す。」

「なるほど。」

「この家ですらデカすぎるのによぉ…ありがたいけど。」


キッチン兼食事室へ向かう廊下で、今日の予定を伝えられた。

その内容を聞いて、啓介さんの服装に納得をした。

啓介さんは困っているような顔をしていた。

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