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おじさんの暇つぶし~探偵事務所「時間」~  作者: 猫の真
2.5 きもをかくにんせよ
7/8

きもをかくにんせよ③

明確にコイツが翔でないとわかって1度瞬きをした瞬間。

目の前にのコイツの姿が変わった。女性になった。

前髪があるタイプのポニテール。グレーボーダーの長袖。黄色のエプロン。七分丈のジーパン。

顔は下を向いていてわからないが、小学生から海外の大学に飛ぶまで、俺を育てた母親の姿。

後ろは開かないドア。目の前には、翔から見知った女性に変わった何か。

携帯は握ったままにしろ耳から離して、目の前のヤツに触れないように、走って横切る。

わからないが、本能としてあのままヤツと対面するのはあまりよろしくないと判断したみたいだ。

走っている最中に床が抜けないか心配になるほどの音を鳴らして、ヤツから距離を取った後に止まって教室の引き戸を動かす。

開かないかと思った引き戸は以外にもすんなり開いた。

開いたので、教室に入って引き戸を閉め、半壊している机と比べてまだ壊れていない、教壇の中に隠れる。

大人が入るには少々無理があったが、教室内で隠れれる場所を一瞬で探すとなればここぐらいしかなかった。


「…い介さん。啓介さん?」

「しょ、翔。あ、そうか、電話切ってなかったか。」

「凄い木の軋む音聞こえたんですけど、大丈夫ですか?」

「わかんない。今、一階のどこかの教室にいる。」

「何で移動してるんですか?あのまま外に出れば。」

「何か出れなかった。ホラー映画みたいなことなってて出れなかった。」

「…啓介さんでも面白いこと言うんですね。」

「俺も思う。でも事実だからどうしようも無い。」


握っていた携帯からうっすら声を拾ったので耳に当てる。

そう言えば通話は切っていなかったと思い出して、翔と会話をする。

電話のマイクが走った時の音を拾ってくれたんだろう。現状の確認を尋ねてきた。

尋ねられたので、率直に今いる場所を伝える。

すれば、翔は当たり前に移動したことを疑問視した。

それができるならしていた。だが、おかしなことが起きていて出れなかった。

それを比喩混じりに伝えれば、間をおいて、翔が言葉を返した。

それには俺自身も同意する。でも、事実だ。目の前で起きたんだから。


「それ、僕が行ったところでどうにかなります?」

「わからん。」

「…とりあえず、探しに行きますね。」

「…」

「啓介さん?」


翔の質問通り、翔がこの場に来たことで何かが改善するかはわからない。

もしかしたら悪化するかも知れないし、改善するかも知れないし。

それを伝えて、翔がまた校舎内に入ると答えた時だった。

俺が返答しないことに、翔が何度か俺の名を呼ぶが応対しない。

出来ないが正しい。


『どこにいるの?けいすけ君。けいすけ君?』


母親の声がうっすら聞こえ、ずっと俺の名前を呼んでいる。

だんだん、近づいているはずだ。

こういう時、どうしたら良い?確か、大学でオカルト系が好きな奴はなんて言ってたっけ。

たしか、ゴーストだとか得体のしれないものに遭遇したら、まず隠れる。それはできてる

隠れて…いなくなるの待つ。待つ?!あぁ、そうだった。

いなくなってから、それから離れるように逃げる。

じゃあ、この声が離れるまでここに?ふざけるなよ。

でも、今動いてアレに見つかったらどうなる?

検討ができない。アレがただの人間であったり、交流のある相手であれば多少もしくはどうにかできた可能性だってある。

だが、アレは人間ではない可能性が高い。

人間を模倣しているのであれば対処ができるか?いや、もうここまで来たのであれば、去るのを待とう。

そう言えば、隠れるに際して、必要なら息を殺せとも言ってたな。

これはオカルトの奴だったか?それとも…どっちでも良い。

息を一旦全部吐いて、ゆっくり吸う。そして止める。

集中できるよう、目を閉じる。携帯も、雑に体の間に放り投げる。

声が近い。


『けいすけ君。今日は大好きなハンバーグを作ったのよ。早く帰って食べましょう?』

『お父さんもお仕事早く終わらせて帰って来るそうよ。』

『お母様やお父様からの伝言も預かっているの。教えてあげたいから出てきて頂戴?』


近づくたびに、はっきりと声がする。

聞いたことのある声。覚えのある内容。昔の事なのに意外と覚えているもんだ。

確かに。今日もハンバーグを作って食べた。

基本的に母親と2人だったが、たまに父親が早く帰ってきて一緒に夕飯を食べたっけ。

伝言か。予定していたことができるようになったか、もしくはダメになったか。

そんなん、どっちでも良い。今の俺には必要ない。

母さんや父さんとはたまーに会うし、向こうから連絡が来ることだってある。

もう母親は必要無い。必要ないから会わなくなった。

そういや、飛ぶ前に今までありがとうの意味を込めて送別会的なことをした記憶がある。本当にお世話になったなぁ。

だから、会うことも難しいし、わざわざこの廃校に居る必要性もわからない。

じゃあやっぱりオカルト系じゃねーかおい。

集中ついでに頭に浮かんだ物事を処理していたら、床の軋む音が一番近くでした。声はしない。

バレたか。


「啓介さん。」

「は、っあ。しょう。」

「携帯繋いでても反応しないなら意味無いじゃないですか。」


真ん前、小さな軋む音と同時に、翔の声がして目を開ける。

翔、という存在に体が反応してか、止めていた呼吸が勝手に再開される。

翔を見れば、白下地のアロハシャツに、よく着けるズボンと靴。ショルダーバッグを肩からかけているのを見れば、コレは本物だろう。小言も言うし。

もう、あの声は聞こえない。翔が普通に居る、ということは翔はアイツに会ってない。

もしくは、見えてなかった。とか。

ジェスチャーで目の前からどくように言えば、どいてくれたので教壇の下から出て立ち上がる。

その拍子に体の間に入れていた携帯が落ちたので、拾って通話終了ボタンを押す。


「…はー…久々のスリルだったわ。」

「何言ってるんですか?こちらは普通でしたよ。」

「だろうね。言ったじゃん。映画みたいだって。」

「そうですが…」

「もー終わり!疲れた!帰ろ。」


携帯をポケットにしまい、翔とはぐれてからのことを思い返す。

この歳で感じるにはなかなかだったが、良いスリルだった。

翔としては何でも無いただの廃校散策でしかなかっただろうが、こっちとしては大変な目に会ったのだ。

翔は俺の言い草に納得出来ない様子だったが、これ以上、この話を広げるつもりもない。広げても無駄だ。

だから、喋る声を上げて、終わりを告げる。そもそも疲れた。

だから帰ろうと伝えて、翔を横切って、開いている教室を出る。

引き戸は、形は引かれたままだったが、きっと壊れているだろう。

後ろから、床の軋む音が続く。それで、翔が後ろから着いてきていることがわかる。

玄関まで行けば、引かれたままの引き戸と、砕けたガラスの破片が床に散らばっていた。

再度、割れたガラスを踏んで外に出る。居たとしても数時間だろう。まだ夜は明けていない。

振り返れば、翔が引き戸手前で止まって、校内を振り返っていた。


「どうした?」

「……いえ。なんでもないです。」


声をかけれれば、ゆっくりとこちらに向き直り、何でも無いことを伝えて外に出た。

出た上で、意味があるかはわからないが開いた戸を翔は閉めた。


「帰ってシャワー浴びて寝よ。」

「明日報告するの忘れないでくださいね?」

「覚えててよ。」

「覚え…ますけど。」


明日取り壊される校舎を背に、家に帰ってのこと、明日のことを話しながら帰宅した。


翌日。翔に起こされて、またあの公園に来た。

昨日と変わらず非常に良い天気で、あの時と同じようにカジュアルな格好でベンチに座っていたがあまり変わらない。

それに、こちらは時間に合わせてきたが、向こうはまだ来ない。

そう思っていれば、30分経ってようやくあの夫婦が現れた。

気づいて、ベンチを挟んで夫婦と向かい合わせになるように立ち上がる。


『お待たせしてすみません。』

「ハハ…。それで、調査の結果なんですが」

『本当に調べてくれたんですね?!よく見ず知らずの人のお願いを聞けますね。』


ヘラヘラと笑いながら謝る旦那に苦笑いしながら結果を離そうとすれば、奥さんが調べてくれたことに驚いた様子をしてみせた。

その発言に、夏の暑さも相まって発するのは控えたほうが良い1音が出そうになったが、すんでのところでこらえる。

そうして、調べたこと。実際には携帯で確認出来たことを伝えた。


『なぁんだそうなんですね。』

『あの子達には残念ですけど、子ども達に何もなさそうなら良かったわ。』

「それでですね、自分」

『じゃあ、ありがとうございます。助かりました。』

「は?」


その内容にに2人は安心した顔をした。

子どもらには残念な結果だが、親としては怪我するようなことができなくなってラッキーなんだろう。

そんなことより、依頼の代金をふんだくろうと切り出そうとした途端、旦那側が話を終わらす言葉を告げた。

それに、先程こらえた1音が漏れ出た。


『この後、近藤グループの立食会があって、急いでるの。だから失礼するわ。』

『それでは。』


続けて、奥さん側が聞いてもない予定を喋って、旦那を置いてきた道を戻って行った。

旦那も会釈をして、奥さんの後に続いた。

近藤グループ。おもちゃ会社で最近伸びてる会社だよな。

会社の立食会に呼ばれるくらいなんだから、同じ会社もしくは子会社でいい位置にいる人らなんだろうか。

それより、逃げられた。押し切られて、逃げられた。


「…………っだあああ!!んだよアイツら!」

「まぁ…最初の態度から考えると、という印象ですね。」


夫婦が見えなくなって、周りのことは気にせずに大声で文句を上げる。

翔は落ち着いたまま、苦言を呈するような言葉を並べていた。

確かにそう。ヤバい雰囲気は感じていたが、とんでもない夫婦だ。


「あー…どうしよう。どうにかしようかな。」

「…とんでもないこと考えてないですか?」

「考えてる。」


暑さと夫婦にやられて、とんでもないことが頭によぎる。

翔にそれが見透かされて、素直に答える。

余計なこと言わなきゃよかったって言わせてやろうか。

いや、でも、あの夫婦にも子どもがいるんだよな。ワンちゃん部下もいる。

一軒家持ちだったら?ローンを返してたとかあれば?二世帯持ちだったら?

するのは、あまり可哀想か。


「……帰ろ。暑いからかき氷食べて帰ろ。」

「わかりました。」


考えて、やめた。というか面倒だし。

それより、この暑さをどうにかしてしまおう。

そのために行く場所を決めた。

あの喫茶店のかき氷なら量もあるし、寒くなるくらいだろう。

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