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6、出会い

ユリとマリはタケシ(9歳)との出会う。


今回のストーリー要素

サバイバル ☆☆☆

感情度   ★★★(3人の出会い)

危険度   ★★☆

ほっこり度 ★★★(タケシの優しさ)

 ある日、一日を終えてねぐらに帰って来る途中、明らかにまわりの様子が変わっていることに気付いた。そしてその不安は的中する。


 恐る恐る祠の戸を開けてみると隅に寄せていた石像やお札の類が元の位置に戻されていて、丸めて畳んだ毛布もなくなっていた。

 地元の大人たちがこの神社の清掃に入ったのだと気付いた。


 たしかにここまで登って来るまでに周りの草はきれいに刈られていたし、参道のお地蔵さんたちの頭の上の苔もきれいに取り除かれており、その横には丁寧にお供物まで供えられていた。

 この場所は地元民からまったく忘れられた場所ではなかった。ここには時々管理の者が入ると言う事実を知る。


 それを知った時の落胆は大きかった。ユリは自分たちがこの場所に辿り着いたこともこれまで安全に住み続けらたという事も、自分たちが絶対的に天に守られている存在であるという事を信じて一度も疑わなかった。それだけここでの生活を過信していたのだ。


 しばらく祠の前で思いを巡らせていると後ろから不意に声を掛けられた。

 それは後ろというよりはずっと頭上に感じた。



「毛布は松の木の後ろに隠しておいたよ。」



 その声はいつも語り掛けてくる神様の声よりもずっと幼かった。

 マリは黙って歩き出して大きな楓の木の下に立ち、その木の上を指さした。



「その木の上に誰かいるの?もしかしてあなたが祠の物を元に戻して、毛布を預かってくれたの?どうもありがとう。」



 しばらく無言だったがそのうち上から靴を投げてきた。そして裸足でするすると木から降りてきたのはまだ小さな子供だった。



「この木の上で何してたの?こんな夜遅くに家に帰らなくて大丈夫なの?」



「人の家の心配するなんて随分と余裕なんだな。僕は君たちと同じで家なき子だよ。この2日間はこの木の上で寝泊まりしてたんだ。だから君たちの事を誰にも言わないし、僕の事も人に言って欲しくないんだ。」



 びっくりだった。昨日の夜、この場所に人がいたという事、そしてそれが私たちと同じ子供だったという事に全く気付かずに生活していたのだ。

 暗くて顔はよく見えなかったが身長はユリよりずっと低い。だけど話し方は同い年の男の子達よりもずっと賢そうで随分と大人びていた。


 その男の子の後について参道を降りていき、防波堤の端に三人で並んで座った。

 男の子はユリとマリにヤクルトの容器をひとつづつ手渡し、マリの分にはヤクルトの蓋に爪で小さな穴をあけて

「この穴から少しずつ飲むのが美味しいんだよ。」と言ってマリに手渡してやった。



「いつまで家出をするつもりなのか知らないけどあの場所は安全そうに見えてもいずれ人に知られてしまうよ。もっといい場所を探す必要があると思う。それにどれだけ賢く盗みを働いていたとしてもそれもいずれ見つかると思うんだ。もしこの生活に疲れているのなら施設に入る事を勧めるよ。」



「君は施設に入る事を考えた?私たちはこの生活が好きで大人たちに妨害されるまではずっと続けていくつもりだよ。だけど君の言っていることはよくわかってるよ。

 確かにこのまま人目を忍んで暮らし続けることは難しいことだろうし、盗みだけで生活するのもいつかは破綻するだろうしね。そうならないために今いろいろ考えている所なんだ。君はどうやって生活をしているの?」



 男の子の名前はタケシと言った。歳はユリより一つ上の9歳で小学4年生だった。

 タケシの話は衝撃的だった。彼はぼろぼろの小舟を一艘盗み出して隠しており、ここから10キロほど離れた小さな無人島に一人で住んでいるという。そして時々必要な物を盗みに本土を訪れるそうだ。

 

 それは童話で読んだ鬼の話を思い出させた。島では自給自足の生活で魚や野草に海藻、時には野鳥や小動物などを取って食料にしているという。それは自分たちではまったく思いつかなかった賢い考えだと思った。



「その島はどれくらいの大きさなの?私たちもそんな生活がしたい。もし君が嫌だったら私たちは私たちの島を見つけて自分たちで住むからまずは君の島を見てみたい。」

 タケシはそこは自分の縄張りってわけじゃないから来たらいいよと言ってくれた。もしその生活が好きじゃなかったらまたこの場所に戻ってくればいいのだからとも言ってくれた。


 小説や映画の無人島生活はその島から抜け出すことができなくて絶望するという物ばかりだったがときどき舟で島から出ることができるのならそれは理想の生活に思えた。


 ただこの今、知り合ったばかりの男の子が実際どういう子なのかという事は今、話をした限りではわからない。

 だけどマリをよく観察した。マリはまったく怯えていないし、彼から貰ったヤクルトを嬉しそうにそして大事そうにちょこっとずつ飲んでいた。

 

 そのマリを見てこの男の子とならうまくやっていけそうだと思った。



〈〈 次回、タケシとユリ、マリの3人の無人島サバイバル生活が始まる。3人はどのようにして食料を手に入れるのか。ご期待ください。〉〉


作品に訪問して頂き、ありがとうございます。

※基本的に毎日更新していますので、この先のストーリーが気になるという方はブックマークをお願いします。コメントや評価を頂けると励みになります。


今日一日お疲れさまでした。明日も一緒に頑張りましょう。

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