28、風力発電
島の周辺に大規模な開発が始まる。
今回のストーリー要素
サバイバル ☆☆☆
感情度 ★★★(海洋開発計画)
危険度 ☆☆☆
ほっこり度 ☆☆☆
千佳からとんでもない情報を入手した。
それは今、島の付近の海上で風力発電のタービンを建設し、電力を本土に送るという大掛かりなプロジェクト案が議会で通りかけているという事だった。
そもそもは国会で海洋再生可能エネルギー開発へ向けて洋上風力発電の商業運転を手助けする法を改正していたのが今回、公募で事業者を募った時に大手企業が名乗りを上げた事でエネルギー開発が本格化され全国に注目されるようになった。
そして今回の大型プロジェクトは地元の住民から土地を買い上げて立ち退きさせるわけではないので反対意見は少なく、このまま案が通る事は確定だと思われていた。漁業組合からは懸念する声も上がってきているがその声は強くないと言う。
最初は6台のタービンが建設予定とされているのだが、島からは離れているものの建設が始まればこの島が一時的に資材置き場として使われることも予想されたし、島と本土との航路は今までとは比べ物にならないくらい人の行き来が増えるはずだった。
建設が開始されれば警備と調査のためにたくさんのドローンも飛ぶようになるらしい。
そうなるとそのすべてから身を隠すことはもはや不可能だった。このままこの島に住み続けていれば、いずれ近いうちに自分たちの生活を誰かに暴かれるはずだ。
もし島での2人の生活が世間に知られれば必ず全国ニュースになるほどの反響があり、この先の将来タケシとマリの人生を大きく狂わせることになる。
タケシは14歳になりマリは10歳になっていた。
千佳はこの機会にもう一つタケシに話をした。それはマリの事だった。
マリはちいさい頃から人との接触がなく今、マリが口を利くことができるのは唯一、タケシだけだった。
この状況が続けばこれからもっとマリは人と接することが難しくなるだろうし、学校に入らなければならなくなった時、いきなり中学や高校からの学校生活はあまりにも彼女に負担がかかる。
社会に出るにも幼いうちにある程度、人と接することに慣れておかなければマリはこの先の人生もずっと世間から隠れて過ごす事しかできなくなってしまう。本人は大変だろうが今ならば少しずつ人に慣れる事も可能ではないかと話した。
マリを一人施設に入れる事はタケシにはできない。どの道を選ぶにせよタケシはマリから離れるつもりはなかった。
この島での生活は6年目だった。その間はずっとマリと一緒にいて、もうタケシとマリは完全に兄妹になっていた。
タケシはこのことはマリには相談しなかった。マリの意見を聞くとマリにとって易しい選択しかできなくなり、マリの将来に必要とされる冷静な判断ができなくなると思ったからだ。
それにマリはタケシが決めた大きな決断に絶対従ってくれると言う自信もあった。マリはタケシを兄として全信頼を置いていた。
そしてタケシは決断をした。マリと一緒に島を出る。そして現代社会の一員となる。
タケシの希望はマリが社会人として立派に成長するまで見守り、そして自分も自分の家族を作る事だった。
そのためにはもう盗みも情報屋の仕事もやめて過去をすべて封印し、汚れのないきれいな経歴が必要だった。
タケシは初めてマリにこの島を出る決断をしたことを告げた。
マリはタケシの顔をじっと見て頷いた。
マリにはタケシを完全に信じてついていく覚悟があった。
タケシの決めた大きな決断に不安を持たせないように努力した。
タケシがそういうのならばその方法が一番いいのだろうと信じた。
そして最後の夏をふたりは島で思う存分噛みしめて秋の初めに島を後にした。
〈〈 次回、ついにタケシとマリは島を出て生活を始める。ご期待ください。〉〉
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