23、髪を切る
タケシとマリの新しい島での生活がスタート。
今回のストーリー要素
サバイバル ☆☆☆
感情度 ★★★(近づくタケシとマリの距離)
危険度 ☆☆☆
ほっこり度 ★★★(お互いを思い合う)
3か月ほど掛けてタケシはようやく体力を回復させた。
前のようによくしゃべるようになったし、大声で笑えるようにもなった。
ただ筋力や瞬発力は以前よりも劣ってしまった事を気にしており、時間を見つけては自分で訓練をして以前の体力まで戻そうと努力している。
だけど前のように無理をしている様子はなく、安心して見ていられた。
そしてユリがいた時よりもマリはタケシとの距離が近づいたようにもを感じられた。
もしかしたらタケシはユリの前でマリに対してわざと距離を置いていたのかもしれない。
タケシは一人っ子で兄弟がいない分、ユリとマリの姉妹の絆に少し遠慮していたのだと思う。
そのユリがいなくなった事でタケシはマリを遠慮なく自分の妹として接することが出来るようになった。またタケシの危機をマリが救ったことでタケシはマリに今まで以上に心を開き、信頼した。
マリが一番うれしかったのはタケシが毎朝、マリの髪を結んでくれるようになった事だ。
ユリがいた時はマリの髪を結んだり、マリの服の汚れを払ったりしてくれたのはユリの役目で、タケシはそれを側で楽しそうに見ていただけだった。
だけどユリがいなくなり、タケシはマリを自分の妹にすることが出来た今ではマリの細々としたお世話をすることを楽しんでいるようにも見える。
タケシは毎朝、マリの長い髪を丁寧に櫛でとかし、マリの毎日のように変わる注文に忠実に従う。
また手持ち無沙汰な時にもマリの髪を使っていろいろな髪形を試して遊んだ。それはマリにとっても楽しい遊びになった。
マリに手鏡を持たせて、その鏡を覗き込むようにマリに話しかけながら髪を結っていくタケシの姿を見るのがマリは好きだった。
またマリはユリのように前髪も作ってみたかった。それをタケシにお願いするとタケシは緊張した面持ちでハサミを握った。
おでこの随分上の方から前髪を作ったマリはユリにそっくりな顔になった。それをタケシはどう思っているのだろう。
マリはお返しにタケシの髪も切ってあげる。それはいつもはユリの仕事だった。
だけど今はマリがユリの代わりにタケシの髪を切る事も小舟の方向指示を出すのもマリの大事な役目だ。それはマリにとって大きな出世だった。
タケシはマリが初めて切った髪を鏡で見ながらひとりで大笑いしている。確かにマリが見ても耳の辺りが少し変だ。だけど大笑いするほどではないと思う。
そのタケシは今、自分を鏡に映しながら体をよじって涙を流しながら笑っている。
〈〈 次回はタケシの情報屋の仕事とタケシの特殊能力の回です。タケシ自身はどのような感情で仕事に挑んでいるのか。ご期待ください。〉〉
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