20、荒れた島
ユリとの別れ、それからの2人の生活。
今回のストーリー要素
サバイバル ★☆☆
感情度 ★★★(ユリとの別れ)
危険度 ☆☆☆
ほっこり度 ★☆☆
ユリとの別れはいずれくるとわかっていた事とはいえ寂しかった。
しかし意外にも今、側にはマリがいる。
それは自分が予想していた状況より遥かに喜ばしい事だった。
そのマリはユリとの別れの直後のはずなのにしっかりと前を向いて自分の帰る場所を心配している。
そんなマリの前でいつまでも落ち込んでいるべきではないと思った。
タケシはユリがどれだけマリの事を大切に扱ってきたかを常に隣で見てきた。
そのマリをユリから託されたのだ。ユリのマリに対する愛情と責任をそのまま受け継いで、自分が背負って守り抜くという強い決意と覚悟が必要なのだ。
それくらい強い気持ちを持って自分のやるべき事に集中しなければ、一瞬の判断ミスがマリをも不幸にしてしまう。
これから先、死ぬまでずっとマリの兄として責任を持ってマリを幸せにすることを誓った。
今、マリの一生はタケシの人生最大の責任となった。
島が近づくと遠目からでも違いが分かった。
島は台風と豪雨で様変わりしていた。崖が崩れ落ち、木々が倒れ重なっている。
ねぐらにしていた小屋も吹き飛ばされ、保存食を隠している穴倉も水浸しだった。
今回は騒動の中で街で仕入れる物も少なく、いきなり絶望的だった。
ある程度の被害は予測していたが思ったよりもずっと深刻で完全に振り出しに戻った。
その中で一番悲しかったのがカラスのカンちゃんが倒れた小屋の中で死んでいた事だ。
それを見付けた途端、マリは火が付くように泣き出した。
それはカンちゃんが死んでしまったショックと今、先ほどのユリとの別れが同時にマリの感情を攻撃し、マリの心を壊した。
そしてその涙を見てタケシも大きな声を出して泣いた。
二人は抱き合って声が涸れるまで泣いた。
泣き疲れて眠ってしまってもお互いを離さず二人は抱き合いながら寝た。
泣きながらも今一人ではないことが嬉しかった。誰かと一緒に泣けれる事、抱き合いながらも温もりを感じられる事が悲しくて嬉しくて安心できた。
思いっきり泣いた後のタケシは強かった。今度はその悲しさをバネにしてブルトーザーのように働きだした。
まず倒壊した小屋を立て直し、寝床を整えた。
そして穴倉に溜まった泥水を掻き出し、保存食の中からまだ食べられる物と駄目になってしまった物を選り分け、水場が涸れていないか確かめ、島全体を巡ってどこがどう変わったかをすべて確認して歩いた。
それから火を焚いて周りの倒木を集めて燃やした。その火は大きくなれば大きくなるほどタケシに力を与えた。
マリが用意した夕食を急いで掻き込んでまたすぐに働きだした。
その姿は怒っているようにも見えるし、自分を元気づけるために自身を奮い立たせているようにも見えた。
マリが寝た後もタケシは休まずに動き続けた。そうしていないと悲しさがまた襲ってくると思っているようだ。
マリにはタケシの気持ちがよく分かった。そしてユリとの別れは悲しかったけどやっぱりタケシを選んだことは間違いじゃなかったと思った。この場面ではユリよりもタケシの方が弱いと知っていたからだ。
ユリの代わりにタケシの側でもう一度この島の生活を立て直すことがマリの目標になった。
〈〈 次回、タケシとマリの生活が始まる。その中でタケシとマリはお互いをどうやって助け合うことが出来るのか。ご期待ください。〉〉
作品に訪問して頂き、ありがとうございます。
※基本的に毎日更新していますので、この先のストーリーが気になるという方はブックマークをお願いします。コメントや評価を頂けると励みになります。
今日一日お疲れさまでした。明日も一緒に頑張りましょう。