16、情報屋
情報屋千佳との出会い。情報屋とは何か。
今回のストーリー要素
サバイバル ★★★(情報屋の技術)
感情度 ★☆☆
危険度 ★★★(仕事)
ほっこり度 ☆☆☆
その女性は千佳と言った。そしてそれは本名ではないと言った。
千佳は情報を盗んで売る情報屋を生業として生きていた。見た目は人を安心させる垂れ目の丸顔だったが、声色としゃべり方がころころと変る。その声の感じだけで見た目の年齢や印象がまったく違って見えた。
彼女は主婦や会社員、ホステスなどになりすまし、企業や役所、個人から情報を集める潜入型の情報屋でライバル企業や法律事務所や探偵、政治家やヤクザに盗んだ情報を高値で売る。
時には刑事が情報を買いたいという場合だってあった。
千佳はタケシを自分の息子に見立てて企業に新入社員として潜り込んで情報を盗みたいと考えていた。
千佳たちの仲間の間ではその半グレ達の話は有名で、また別情報であの辺りの海岸に古い小舟の出入りがあると言う情報を入手し、それをつなぎ合わせてタケシにたどり着いた。
千佳はユリとマリの事ももちろん知っていたが、危ない仕事になるので仕事は男のタケシだけにお願いしたいと言った。千佳のそういう所が信用できた。
それからは千佳の息子の振りをしていろいろな場所に連れて行かれた。
女性が子供を連れていると男性は警戒心が緩み、普段よりずっと簡単に情報を入手することが出来る事を知る。
情報屋の仕事は男性よりも圧倒的に女性や子供の方が有利だったし、仕事を転々と変えることも男性より女性の方が自然に見える。
そして大人より子供の方が顔を認識されにくく、人の記憶に残りにくい。
また子供は考え方が柔軟で知識や技術を楽しみながら面白いほど吸収する。好奇心も多く、恐怖に対してもポジティブで気持ちの切り替えが早い。もちろん体は大人よりずっと柔軟で敏捷だった。
ただ一つの子供の欠点は社会のしくみを完全に理解できていない事だ。情報を盗むとなると必要な情報とそうでない情報の区別ができる能力も必要なので千佳はタケシに新聞や本をできるだけ読むように言った。
しかしタケシは本を読むことが苦手だった。それを千佳に言うと千佳は本の中にはたくさんの情報があり、その情報を集めてそれがいつかお金に変わる事をイメージしてみてと言った。
そういうふうに考え方を変えてみるとただ難しく並んでいるだけに見えた文字からも仕事の情報の糸口が見えるようになり、そうなると本の中から情報を盗む感覚でおもしろいように知識を吸収できるようになった。
また情報を盗む仕事だけではなく、時には結婚式などの冠婚葬祭のサクラの仕事などもあり、月に2、3度、大小さまざまな仕事をくれた。
一番嬉しかったのは架空名義を作ってくれたことだ。大人の架空名義がある事で携帯電話の契約もできたし銀行に口座も作れた。
そしてその口座を使ってネットショッピングやクレジットカードの発行もできるようになり、子供でありながらも大人と同じように現金を動かしたり、ネットショッピングで未成年には売れないものなどを買うことができるようになった。
仕事に慣れてくると千佳はタケシが一人で行動する仕事を増やした。
ひとり仕事で一番多かったのは学校に潜り込んで入試問題や定期テスト問題を盗む仕事だった。
特に有名校の入試問題や入試情報を盗むと売り手は一か所だけでなく多方面になるので、時には一般企業などの極秘情報よりも大きなお金が入る事がある。
また学校は警戒心が企業よりも緩く、その分セキュリティーも緩い。
生徒の振りをして誰もいない職員室や事務室に潜り込み、コンピューターや金庫から情報や答案用紙を盗む事はタケシにとって手ごわい仕事ではなかった。
タケシ一人に単独行動をさせる事で千佳がどれほどタケシを信用しているかがわかった。
情報屋の仕事は盗みの技術も重要だったが、互いの信頼関係がなければ成り立たない仕事だ。
自身の身を守るために仲間の情報を外部に漏らしたり、金に目がくらんで他所に情報を売らないと言う堅い信用がないと、タケシのように未熟な若者を一人で単独行動させることは厳しい。
タケシと千佳は年齢や立場は違えどなんとなく本質で気が合い、お互いに充分信用し合う事で仕事の幅をさらに広げて大きい物を狙いにいった。
〈〈 次回、マリが崖から落ちて大けがをしてしまう。島で子供たちだけでその危機をどう乗り越えるのか。ご期待ください。〉〉
作品に訪問して頂き、ありがとうございます。
※基本的に毎日更新していますので、この先のストーリーが気になるという方はブックマークをお願いします。コメントや評価を頂けると励みになります。
今日一日お疲れさまでした。明日も一緒に頑張りましょう。