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12、鬼ヶ島

島へ侵入してきた10人の大人たち。その10人を3人はどうやって追い出すことが出来るのか。


今回のストーリー要素

サバイバル ★★★(侵略者撃退方法)

感情度   ★☆☆

危険度   ★★★(悪い大人10人に立ち向かう)

ほっこり度 ★☆☆

 男たちは携帯電話の明かりを頼りに発電機の所まで行き、故障を確かめようとしたが発電機はまったく動かなくなっていた。


 その時、山の上の方で法螺貝の音が長く切なく響き渡った。

 

 その音の方に目を向けると山の斜面の辺りをいくつもの青い光がさわさわと動いているのが見える。

 その光の塊は2手に分かれており、細く長い法螺貝(ほらがい)の響きが鳴り止むと戦の刀を交える音や馬の足音、人々の叫声や苦しむ声が山の方から聞こえ出した。


 その時にはもう男も女と同じくらい叫び声をあげて逃げ惑った。

 そしてその逃げ惑う大人たちの頭上からは次々と石をぶつけられ続け、もうどちらにどう逃げればいいのかわからなくなり、誰もがぶつかり合って混乱した。


 その混乱の最中に今度は崖の上に松明(たいまつ)の明かりと家紋入りの旗印がいくつも現れ始めた。

 そして騎馬隊の馬の嘶く声や遥か昔の人々の叫び声、采配(さいはい)を振るう大将の怒号(どごう)までもが確かに崖の上から聞こえてくる。


 そして次の瞬間、ドドーンという太鼓の音と掛け声と共に馬の嘶きと火縄銃の銃撃音、火薬の臭いと共に大軍が崖を滑り降りて浜辺を襲った。


 大人たちはその奇襲から逃げるように浜の東側に走って逃げようとするが何かが足に絡まったり、また向う脛を鞭のような物で強く打たれ、一向に前に進まずどこにも逃げきれない。


 焦りと恐怖でだれもが這いつくばりながら逃げた先で、今度は(さぎ)の大群が大騒ぎをして頭や体にぶつかってきた。


 大人たちは喉が涸れるまで叫び、息を切らして自分たちの乗ってきたボートまでたどり着き、急いでボートのエンジンをかけようとするがボートのエンジンはうんともすんとも言わない。

 ボートが動かないことにはこの島から一歩も逃げることが出来なかった。

 

 男たちの携帯電話もこの島ではまったく使い物にならない。

 この島の唯一の連絡手段はボートの中にある無線機だけだがそれだけは辛うじて使えるようで、男たちはその無線機を使って本土の海難救助隊に緊急救助要請信号を発信する。


 大人たちは誰もが疲れ果てていた。疲れていても休むことは許されない。なぜなら安心した頃に今度は火の矢が海に向かって放たれるからだ。鳴鏑(なりかぶら)と言って放った時に高い音を出す矢は男たちの恐怖を今まで以上に煽り、一時も油断させなかった。


 ボートの上で身動きできない男たちは一晩中その音と火の矢の襲撃に黙って耐え、おとなしく救助隊が来るのを待っている以外方法はなかった。

 そして辺りが少しずつ明るくなる頃にやっと海難救助隊が現れ、さらに多くの大人たちが島に降り立った。


 男たちは救助隊を連れて浜辺へ戻ってみると浜辺は昨日の夜の宴会の様子そのままで特別、何も変わったものは見つからなかった。ただそこには大麻の匂いと吸い殻、様々な違法薬物の跡や酒の瓶などが散乱している。

 ゴミが散乱して汚された浜辺と宴会の跡だけがむなしく残っており、海難救助隊はすぐさまその様子を写真に撮り、無線で本土の警察にその状況を報告した。


 男たちは昨日の夜ここで何が起こったのかまったく分からなくなった。確かに崖から大勢が攻め込んできたし、頭上からは石をぶつけられて実際に頭や体を怪我しているのにその痕跡は全く残っていない。 

 それはとても不気味だった。


 種明かしはこうだ。まず浜辺の両端に大音量を流せるスピーカーを置き、それを遠隔で操作して戦の音響を作りあげた。

 そして山の上の青い光は木の上からクリスマスツリーのライトを釣り竿で持ち上げ、あたかも山の上で光っているように見せる。


 そしてパチンコで大人たちの頭にぶつけたのは石ではなくて氷で、それは朝には溶けて形跡を消した。


 そして向う脛の位置に細く長い枝をしならせた物を通り道に設置して置き、男たちが通ったタイミングを見計らって解き放った。

 細い木の枝が3、4人の向う脛を強く打ちのめし、その強い衝撃に大人たちをまとめてひっくり返した。


 行く先々で黒くて細いロープで足を引っかけられ、這いつくばるように逃げ惑う所で鷺の寝床の方に導き、鷺をおどして鷺たちを怒らせた。


 3人は奇襲作戦の全ての痕跡(こんせき)をきれいに消し去り、そのすべてが男たちの妄想で、あたかもこの島が呪われているかのように見せようとした。それによってこれから先も住民や男たちにこの島に近付かせないようにしたかった。


 その男たちの不可解な証言は救助隊員たちをも怖がらせた。

 誰もがこの不気味な島から早々と脱出したくて調査もろくにせず、現場の写真を簡単に撮ってその場を早々に引き上げると男たちのボートをロープで牽引し、足早に島を脱出した。


 この一件で男たちが島で違法な薬物、大麻を使用していたことが地元の警察に知られることになり、悪い大人たちがこの場所でこれ以上危ない仕事を続けることが出来ないようにさせたばかりではなく、地元住民は以前に増してこの島を怖がった。

 

 たった3人の子供が知恵と度胸で多人数の大人達を撃退することに成功したのだ。

 それは以後、鬼ヶ島作戦と名付けられ、3人にとって痛快で忘れられない輝かしい青春の思い出となった。



〈〈 次回は問題作。子供たちが島でどんな悪さをしているのか。ご期待ください。〉〉

作品に訪問して頂き、ありがとうございます。

※基本的に毎日更新していますので、この先のストーリーが気になるという方はブックマークをお願いします。コメントや評価を頂けると励みになります。


今日一日お疲れさまでした。明日も一緒に頑張りましょう。

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