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11、悪い奴ら

子供たちの島に初めての侵入者が来た。


今回のストーリー要素

サバイバル ★☆☆

感情度   ★★★(追いやられた3人の感情)

危険度   ★★★(大人たちの目的)

ほっこり度 ☆☆☆

 天気が良くて空が高く感じるほどに晴れ渡り、風が気持ちいい。

 ここまでの快晴はここしばらくなかったから3人は朝から洗濯をした。洗濯も楽しい仕事の一つだ。


 綺麗な水の溜まる浅瀬に服や毛布などを全部投げ込んで上から足で踏んだり、岩にぶつけて汚れを取るのだがそれは洗濯という名の水遊びだった。

 ユリとマリはシーツを広げて端を持って広げるとそこにタケシがダイブしてきた。そのタケシをユリとマリはシーツで包み込み、その上に乗っかって遊んだ。


 水しぶきを上げて洗う工程も楽しいし、それを絞るところも楽しい。毛布やシーツのように大きな物は端と端を持ちねじりながら綱引きをするときれいに脱水することが出来る。 


 一人では大変な仕事だが3人いれば遊んでいる間に終わってしまう。

 それを木の枝に引っかけて干している時、海の向こうに小さな船の影が見えた。


 それを最初に見付けたのはユリだった。すぐに大声でタケシとマリに知らせる。

 それは明らかにボートだった。タケシは急いで浜辺にある小舟を洞に隠し、生活の痕跡をすべて隠すようにマリとユリに指示をした。焚火の跡、一つたりとも残すことは危険だ。


 そのボートの軌跡を追うと明らかにこの島に向かっている。そして少しずつエンジン音が近づいて来た。

 この島は本土の住民には恐れられていて誰も近づきたがらないが、無謀な若者がたまにこの島に不意に近づくことがある。

 上陸する気があるのかどうかはこの位置からはうかがえなかったが天気が良く、海が静かなこんな時ならばこの島に遊びに来た可能性も十分にある。


 そしてその読みは正しかった。この島に移り住んで初めて島に訪れた男達だった。

 男は4人いて、30代から50代ほどのあまり優しそうには見えない大人達だった。

 人相もそうだし、言葉遣いがとにかく悪い。


 男たちは4時間ほどこの島に滞在し、まるで自分たちの島のように自由自在に歩き回った。

 また彼らはいろいろ計測する機器を持っており、立ち止まっては計測して島全体をくまなく見て回る。

 タケシはその男達から付かづ離れずの距離を取り、彼らがここに何をしに来たのかを探った。 

 タケシには彼らは怖いもの知らずの男たちに見えた。


 男たちは誰もが近づきたがらないこの土地を利用して隠れて大麻を栽培しようとしているようだった。この地域は気候が温暖で栽培に適している上、水はけがいい場所も多い。

 大麻を育てるには適度に水やりする必要があり、問題はその水をどうやって手に入れるかだったが最近では太陽光エネルギーを使った海水を淡水に変える優秀で手軽な装置があるらしく、うまくいけばかなり多くの収穫が見込めると男達が話しているのが聞こえた。 


 重機などは島なので持ち込めないので日雇いの労働者を一定期間、交代で連れてきて根気よく開墾する計画らしい。

 会話の中から男たちが2週間後にもう一度この島を訪れる事が分かった。今度はもう少し人数を増やして具体的に検討するために2、3日この土地に滞在してさらに計画を進めると話すのが聞こえた。



 男たちが島を後にした後、3人は絶望的な気持ちになった。

 3人がこの土地に移り住んで1年近くが経とうとしていたが、その1年は今までの人生で最も楽しくて恵まれた時間だと感じていたし、この島にただならぬ愛着があった。

 この島を出て他の島に移り住むことは不可能ではないがこれほどの条件の良い島を見つける事は容易なことではない。


 タケシはその男たちが許せなかった。その男たちの目的が大麻を隠れて栽培するという安易で想像力にかけた悪事の為、この島を汚されて自分たちの生活が脅かされる事にも腹が立ったし、その男たちが父親の家に金を取り立てに来た男達と重なり、そういう悪い男たちに自分の領域を次々と侵略され続ける事にも耐えられなかった。


 そしてこの島を追い出されることはタケシにとって男としての負けを意味していた。

 どうしてもこの土地を守り抜き、ユリとマリとの安定した生活を守り抜きたかった。


 それからのタケシは逃げる事ではなく、戦って男たちが島に寄り付かなくする方法を考えた。

 自分より大きくて屈強な男たちがこの島に居座ろうとするのをどうやったら止めさせる事が出来るかを真剣に考えた。


 この土地の事は自分たちの方がよく知っている。また面と向かって戦うのなら力では負けるだろうが頭を使い、知恵を絞る事でこの男たちに対抗することはできないだろうか。それには暗闇の中での奇襲作戦はどうだろうか。


 そう考えると大人相手に戦う事はそれほど無謀な事にも思えなくなっていた。

 そして次の日の朝、ユリとマリに作戦を説明する。それはユリとマリも興奮し、ワクワクするような作戦だった。



 2週間後、その男たちは今度は大人10人で島を訪れ、そのうちの2人は若い女だった。今回は泊まる為の宿泊設備や食料、酒、娯楽設備も大量に運び込み、単なる下見だけではなくレジャー目的も兼ているようだ。


 昼間から音楽をガンガン鳴らして浜辺にビーチパラソルやビーチチェアを並べ、酒を飲み、大麻や薬物を使用し、島を歩き回った。

 女たちはきわどい水着で浜辺を遊んでいたし、男たちも砂浜で女と遊んだり泳いだりした。


 大人たちは島を汚してまわった。ゴミを撒き散らかし、林のいたる所に排泄物を処理せずに置きっぱなしにした。海に向かって酒の瓶を投げたし、大切に使っている神聖な水場も汚された。


 昼間の明るいうちはユリもマリもおとなしく隠れていた。ただタケシだけは最後まで抜かりなく準備をして夜に備えた。


 夜になり、大人たちは浜辺に集まってバーベキューを始める。発電機で電気を起こして周りを照明を使ってガンガン照らし、大音量で音楽を響かせて騒いだ。

 夜も更け、誰もが泥酔していた。


 一瞬、空をつんざくような大きな爆発音がしたかと思った次の瞬間、発電機のエンジンがゆっくりと止まり、そして辺りが真っ暗になって音楽も消えた。


 誰もがその場に呆然と立ち尽くした。その場で聞こえるのは女の怖がる叫び声だけだった。

 


〈〈 次回、島の大人たちと3人の子供たちの戦い。体が大きくて怖いもの知らずの男達をどうやってこの島から追い出すことが出来るのか。ご期待ください。〉〉


作品に訪問して頂き、ありがとうございます。

※基本的に毎日更新していますので、この先のストーリーが気になるという方はブックマークをお願いします。コメントや評価を頂けると励みになります。


今日一日お疲れさまでした。明日も一緒に頑張りましょう。

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