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10、現金収入

子供たちはこの現代社会でどうやって現金を手に入れるか。


今回のストーリー要素

サバイバル ★★★(漂流物や盗みで稼ぐ方法)

感情度   ★☆☆

危険度   ★★★(スリの技術)

ほっこり度 ★☆☆

 ユリは島での生活に慣れてくると今度は現金を手に入れる手段を考え始めた。

 盗みで不当に現金や物を手に入れるのではなく、自分の手で合法的にお金が稼ぐ方法を探る。


 まずはママの貯金から20万円を使って成人女性の身分と銀行口座、IDを買った。その女性はホストクラブにはまって借金を作ってしまった女子大生で、風俗で働くかどうか迷ってネットの掲示板にのせていた投稿をユリが見付けた事で繋がった。

 

 そしてそのIDを使って最初にユリが作ったのは女子小中学生専用のコミュニティーグループだ。 

 そこで若い家出少女たちはお互いの性事情や親との関係、子供ならではの金銭トラブルの情報を交換し合い、時にはメンバーで集まって自ら彼女らの相談にも乗る。


 そしてそのコミュニティーで得た情報や個人の体験などを有料記事にして紹介した。

 最初は誰の目にも止まらない記事だったが、少しずつ浸透していくと若い人たちとの付き合い方がわからない大人達や子供を理解したいという親たちからも記事が読まれるようになり、次第に注目されるようになっていった。


 そこのコメント欄で有識者の大人たちが性病や金銭トラブルのアドバイス、支援団体の情報などをくれるようになると今度は少女たちの方が親や身近の大人に相談できない事を大人たちに匿名で相談に乗ってもらいたいと思うようになり、ユリはその間を取り持つ存在になっていく。


 またユリは浜辺で集めた貝殻やシーグラスを使ってアクセサリーやボタンを作って売りたいと考えていた。実際に作ってみると最初は歪な物しかできなかったのが作業に慣れると面白いようにどんどん上達した。


 ネットで自らクラフト愛好家たちと交流し、作品を見て勉強したりネット販売の売れ筋商品を参考にして真似して作るようにもなったがアクセサリーを制作して一品ずつ個人に売って廻るよりもクラフト材料としてまとめて売る方が手っ取り早く、時間やコストも削減できるという事に気付いた。


 またクラフト愛好者たちとの交流を通して流木や海藻押し花などの需要も高いという事を知ると時間を見つけては島を歩き回ってそれらを拾い集めるようになった。そういう眼で島を探り廻ると自然の中には美しい造形の物で溢れていることに気付く。


 今までは食べ物を探し歩くことに慣れていたが今では石や木の枝、羽根や動物の骨などへも目が行くようになり、また海岸に流れ着いたゴミの中からも時折輝いたものを見付けることが出来た。

 運が良ければ琥珀(こはく)龍涎香(りゅうぜんこう)と呼ばれるマッコウクジラの腸内で結成される物質で希少価値のある物、クジラの骨やサメの歯、真珠やサンゴなどを見つける事もある。


 ユリが合法的な方法で小さく手堅い現金を稼ぐのに比べ、タケシは非合法なやり方で効率よく現金を稼いだ。

 タケシは絶対的にその方面の自分の技術に自信を持っていた。タケシとユリは方法は違えど現金を稼ぐ才能があった。


 タケシはマリとコンビを組み、時にはかなり大胆で大きな物まで狙うようになって行く。

 ターゲットに近付くのはいつもタケシだけで、マリは常に物陰から全体の様子を観察する役目だった。そして不穏な空気や違和感を敏感に感じ取るとマリは即座にタケシだけが気付く合図を送って注意を促す。

 

 タケシがよく狙うのは飲み屋街の中年男性達だ。また時には昼間に若いOLや公園で子供を遊ばせている主婦たちも気が緩んでいて狙いやすい。

 子供で背が低いという事は大人と視線が合わない分、こちらの動きを読まれにくく、また警戒も持たれずに済む。


 特に若い女性が好むブランド物のバッグはバッグの口が閉じていない物が多いために狙いやすい。

 タケシは盗んだ財布は中身を抜き取った後必ず元の場所に戻した。それは二度手間で難易度は高くなるが、相手に無駄な警戒心をいだかせないためには必要な処置だった。

 ただ女性の場合は飲み屋街の男性よりも圧倒的に手持ち金額が少ない。少ないという事は数をこなさなければならずその分リスクは高くなる。

 

 こういう事をしている時、タケシは罪悪感を全く感じなかった。

 スリや万引きで得るスリルは気持ちを高揚させる。自分の指のつま先まで神経が研ぎ澄まされ、周りの空気がすっと軽くなり、人の動きが突然に止まったように感じる。このハイの状態になった時、すべてのことが可能になった。

 自分の投げた物、触れたものが自分の手を離れた後も思い通りに動いてくれる。  


 一度その感覚を体で感じてしまうと自分はもう人間ではないのかもしれないと思えた。それはとてもとても恐ろしい事だとも思ったが自分に与えられたこの超能力に自分自身が酔っていた。


 自分がまるで透明人間になったかのように誰からも意識されず、思い通りに人の体に触れることが出来る。

 この大都会の人ごみの中で自分の事を認識できるのはただ一人マリだけだった。 

 実体のない意識だけが街中を彷徨(さまよ)い続け、次々とおとなの財布から現金を抜き取って歩いた。



〈〈 次回、悪い奴ら。島に侵略者が現れる。タケシとユリ、マリはこの島を追い出されてしまうのか。ご期待ください。〉〉

作品に訪問して頂き、ありがとうございます。

※基本的に毎日更新していますので、この先のストーリーが気になるという方はブックマークをお願いします。コメントや評価を頂けると励みになります。


今日一日お疲れさまでした。明日も一緒に頑張りましょう。

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