プロローグ
自分にとって大切なものほど失う時は一瞬で
「今後、魔法の使用は控えた方がよろしいかと。」
弱冠8歳 僕、ネローア・フォン・フィニウスは厳しい現実を突きつけられた。
母は事態の深刻さに涙を流し、父は現実を受け入れることが出来ず何度も診断のやり直しを要求していた。
残酷な事実に目を向けることができず頭は真っ白になっていた。夢を見ているような、まるで現実味のない感覚に襲われた。
以前は胸に抱く希望を表すかのように淡く水色に輝やいていた左目も、今ではこの実状を嘲笑っているかのように感じた。
「……治る可能性は…ないんですか?」
絞り出すように今にも消え入りそうな声を出した。そう易々と切り捨てられるほど僕にとって魔法は軽いものでは無かったから。
「申し訳ございません。そもそも症例が少ないもので……」
この世で最も耳にしたくない言葉をかけられる。動悸が激しくなり、視界が歪んでいく。
……もう魔法が使えない。
身体がとても重く感じた。両親が声をかけてくれているが何を言っているのか判別できなかった。望みが絶たれ、心が暗い闇の中に落ちそうになっていた。
今までの記憶が少しづつ思い出されてくる。初めて魔法が使えた日、皆に褒められた日…
その時、頭の中である言葉が響いた。
――魔法はイメージの世界だぜ。出来ると思えばなんでも出来るさ――
ある日の記憶。僕に魔法への興味を湧かせた言葉。
希望の光が差し込んでくるのを感じた。
「…父様、少しわがままを言ってもいいですか?」
父は少し驚いたような表情を浮かべる。
「何でも言ってみなさい。できる限りの事はする。」
「僕に…沢山の魔導書と魔力回復薬を買って頂けませんか。」
このとき8歳にして魔力の欠乏が命の終わりを意味する病【魔命症】と魔力が漏れ出す体質【魔漏体質】を患った僕は自身の魔法で病を治すことを決意した。