在るべき場所へ
「俺達はずっと一緒」……そのばずだった。
ドタドタと家に乗り込んでくる数人の足音が聞こえた
何事かと思っていると襖が勢いよく開かれ数人の男が入ってきた
見た感じ初老のやつ、見るからにガタイのいいやつ、気弱そうな若いやつと様々だが、黒の着物に同じ刺繍の入った羽織を着ていた
突然の事に回らない頭でそんなことを考えていると
「若っ!こんな所にいらしたのですね。早く戻りますよ。うちの稼ぎ頭が居なくなったと御館様がお怒りです!」
言うが早いか白髪の男の腕を強引に引き立たせようとする若い男
白「僕はもうあんな所へは帰りたくない。お願いだ、このまま見逃してはくれないか?」
そう懇願しつつも無理なのだとわかっているのだろう、なされるがままに立ち上がる
そして、それをわかっていて男が答える
「若、それは無理ってもんです。一月半も姿をくらませていた貴方なら分かっているでしょう?」
そう、この若と呼ばれている白髪の男と赤髪の男が出会ったのは一月半も前の提灯少ない夜道でのこと
赤髪の男は月でも眺めながら帰ろうかと薄暗いの道を歩いていた
そな道中、目の端に気になるものを捉えパッとそちらを向くとそこには白髪の男が月に照らされながらうずくまっていた
それはそれはとても美しい光景だった
この世のものとは思えないほどに
赤「お前、何してんだ?こんな夜更けに。」
気が付くとそう声をかけていた
が、白髪の男は当たりを見回し笑みを浮かべ小首を傾げる
その顔に何故か諦めたような雰囲気と、そうするように教え込まれたような違和感を覚えた
赤「……はぁ。お前行くとこないならうち来るか?」
何を思ったかそう問いかけ手を差し出す
戸惑いつつも差し出された手を取り引っ張られながら立ち上がる
白「よろしく。」
それだけ呟き先程とは違う心から笑ったような顔を向ける
赤「(こいつさっきまでこんな綺麗な顔してたか?)」
そんなことを考えながら二人並んで家路に着く
握ったてはそのままに
そこから二人の生活が始まりいつの間にか一月半
なんだかんだと気の合う二人は一緒に暮らし今日に至る
赤「おい、そいつを離せ!帰らねぇって言ってんだろ!どんな事情か知らねぇが、勝手に連れてこうなんざ許さねぇ!!」
そう叫びながら白髪の男の腕を掴んでいる若い男に殴りかかろうとする
「抑えろ」
ただ一言若い男が言うとガタイのいい男が素早く組み伏せ畳に押さえつける
赤「っクソが!離しやがれ!そいつは俺と居たいって、ずっと一緒だって、そう言ったんだ!!」
そう叫ぶ声が聞こえないかのように若い男が話し出す
「さぁ、若。早く帰りましょう。こんな所にいては貴方の品格が落ちてしまう。」
有無を言わさぬ圧を放ちながら問いかける
白「………もし、嫌だと言ったら?」
若い男に縋るような目をして問い返す
「そうですね、そこの男でも御館様の御前に連れていきましょうか。そこそこ整った顔立ちですし、気に入られれば……。その後のことは貴方が一番お分かりでしょう?」
そうなだめるように、けれど確かな核心を突くように言う
ある程度の予想はしていたのだろう、やはりと言わんばかりの溜息をつき
白「……わかった。お前の言う通り帰るよ。だから、その人を離してやってくれないか?」
諦めたようなか細い声でそう答える
「若が大人しく我等と共に御館様の元へと帰ってくださるのなら。」
そう言い白髪の男が小さく頷くのを確認すると、ガタイのいい男に合図を送り振り向く事すらせず白髪の男を連れ初老の男と共に出て行く
ガタイのいい男はそれを見送ったあとようやく赤髪の男から離れ仲間を追って出て行った
白髪の男に助けられたという羞恥心と助けられなかった悔しさでうずくまる赤髪の男