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二十四の季節 ~うつろひ~  作者: こまくさ
13/29

6/21[夏:五月中気] 夏至

 暑い、というより不快だ。

 気温は30度そこそこ、というより湿度が高いことが不快指数を高めている。


 まだ午前中だというのに、空気は重く、額に、背に、じっとりと汗がにじむ。

 こんな日の顧客回りは本当に嫌になる。せめて社用車が使えたら移動中は涼しくて、多少なりとも汗を抑えられるのに。肩に担いだ上着を恨めしく思いながら、ビル街を歩く。


 昨日は一日中厚い雲が垂れ込め、時折雨が降るという典型的な梅雨時の空模様で、気分も滅入ってしまった。そんな状態での商談はなかなか難しかった。

 その反省を今日のプレゼンに活かさなければならなかったのだが、こうまで不快感が高まっていると思考がまとまらない。先方の顔色を窺いながら…なんて余裕はなく、独善的なプレゼンに終始し、結果、2日続けて纏まる商談も纏めることができなかった,


 ここ数日の不快感と、暑熱順化の進まない身体と、業務成績のプレッシャーとの三重奏だ。


 商談を終えて外に出ると、久しぶりに雲が切れ強い日差しが照り付けている。

 正午近くには、自分の頭の影がつま先のほんの一足長先にあり、進む路上に日陰は見当たらない。日差しがあると言ってもカラリとした真夏の暑さではなく、午前中までの湿気は居座ったままだった。


 暑さにやられてさほど食欲はないものの、帰社する前に昼飯でも食っておくかと、ネクタイをほどいて歩き出したのがほんの5分前だ。この辺りはちょっとしたオフィス街なのでランチ営業の店は多い。

 早くも夏バテのような症状が出ているため、揚げ物メインのワンプレートランチには触手が動かない。先週あたりから『冷やし中華はじめました』のポスターが目に付くようになったが、その選択肢も心は却下する。

 どうしたものかと思案していると、青波模様の上に赤文字で『氷』と書かれた幟旗が、こじんまりした喫茶店のドアの前に吊るされているのが目に入った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 京都では、6月の晦日には『水無月』という菓子をいただく風習がある。

 小豆餡を載せた白外郎(ういろう)を三角形に切り出した菓子だ。

 その昔、宮中では氷室(ひむろ)に保管してあった氷を切り出して暑さを和らげたが、一般庶民には氷室の氷など望むまでもなく手に入らない。そこで、外郎を氷に見立てた菓子で、暑気払いの代用としたんだとか。

 関西でも京都市の旧内裏(だいり)エリアでは、今でも6月中旬を過ぎると和菓子屋の店頭をにぎわすが、そのエリアを外れるとなかなかお目にかかれないことも。


 6月30日は、神社で茅の輪をくぐって邪気を払い、『水無月』で暑気を払おうと思う。


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 ♪たどり着いたらいつも雨降り(よしだたくろう)

 ♪傘がない(井上陽水)

 この頃の所謂フォーク村の楽曲は含蓄の深い曲が多い。

 とはいえ、当時は、本当の深さをわかってはいなかった。

 たくろうに限らず、陽水の「断絶」~「二色の独楽」に収められた曲は、今聞いても感慨深いものを感じる。

 

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 夏至 (二至二分の一つ)

  ├ 太陽黄経:90°

  ├ グレゴリオ暦:6月21-22日

  └ 七十二候

     ├ 初候:乃東枯なつかれくさかるる

     ├ 次候:菖蒲華あやめはなさく

     └ 末候:半夏生はんげしょうず


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