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大変お久しぶりでございます。
上平です。
すいません。
続き、お待たせしました・・・・
→前話投稿した日を覚えています?
えっと、去年の8月末です
→弁解は?
ありません(涙)
それでは第九話、どうぞ・・・・
二千二十×年 四月十日 十四時四十九分
東京都新宿区 KEE株式会社
瑠璃子、土井、塚本は死んだ山代がの勤務先を訪れていた。
KEE(今野 excellent enterprise)株式会社は近年急成長してきた不動産デベロッパーである。
今回、山代が勤めていた代々木の営業所でなく、バックオフィスや管理職たちが集まっている、本社へ足を運んでいた。
本社はオフィス街にある高層ビルの一部フロアを借りて運営しており、三人は受付で面会をしたい旨を伝え、応接室に通されていた。
応接室は、窓がガラス張りになっており、新宿駅周辺の街並みが一望できるような眺めになっている。
「にしても、大手不動産会社ともなると凄いっすね。こんなデカいビルに本社構えてんだから」
瑠璃子と土井は席に着く中、塚本は窓の外を眺めていた。
「少しは落ち着いて座っていられないの。それともいつものオフィスと違って、立派な所だから興奮してるのかしら?」
塚本に対し、嫌味も込めて棘のある台詞を言い放った。
「まぁ、こんな立派なオフィスに来る事滅多に無いからってのもあるけど、ちょっと詮索をね」
塚本はそういって部屋を舐めますように見回していた。
すると、応接室の扉からノックと音が響き、扉が開いた。そこには五十代くらいだろうか、男性が応接室へ入ってくる。
「すいません、お待たせしました。何分会議等が多いもので・・・・」
「警察庁の小山田と申します。こちらこそお忙しいところ、お時間を作っていただきありがとうございます」
「いえいえ、改めてまして上司の倉と申します。本日は弊社の山代の件ですかね。私もニュースを見た時、驚きました。彼とは同じ大学出身で、上司と部下という関係でしたが、懇意にしていましたので、非常に残念です」
「そうでしたか。我々今回の事態をいち早く究明していければと思いますので、ご協力いただければ幸いです」
倉と瑠璃子は挨拶をかわし、事情聴取は始まった。
二千二十×年 四月十日 十八時五分
東京都八王子市 五十幡商事
本日の捜査を終え、聞き込みに行っていたメンバーは、次々と戻っていた。
塚本は大学の講義を受けるため、新宿での事情聴取後にキャンパスへと直行していた。
瑠璃子と土井だけは八王子にある五十幡商事に向かった。二人が戻ると、日野に調査に出ていた石毛、草壁はすでに戻っていた。
「小山田さん、お久しぶり~」
「あら石毛君。お久しぶりね。また派手な捜査してるのね」
「何が派手な捜査ですか。ただの荒療治でしょうが」
瑠璃子の石毛に対する嫌味に草壁が反応した。
「だってよぉ、相手も攻撃してきたしたじゃねーか。それにほら結局連中も吐いたし、手柄も警察に渡って、結果オーライじゃん!」
その台詞を聞いて、草壁は頭を搔きながら、給湯室へ煙草を吸いに向かう。
「今日だけで一箱開けてんのよ、アイツ」
「絶対お前と巧介が原因だと思うぞ・・・・」
「道明も辛辣ね~。俺ちゃん泣いちゃうかも」
土井と石毛のやり取りを後目に瑠璃子は、事務所を見回した。
「ところで他に誰もいないの? 社長はともかく紫電君や美鈴ちゃんは外出?」
「俺たちが戻った時には、滝野ちゃんならいたよ。けどコーヒーのストックも切れたから諸々一緒に買い出し中。マサに関しては、滝野ちゃんから聞いたけど、巧介に呼び出されて事件現場に向かったみたいよ」
「は? 何勝手に現場に行ってんのよ。まったく私の許可無しに!」
「まぁまぁ、あいつも一応一つのチーム持つ主任クラスだし。何か自分で申請通していったみたいだし。そろそろ戻ってくると思うよ」
瑠璃子が窓の外を眺めると、丁度正太郎の車が一回車庫に入っていった。
「おぉ、帰ってきた帰ってきた」
「よし!今日こそは文句の一つは言ってやるんだから」
(いつも言ってるじゃないですか)
事務所の扉の方から階段を上がってくる足音が聞こえる。恐らく、正太郎と巧介の足音であろう。
そして扉が開かれる音が響いた。
「あんた達ね。私に一報も入れずに現場に立ち入るっていい度胸・・・・ね?」
その瞬間瑠璃子が文句を言い放った。しかし、二人の姿を見て、一瞬志向が止まった。
何せ二人の姿がいつになく、小汚いのだ。
正確に言うと巧介には方や腰の辺りに葉っぱや蜘蛛の巣、正太郎に関しては髪の毛の小枝が刺さっていた。
「え、ちょ、あ、あんた達。森の中で駆けっこでもしてたわけ・・・・?」
「ハハハハ! こいつはいい、傑作だ!」
二人の姿を見て、瑠璃子動揺を隠せなくなっており、石毛は大笑いしている。
「そんなに酷い恰好してますかね、マサさん?」
「力さんが大笑いするって事は相当面白い姿してんだろ、俺達・・・・」
巧介の問いに対して、正太郎は苦笑いで答える。
「というか現場に行ったって事は周辺の茂みに入ったて事か?」
二人の恰好を横目に土井は尋ねた。
「そうそう。巧介が現場に気になるって事行ってきてね。なんで学校終わったコイツを拾いつつ、奥多摩へ向かった訳よ」
「もちろん、収穫あったんでしょうね。」
「はい。その前に小山田さん、塚本さんが現場に行った時、言ってた事覚えてます?」
「え? 確か被害者が保険をかけている可能性だったかしら・・・・もしかしてその保険が⁉」
「そうです。見つかったんです」
そう巧介が言うと背中で隠していた左手を正面に向けた。
「それはビデオカメラか? まさか被害者がカメラを回してったてのか?」
「石毛さん、ピンポンです~」
「よっしゃ、賞金ゲットォ!」
巧介の台詞に石毛がおどける。
「しかし、廃工場の方は調べてもそんなの出なかったし、辺りの茂みも探したが、そんなの出てこなかったんじゃ無かったのか?」
と今度は草壁が質問する。
「それがあったんですよ。事件現場の周りに生えてる木の上に! しかも葉っぱとかシート掛けて厳重にカモフラージュしてましたよ」
「木の上ってまた斬新な事したわよね。少年向けの推理小説じゃあるまいし・・・・」
「まぁまぁ、瑠璃子ちゃん。そんな事はそこはさておき、映像は無事だったからモニターに繋げて見よう見よう~」
「そうね。というか証拠物件に指紋何て付けてないでしょうね?」
「その辺はバッチリ。巧介は見つけた瞬間から手袋にはめて持ってきたから。いやぁマジで優秀よ」
(優秀ね・・・・)
瑠璃子は巧介を横目で追った。誰からでも指示を受ける訳でもなく、ビデオカメラをモニターに繋ぐ彼を見て、十六歳にしては振る舞いが大人びているが、それがまた異質で気持ち悪く捉えるように思えた。
「繋ぎ終わりました。それでは再生しますね」
「にしてもユージは凄いな。野生の感でも持ってるのかね」
「あいつは昔から変な所で鼻が効くんすよ」
二千二十×年 四月十日 十八時十分
東京都武蔵野市 明金大学 武蔵野キャンパス
「ヘックシ!」
塚本は勢い良くくしゃみをした。先ほど講義が終わり、喉を潤すべく、学食の自販機へと向かっていた。
(誰かが、俺の噂してんのか? 差し詰め、瑠璃子さんが俺の処刑方法でも考えてんだろ)
二千二十×年 四月十日 十八時十三分
東京都八王子市 五十幡商事
事務所に集った六人は、ビデオカメラの映像を確認していた。
映像の内容は山野が犯人が仕込んでいた刃物によって喉を刺され、原田が犯人によって頭を銃撃、最後には西が山野同様刺殺される姿だった。
「まぁ、これで三人が殺されたって事が分かったわね。これで犯人の手掛かりに少しでもつながれば」
「は~い。瑠璃子ちゃんに一個質問で~す。犯人が暗器使いでは無い線は残るでしょうか?」
「は?何言ってんの。犯人が袖の中にナイフ隠し持っていた可能性だってあるでしょ」
「犯人が暗器使いの可能犯人が暗記使いでない根拠は何?」
「まず、現場の血痕だよ。被害者三人以外にも一人分の血痕が出てたでしょ。」
「それなら今、鑑識が山代の物と一致するか、前のある人物と一致するか調べてるわ」
「おそらくどっちも一致しないわ、それ。」
「何でそんな事がわかるのよ!」
正太郎の言葉に対し、瑠璃子は食い気味に問う。
「力さん、山代のタッパっていくつだった?」
「え~と、ちょっと待て。あったあった百六十三センチだとよ」
石毛は自分のデスクトップに表示されるデータを確認し、答えた。
「ありがとう。後、今日シメた・・・・じゃなかった。話聞いたガキどもに嫌がらせをした奴の特徴って?」
「トレンチコートと帽子で人相までは分からなかったが、声とタッパ見た感じ、チビの野郎だと」
「トレンチコートと帽子でなら三人を殺した犯人と一致するじゃない。そしたら山代がナイフを仕込んで、二人を刺殺したんじゃない⁉」
服装の特徴が一致している事を瑠璃子が言及した。
「じゃあ、百六十三センチしかない山代が、百八十センチはある山野の首を綺麗に真っ直ぐさせるんですか。山野の身長でもそりゃあ真っ直ぐ刺せますけど、事件の映像は犯人の映像は同じぐらいの身長の人間が刺してますよ?」
瑠璃子は巧介の回答を聞き、モニターの方に目を向けた。
「・・・・本当だわ! 犯人は山代にしては大き過ぎる」
「第一山代の外傷には頭にぶっ放した拳銃の弾以外、目立った外傷は無かったし、現場に血液を残す事はないだろうし」
「それだけで犯人が暗器使いでない理由にはならないでしょ」
「小山田さん言葉を返すようですが、袖にナイフ隠すような玄人がナイフ出すときに自分の腕切り付けるようなミスなんてしますか?」
「・・・・それもそうね」
「あと、これ西日本方面の資料で見たものなんですが、手の平の辺りから薄い刃物が出る暗器の記録がありますよ。なので出血は暗器の起動時のもの。逃げる原田を仕留める時も二発もかかってますし、これは素人ですよ・・・・」
巧介は解説しながら、資料を見せた。
「何で新入りが他方面の情報知ってるのよ・・・・」
「最近、資料データの整理させてて、それが目に入ったんだと思いますよ。事件の記録を絵本読んでる子どもみたいに目をキラキラさせて見てますよ」
草壁は苦笑いを浮かべながら、瑠璃子に話した。
「てことは原田と山代が撃たれた弾の線状痕は一致している訳だし、西たち三人と山代を殺した人物は同一人物って事か」
「瑠璃子ちゃん、タッパから新しい容疑者をピックアップ出来る?」
「分かったわ。本庁に戻ってピックアップしてみるわ。あと紫電君」
瑠璃子は正太郎に近づき、耳元で話始めた。
「彼の推理って、あなたの入れ知恵?」
「いや、状況証拠から同じ事は推測してましたけど、あいつは自力でこの仮設まで至ったんですよ」
それを聞いて、瑠璃子は溜息をつく。
「本当に捜査狂いね。彼」
そういうと、今度は風見に話しかける。
「風見くん、ちょっといい?」
「はい、何でしょうか?」
(この人も説教垂れてくんのか?)
巧介はこれから飛んでくる台詞に心の中で身構えた。
「ありがとう。犯人の身長の事、私は注力がいっていなかった。ビデオカメラの件は付着している指紋も含め、こちらで調べてみるわ」
「え、あ、はい。ありがとうございます」
巧介はお礼の言葉が飛んでくるとは思わなかった。
その光景を見て、正太郎は神妙な表情を浮かべ、後頭部に手を置いた。
(瑠璃子ちゃん、口ではああ言ってるけど、なんか寂しそうな目してんな。まぁ、過去の事件被害者をこちら側の仕事に巻き込んでいるからか・・・・)
そうして、会議は終了し、一時解散となった。
第一部もあと、ニ~四話で完結させればと思います。
→まず、2022年内に第一部完結できるの?
早く、次の話や過去編も書きたいので頑張ります・・・・
それでは引き続き、応援よろしくお願いします。