小さな小さな 大冒険!89
■「そこにいる君に逢いたくて。」を新しくアップ致しましたので、宜しければご一読ください。
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龍徳はというと自分の放った魔力の強大さに冷や汗が流れていた。
「これは・・・予想以上にヤバいな・・・一旦死の大地に避難した方が良さそうだ・・・」
自分が放った魔法がレインベールの森まで広がっていく光景を見て慌てて空を駆ける、
死の大地までは10㎞程。
全開の身体強化にシルフィーの風による後押し、魔法を足元に展開する余裕がないので、グノムが空中に巨大な岩を足場代わりに作り出していく。
死の大地まで残り5㎞辺りで振り返ると破壊の渦が一気に収束し始める光景が目に入る。
「クッ!このままじゃ間に合わないか?・・・限界を超えるしかなさそうだな・・・出来るか・・・」
そう言うと纏っているドルオーラを身体強化に初めて使用した。
「グゥッ・・・凄まじい力だ・・・身体がもつか・・・」
『死の大地まで後少し・・・』
後方を確認できる余裕などない。
その時・・・
凄まじい大爆発が巻き起こった。
幸い爆発の直撃は避けられたものの爆発の余波の速度は尋常ではない。
「着陸する方が良いか・・・否、少しでも遠くに! ん!? あれは・・・ソーマか!?」
ドラゴンとしての格が上がった今のソーマであったが、魔力の波長で本人であることを理解する。
「ばかやろ~逃げろ~!! ソーマ!!逃げろ~!!」
もう何をしても回避不可能。
その瞬間2人を爆風が襲った。
「吾に・・・」
ソーマが何かを言った気がするが爆風に飲み込まれて聞く事は出来なかった。
「「ぐあぁぁぁぁ~!!」」
その瞬間、龍徳とソーマは凄まじい爆発に飲み込まれたのだった。
眩い光の爆発が収まるとレインベール城があった場所には直径6㎞にも及ぶ巨大なクレーターがあった。
その周囲は広範囲にわたって焦土と化している。
暫くすると灼熱と化した大地を凍らせながら戻って来る者達の姿があった。
レイナが氷魔法で自分達の前方に道を作る。
場所によって融かされている場所をレイナがフォローしているようだ。
「何度見ても凄い光景よね・・・」
「ええ・・・聞いてはいましたが、ここまでとは・・・」
そうして進む事30分程で巨大なクレーターの見えるところまで辿り着き2人は目を見開き固唾をのんだ。
「ハハハ・・・前言撤回・・・さっきの光景はまだましな方だったのね・・・」
「底が見えませんわね・・・」
深さ2㎞を超える巨大なクレーター・・・
時刻的に陽の光が届かない為、穴の底が見えない。
巨大な穴は様々な物質が溶かされ熱量を伴った何かに変質しているようだった。
龍徳が無事かどうか心配になった2人が一緒に来たがった龍聖に我慢して貰いここまで来ていたのだが・・・
「神谷部長はどこに・・・」
「上空から放った魔法ですから恐らく龍徳様ならご無事だとは思いますが・・・」
良く見るとクレーターの側面は黒い金属の様な物へと変質している。
「アイスバレット!」
「ウォーターランス!!」
氷魔法と水魔法を側面に向け放つとジュゥゥゥ~っと一気に溶かされているところを見ると凄まじい高熱を帯びている事が分かる。
ナツの氷魔法は溶けながらもギリギリ残っているようだった。
その後、探知魔法を広げて調べているが、今のところ生命反応が一切なかったのだった。
「私達の探知魔法じゃ中心まで調べられないわね・・・」
「土魔法の得意なアキを連れて来るべきでしたね・・・取り敢えず氷魔法でユックリ降りていくしか方法がなさそうですわね・・・」
「私も苦手だけど土魔法でフォローするわね・・・」
そう言って少しずつ足場を作りながら2人は地の底へと降りていく。
一気に氷魔法で覆いたいところであったが急角度の勾配に氷を張っても滑り落ちてしまうだけで意味がない事は実証済み。
その為、勾配が緩やかになる迄は慎重に足場を作りながら降りなければならなかったのだ。
だが、今となっては最高ランクになるであろう2人は僅か1時間程で傾斜度15度程度まで降りて来る事が出来たのだった。
「微かだけど中心地点に生命反応があるわ!」
「ええ! この位の傾斜なら! 生命反応がある場所以外を!魔力最大開放!!“凍てつく世界”」
パワーアップしたナツの広範囲氷結魔法は短時間で中心地点以外を氷の世界で覆いつくした。
「ハァァァァ~やっぱりナツの氷魔法は凄いわね~辺り一面氷の世界だわ・・・それにしても丁寧な魔法よね~」
「フフ♪ ありがとうございます。」
ナツの凄さは氷だけでは足元が滑ってしまうので、パッと見には分からないのだが、表面に僅かな凹凸が施されているのだ。
中心地点にだけ漆黒の場所が残っているがハッキリ目視できるところまで来たというのに未だ人影が見当たらない。
未だ漆黒の状態である中心地点は直径50m程あるだろうか・・・
ナツの氷魔法が途切れたその場所を恐る恐る手で触れてみたが問題なさそうであった事でその儘、歩みを進めていく。
すると真っ黒に焦げた何かが横たわっている事に気が付いた。
「流石にこの深さですと日が差さないから良く見えませんわね」
とのナツの言葉にすかさずレイナが“ライトボール”をいくつも打ち上げる。
周囲が明るく照らされた事で、それが人の形をした何かである事に2人は気が付いた。
「うそ・・・」
「ま・まさか・・・」
急いでその場所に駆け寄ると慌てて浄化の魔法をかけ始めた。
消し炭の様になったものが徐々に姿を顕す。
「「なっ!!」」
横たわっていたのは・・・
「「ソンメル!!」」
そう・・・龍徳の魔法によって全てを焼失したかと思われていたソンメルの姿であった。
「あの魔法の直撃を受けて体が残っているなんて・・・」
「し・信じられません・・・」
ソンメルは龍徳の魔法の直撃を受けた瞬間も魔法をレジストし続けたのだ。
だが、魔法耐性を上回る威力であった事で徐々に身体が朽ち果てていった。
それを異常な速度で回復していったのだが、龍徳の魔法は、その再生速度を上回ったのだった。
強過ぎたが為にあの魔法を持ってしても簡単に死ぬことが出来なかったソンメルは地獄の苦しみを味わった事は間違いない。
生命反応が微かに残っている事に驚くべきだろうが、陰邪石による影響は失われているように感じた二人は、その後、中々戻って来なかった2人を心配して追いかけて来た者達と合流し、ソンメルを捕まえ投獄する事にしたのだった。
街に戻ると時刻は既に15時を過ぎている。
2人は一旦戻ってから人を揃えて大規模な捜索隊を編成しようと考えていたのだった。
街に戻りソンメルを牢獄に放り込むと龍聖の事を頼んでいたハルとアキと合流し事の顛末を伝え龍徳の捜索準備が始まった。
「パパ・・・」
いつもは明るい龍聖がションボリ項垂れている姿を見てナツの心が痛む。
「龍聖君♪ 神谷部長なら大丈夫ですよ♪ だって!龍聖君のパパだもん♪ 絶対無事に決まってる!」
根拠のない言葉だが子供には、これ位がちょうど良いのだろう・・・。
「うん♪」
先程よりは元気を取り戻した龍聖の手を取って捜索隊がいる場所へと移動した時だった。
「ナターシャ様・・・あれは・・・」
「そう言われハルの方に顔を向けるとアキの顔まで強張っている事が分かった。
そして、ハルが指を指している方へと顔を向けるとまだ距離があるものの巨大な影が街に迫って来ていたのだった。
「うぅっ・・・」
全身に痛みを感じながら薄っすらと目を開ける男の姿がある。
「よう!やっぱり生きていたようだな」
声のする方にユックリ顔を傾けると傷だらけのソーマの姿が見えた。
「ツッ・・・ここは・・・グアッ」
体を起こそうとしたがあちこちの骨が砕けている上、腕で支える事が出来ず全身に激痛が走る。
「オイオイ!ムチャするな!いくら龍徳でもあれだけの爆発に巻き込まれたら無事でいる訳がないだろうが!」
自分に何が起こったかを思い出すかのように大きく深呼吸をする。
「すぅぅぅ~ ふぅぅぅ~ ゲホッゲホッゲホッ・・・ここは死の大地か?」
肺までやられているのか深呼吸しただけでむせ返ってしまう。
「そうだ。」
「そうか・・・お前も無事そうで何よりだ・・・ゲフッ・・・」」
「グルル・・・吾のこの姿を見て無事といえる奴はお主くらいであろうな・・・まぁ~無事だがな。だが、お主は無事とは言い難い姿だそ。」
「フッ♪ どうやら俺を守ってくれたようだな・・・助かったよ・・・。ゴフッ・・・」
「グルル・・・なに、気にするな。」
「それと・・・ゲフッ・ゲフッ・ゴフッ・・・」
「おい!もう喋るな!!」
龍族だからか普通の人間と違う感覚のソーマであっても流石に龍徳の事を心配し始めたようだ。
「先ずは・・・ゲフッ・・・ゼェ~ゼェ~・・・か・回復しないとな・・・来いディーナ!」
「龍徳~ああ・・・こんな・・・酷い・・・ボク一人じゃ直しきれないかも・・・」
「そんなにか・・・だったら・・・来い精霊達よ!」
次々に現れ心配そうにしている姿が目に映る。
「みんな!ボクに力を貸して!」
そう言われて即座に精霊達がディーナの肩や背中に手を当て始めた
「これならいける! 今治してあげるからね~」
「ああ・・・頼む・・・。」
常時、顕在化させていた4人の精霊達は龍徳の意識が無くなったと同時に状態を維持できなくなってしまっていた。
その為、再度精霊を呼び出す必要があったのだった。
「いつもより多めに魔力使うからね~」
「ああ・・・」
「パーフェクトヒール!!」
ここで少し説明を入れておく・・・
龍徳が回復魔法を使用する時にディーナを使うのは、人間の構造的に一番効果が高いからなのだ。
人間は大人でも約60%が水分で構成されている。
その為、水の精霊による回復魔法が一番効果が高いだけの事なのだ。
だからこそ水分以外の身体の構造に対しての治療効果は弱くなってしまう。
治療できない訳ではないが、時間が掛かってしまうのだ。
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