小さな小さな 大冒険!81
その少し前・・・
レイナとナツも敵と戦っていた。
「やっぱり強いわね・・・」
「そうですわね・・・」
辺り一面の樹木が倒れところどころから炎が立ち昇っている。
「いい加減にくたばりやがれ!」
そう言い放ち巨大な熊の口から広範囲に火炎放射器の様な炎が舞起こる。
「クッ! 凍てつく壁!!」
ナツの唱えた魔法は攻撃魔法である凍てつく世界を応用した防御魔法だ。
巨熊の放った炎を完全に遮断する。
最初はブリザードウォールで防ごうとしたのだが、巨熊の炎の巨大さと威力によって防ぎ切れず2人がダメージを追ってしまった為、ナツの最強の防御呪文を使っていたのだった。
「忌々しい魔法だ!」
そう言うと前足を上げ大地を踏みつけた。
「「キャァァァ~!!」」
途端、地面が大きく揺れ動きナツの放った氷の壁が崩れ落ちていく。
そして、巨熊が口を開き再び炎を吐きだそうとした。
「そう何度も同じ攻撃を喰らうもんですか! いくわよ雨王!」
「ハッ 思う存分私をお使いくださいレイナ様!」
どうやらナツもレイナも既に精霊を呼び出しての全力戦闘となっているようだ。
そして、レイナが上空に手を翳し雷雲を巨熊に落としたのだった。
「雷豪!」
落雷を落とすのではない・・・雷雲自体を落とす。
漆黒の雲の中で放電現象を起こしている雲が巨熊を包み込んだ瞬間、爆発したかのように暴れ狂う雷が巨熊を襲う。
「グギャァァァ~」
断末魔の様な咆哮が止むと同時に雷雲が消える。
「どう!?やったかしら・・・」
「レイナさん・・・それは言ってはいけないと以前仰っていませんでしたっけ?」
「あっ! そうだった・・・ってことは・・・」
ナツに向けた顔を恐る恐る巨熊へ向け直すと・・・
グググッと身体を持ち上げる姿があった。
獣王と同じく凄まじい速度で傷が治って行く。
「ギ・ギサマ~!!
「あの魔法でも倒せないなんて・・・」
目を見開き驚愕しているレイナを余所にナツが追撃を始める。
「レイン!準備は良いわね!」
「はっ! いつでも!」
ナツがレイナ同様に頭上に手を翳すと上空に巨大な魔法陣が出現した。
「ギガブリザードランス!!」
その瞬間魔法陣から螺旋を描きながら巨大な氷柱が姿を顕した。
「お・大きいわね・・・」
レイナの目に映るのは幅20m以上もの巨大な円錐状の巨氷
長さに至っては、巨熊と同じ位の大きさはあるであろうその巨氷が螺旋を描きながら放たれた。
「グググッ・・・そんなもの・・・カァァァァ~!!」
完全に身体を持ち上げると自分の頭上に途轍もない魔力を感じ見上げた巨熊が後ろ脚で立ち上がるとまたしても巨大な炎をナツの魔法に向け放ったのだった。
水平に放った炎の比ではない威力の炎が巻き起こる。
上空で氷と炎の魔法が衝突し拮抗している。
「あの氷を!? いやいや・・・しぶとすぎるでしょう。」
「レイナさん! 私は動けませんから後はお願いしますわね。」
「任せて!」
ここで使うつもりはなかったんだけど・・・このままだと確かに体力も魔力も無駄に使わされそうだもんね・・・
一気に決めるわよ!
「来なさい!龍王!」
「ホイホ~イ♪」
一瞬でレイナの眼前に出現したのはレイナの光の中精霊のようだ。
「レイナちゃんもっと頻繁においらの事を呼んでも良いんだよ~」
「強敵の時以外はいろんな意味で呼びたくないわね・・・」
「ケチ~」
ベ~っと舌を出してレイナに向ける。
「ケチじゃない!って時間がないから!雨王も良いわね!」
「はい!レイナ様!」
そして、レイナが決意を込めた表情で口を開いた。
「雷属性・・・精霊融合!!」
その瞬間、雨王がスゥーっとレイナの身体へと吸い込まれていく
そして、バチバチバチっとレイナの身体から放電現象がおきた。
「ふぅぅぅ~続けていくわよ!光属性・・・精霊融合!!」
今度は龍王までもがレイナの身体に吸い込まれた。
そして、神々しい光がレイナの身体から巻き上がる。
龍徳から天才と思われているレイナであっても光属性をイキナリ融合させる事は未だに無理であった。
何故なら精霊融合と言っても人間の思考回路では光の速度を完全にコントロールする事など不可能な話なのだ。
その為、先に雷属性の融合を行う事でギリギリ使用する事が出来るのだ。
龍徳のアドバイスがあったとはいえ、この数日間でマスターしたレイナは紛れもない天才なのだ。
「プハァ~・・・相変わらず自分が怖いわね・・・」
「レイナさん急いで下さい!」
ナツの声で反射的に頭上を見上げると巨氷が3割程度、融かされている事が分かった。
ナツはナツで莫大な魔力量であろう巨氷を既に数十秒も維持し続けているのだ。
両名とも以前とは比べ物にならない程の魔力量と魔力コントロールが身に付いていた。
「OK~!! ちょっと怖いけど・・・これで・・・終わりよ!!」
最後の言葉を置き去りにしてレイナが消えた。
文字通り消えたのだ。
刹那の時間で貫かれた事に未だ巨熊は気が付かない・・・否、気が付ける訳もない。
『っととと!上手く行ったと思ったけど十数キロは通過しちゃったわね・・・なら!このまま一気に行くわよ!!』
レイナの目が光ると人外の速度で巨熊を数十回貫く。
『あれ?今何か違うもの・・・まっ良いか♪』
さすがにここまでされれば巨熊でも気が付く・・・
何故なら自分の身体のあちこちから血が噴き出したからである。
「なっ! 何が・・・グワッ。」
口を閉ざしたため炎が収まり膝から砕け落ちた。
「今ですわ! ハァァァァ~!」
ナツの放った巨氷が勢いを増して巨熊に向かうと深々と突き刺さったのだった。
「グギャァァァ~~!!」
断末魔の様な声と共に、巨熊の姿が消えてなくなると元の人の姿に戻っていた。
「ふぅぅぅ~・・・やったわねナツ♪」
「はぁはぁはぁ・・・レイナさんナイスサポートですわ♪」
美女二人が手を取り合って喜んでいる姿は絵になる。
「ガハッ・・・見事・・・約束通り我が名を教えよう・・・我が名は・・・」
「「興味ないから結構よ(ですわ)」」
「なっ!・・・カハッ!」
そして、ピクリとも動かなくなったのだった。
戦闘前の事、当初レイナが・・・
「あんた名前は!」
との質問に
「死んでいく者達に名乗るなど何の意味がある!知りたかったら俺を倒してみろ!」
との会話があったのだがレイナにとっては社会人として相手の名前を聞く習慣があっただけの事なのだ。
そして、ハルとアキも既に戦闘に入っていた。
「お父さん!シッカリして!」
「なんて速度だ・・・」
上空には巨大な巨鳥の姿がある。
当初は空王ハジャを圧倒していた2人であったが、強敵だと分かるとハジャは本来の姿である巨大な鷲の姿となっていたのであった。
「よもやこの姿を見せる事になるとは・・・光栄に思うのですね!私の真の姿などめったに見られる物ではありませんからね!」
そ
そう言って口を開きながら上空から超音波を2人に放つ。
「またあの攻撃か!ウィス!アビスドームだ!」
「はっ!」
本来は”奈落”と言う意味の攻撃魔法やトラップ魔法なのだが、アキはそれをシールドとして使用した。
「これならどうじゃ!」
ハジャの超音波が次々に奈落へと吸い込まれていく。
「クッ!やるではないですか!」
「やったねお父さん!」
ハジャの魔法を防げたことにハルが喜んでいるが当然の事であった。
何故ならハジャの魔法は質が悪く何度も各属性の防御魔法を貫通したり粉々に粉砕してしまっていたのだ。
各属性のウオールを展開した事で威力が弱まってわいたものの悉くハジャの攻撃を喰らった二人は回復を繰り返して入るものの、かなりのダメージが蓄積されていたのだった。
「お父さん!準備できたからアビスを解除して!」
「ウム!頼むぞハル!!」
スゥーっと半円を描いていたアビスが消えると同時にハルが魔法を発動させた。
「発動までに時間が掛かるのがこの魔法の弱点だけど・・・お父さんのお陰で準備が整った!! これでも喰らえ!光魔法!!シャイニングフレア!!」
ハルが魔法を唱えた瞬間ハジャの頭上から大量の光の炎が降り注ぐ。
「グアッ!」
幾つかの光の炎がハジャの身体を穿つ。
そして、地面に追突したのだった。
「やったか!」
「翼と胴体に当たったけど多分仕留めきれてないと思う」
「なら今がチャンスじゃな!」
アキがそう言うとハジャが墜落したであろう方向へ魔法を放つ。
「アビス!」
巨大な樹木が次々に闇へと飲み込まれていく。
そして・・・
「いたぞ!ハル!」
アキの目に映るのは足がアビスによって引き込まれ始めているハジャの姿。
「任せて!フレアトルネード!!」
高熱を帯びた炎の竜巻が水平に放たれた。
これは直撃すると思われた時・・・
「グッ・・・ち・・・調子に乗るな!!!」
激高したハジャが傷付いた翼を羽ばたかせ舞い上がった。
「アビスから抜け出し追った!!」
そして魔力を込めた羽ばたきによって次々に竜巻が2人を襲う。
「グッ・・・何て奴じゃ・・・」
「う・動けない・・・」
シールドを発動して竜巻から身を守るが攻撃も出来ない。
次々に巻き起こる竜巻によって2人のシールドが破壊され後方の木々へと吹き飛ばされていく。
「キャァァァ~!!」
「グオォォ~!」
「よもやこれ程のダメージを追うとは思わなかった・・・だが!もう油断はせぬ!いくら強かろうが所詮は小人!暴力的な風で動けまい!!」
「「不味い!!」」
「ここまで戦えたことを誇りに死になさい!ウィンドカッター・・・・・」
吹き飛ばされない様に木にしがみ付いているのが精一杯な状況で風の刃を放たれれば躱すどころか防ぐ手立てがない・・・
2人がここまでか!っと目を瞑るが・・・
「「ん!?」」
僅か1秒後の事かと思っていたのだが未だ何も起こらない
恐る恐る目を開けると何かが一瞬ハジャを貫いているであろう事が分かった。




