小さな小さな 大冒険!77
「ごめんなさい・・・私・・・無理な事言って・・・龍徳さんに迷惑かけてる・・・」
「はぁ~いま彼女と別れたばかりで良かったぜ・・・」
その時、カナメとマイカが話に混ざって来た
「ぎゃぁ~はっはっはっは~♪ 龍徳がしどろもどろってマジ最高♪ やるじゃんナツミちゃん! いや~明日宝くじ買いに行こう♪」
「ねえねえカナメ君。何で宝くじなの?」
「ん?だってこんな龍徳の姿宝くじ並みの確立じゃないと拝めないからな♪ 宝くじが当たりそうな気がする!」
「あ~だったら私も!ナツミが告白どころかプロポーズなんて! よし!当たる!当たりそうな気がしてきた!」
「だろう!」
「うん♪」
「クッ! 言ってろ!」
「何よーマイカ~馬鹿にして~!」
「いや~笑った笑った♪」
「はぁ~面白っ♪ まさかナツミがね~♪ さすがの私もカナメ君に彼女にしてっていうのがやっとだったのに・・・まさかプロポーズとは・・・・」
そう言いながらカナメと目を合わす
「キャ~ハハハハ♪」
「ぎゃぁ~はっはっはっは~♪」
「は・腹が・・・痛い・・・」
「お腹痛い~キャ~ハハハハ♪誰か止めて~♪」
「ヤレヤレ・・・」
「もう~知らない!」
それから何処に行くにも4人で行動した・・・。
そうそう・・・あの後、本当にカナメとマイカが宝くじを買いに行き見事1等を当ててしまった。
龍徳とナツミも一緒に買った事で、4人で分けたのだが何とも言えない気持ちがあったようだ。
その後、大学生であった事で、世界中に旅行に行った。
カナメも龍徳と一緒にいただけあってやはりただ者では無かった。
今では、中堅の会社を経営する程の男となっている。
4人共大学院に進み24歳で卒業するが、その1年後めでたく結婚する事となった、
そして、2年後に龍聖が宿りナツミが死ぬ事となる。
龍徳はまだ知らない・・・
偶然にもアストゥー・トーア・ストウトを17歳の頃に倒した事を・・・
それは、カナメを同じ大学に受からせる為に勉強を教えていた時の事だ・・・
幼少期より友であった2人は対照的に見られる事が多かったが、外では2人して喧嘩ばかりしていた。
ある時、集中力の無いカナメを連れ竜禅寺と呼ばれるお寺に言った時の事・・・
凡そ人の物ではない化け物に遭遇した事があった。
龍徳の人生で苦戦の2文字は、この時が最初で最後であった・・・。
倒しても倒しても起き上がってくる化け物を相手に戦うがカナメが倒されてしまったのだ。
龍徳も深手を負い寺に逃げ込むが住職までもが化け物の様に襲い掛かってきた。
傷付いたカナメを離れの蔵の中に隠し鍵を掛け一人で戦う決心をした時、龍徳の身体から金色のオーラが溢れ出した。
化け物が火を放った事で本堂が焼け落ちた程の大火事の中だった事と襲い来る化け物との戦いに集中していた事で、気が付かなかったのも無理はない話。
幼少の頃から様々な不可思議な体験をしていた龍徳としては、この出来事さえも当たり前の出来事として受け入れていたようだ。
なので、戦う事に躊躇が無かった。
「貴様!その光は!?」
「ウッセー! 俺のダチを良くも! オラッ! 来い!化けもの共!!」
「余の気のせいだな・・・たかが巨人族が・・・吾に歯向かうとは!」
20分以上に渡り戦いが繰り広げられ龍徳の目に血が入り何も見えなくなった時の事だった。
「良くも余の配下を~!! だが、満身創痍の今の状態ではこの攻撃は防げまい! 見てはならぬものを見た事を後悔するが良い!!」
「クソッ!!」
『ダメだ・・・確か・・・親父が・・・そう・・・確か・・・心眼! 親父が出来るなら俺にも出来るはずだ!』
僅か数秒の出来事なのだろうが、龍徳は意識を今までに無いほど集中し研ぎ澄ます事に成功した。
正に龍徳の凄さはそこにある。
極限まで追い込まれて常人なら不可能な事を類まれな集中力で乗り越えるのだ。
「死ね!!」
錫杖を構えた大僧正が龍徳の胸元に突き立てようとしたその時!
「この・・・どす黒いオーラが・・・見えた!!ここだ~!!!」
最後に残された力を絞り出すように・・・生命力を絞り出すように渾身の右ストレートを大僧正に向けた。
「馬鹿め!先に死ぬのは貴様だ!! なっ!?」
その時龍徳の纏っていたオーラが右拳へと集まり光のオーラを纏った何かが打ち出された。
「ば・ばかな・・・そ・・・それは・・・」
その光と共に大僧正の姿が消え去って行く。
「クッ! 気配が消えた・・・や・やったのか?」
血の入る目を袖口で拭い去ると目を細めて周囲を見渡す
「炎の周りが速いな・・・どこかで目を洗わないと・・・本堂には足しか・・・水があったはず・・・これだ!」
そうして、頭から水を被り傷と目に入った血を流していく。
「血はどうやら止まったようだな・・・ってヤベ!火の勢いが・・・不味い・・・カナメの蔵にも飛び火するかも・・・カナメ!!」
その後、助け出したカナメを背をって竜禅寺から逃げた事で事なきを得たが、当たり前の様に次の日、世間を賑わすニュースとなった。
ただ、不思議な事にこの火事で焼身した人間が一人もいなかったのである。
■決戦一日前
明日の決戦を控え朝から一人黙々と魔道具を作りづづける龍徳の姿があった。
「ふぅー・・・後少しで完成しそうなんだがな・・・まだ何か必要な要素がありそうだ・・・」
龍徳はこの数日間魔道具を作っては小人国の入り口へと向かい何度も試行錯誤を繰り返していたのだ。
「龍聖が寝ている間にもう一度行ってみるか・・・」
そう言って椅子から立ち上がるとベッドで寝ていたはずの龍聖が突然目を覚ました。
「むにゃむにゃ・・・zzz」
寝ぼけているだけでまだ起きた訳ではなさそうだ。
「ヤバい!静かに・・・静かに・・・そぉーっと・・・」
服を着替えようと持ち上げた時、またしても龍聖が動き出した。
「むにゃむにゃ・・・んん~! パパ・・・むにゃむにゃ・・・大好き・・・」
「我が子乍ら凄い察知能力だな・・・。」
そして、そおーっと着替え終え身支度を済まし扉を開けようとした時・・・
「ぱぱ!どこ行くの!」
今度は、パッチリ目を開いて恨めしそうに龍徳を見つめている。
「ウッ!起きちゃったのかな♪」
「ぱぱ!どこ行くの!!」
「ちょっと散歩に行くだけだからもう少し寝てなさい♪」
「嘘は・・・メッ!」
「グハッ! な・なんで嘘だと思うのかな?」
「パパがお散歩じゃないから!」
「えっと・・・何でそう思うのかな?」
そう言いながら愛しの我が子の傍に行き頭を撫でようとしたら
「ヤッ!」
そう言って布団の中に潜ってしまった。
「龍聖君~なんでかをパパに教えてよ~」
するとモゾモゾ布団から顔を出す。
「そう言う魔法を使ったから!」
そう言ってまたしても布団の中に
『そう言う魔法って何!?』
「えっと・・・龍聖君の何かの魔法でそう思ったのかな?」
そして、またしても布団から顔を出す。
『可愛いなぁ~♪』
「龍聖君も連れて行ってくれるなら教えてあげる」
そう言って龍徳の顔をジィーっと見つめている。
「うっ! つぶらな瞳が・・・」
「嘘は・・・メッ!」
「あぅ! はい・・・ごめんなさい・・・」
「ぱぱ! 龍聖君も連れて行ってくれないなら!もう口きかない!」
「グハッ!わ・分かった・・・じゃ~龍聖君もパパと一緒にお出かけしようか♪」
龍徳の言葉を聞き一気に布団から飛び上がる。
「やった~!キャッホォ~♪ おっでっかけっ♪ おっでっかけっ♪」
「フフ♪ さあ~じゃ~お着替えして顔洗って歯磨きだ♪」
「は~い♪」
そう言って洋服を着替えさせて洗面台で顔を洗い終えると歯ブラシに歯磨き粉を付けてから龍徳のいるベッドに戻ると龍徳の膝にチョコンと頭を乗せてイィ~っと口を開く。
「はいはい♪」
そう言って龍聖の歯磨きを龍徳がし始めた。
『龍聖の面倒を見るのも幸せだな~♪ 何て可愛いんだろう♪』
歯磨きが終わり2人きりで食事をしていると龍徳の心が満たされていく。
最愛の息子と幸せの時間・・・
「龍聖君♪ パパのところに生まれて来てくれて本当に有難う♪ パパは幸せだよ♪」
「ウフフ♪ 龍聖君も~♪ でもパパとはず~っと一緒って言ってくれたでしょ♪」
子供だからなのか言っている意味が分からない。
「ん? そうだね♪ 龍聖君とはず~っと一緒だよ♪」
「うん♪ 前のパパも大好きだったけど今のパパもだ~い好き♪」
またしても意味不明な言葉・・・
「ん? 前って何年前の事? 5歳? それとも 4歳位の事かな?」
「ううん もっと前♪」
「もっとって・・・2,3歳の頃の記憶がまだあるのか?」
「ううん♪ もっと前だよ~♪」
「もっと前って・・・1歳か? 本当か?」
「ウフフ♪ 生まれた時もだけどもっと前だよ♪」
ここまで言われ流石に驚き始めた。
『そう言えば極稀に胎児の記憶を持って生まれる子供がいると聞いた事がある・・・』
「龍聖君・・・まさかママのお腹にいた記憶もあったりするのかい?」
半信半疑ではあるが、何故かあり得るのではと考え始める龍徳
「うん♪ ママのお腹の中って温かくってと~っても幸せなの♪ ママもパパも優しく声をかけてくれて龍聖君全然怖くなかったんだよ~♪」
「ほ・本当に? 本当に覚えているのか?」
いくら溺愛している我が子であっても俄かには信じきれない・・・そこで
「その時に覚えている事があったらパパに教えて貰えないかな♪」
「ん~・・・」
『流石にそこまで覚えている訳がないか・・・』
「えっとね~ いつだか分かんないけどパパがね~火事があったって話してた♪」
その言葉に目を見開いて絶句する。
「あとね~パパがいない時に大きは蜂さんが来てママが怖がってたの・・・その後、ママが大きな蜂に刺されて可哀そうだったの・・・ボクお腹の中でママ痛いの?ママ大丈夫?って心配したもん・・・」
「なっ!」
この話を龍聖が知っている訳がない・・・
否・・・今では龍徳以外に知っている者はいない。
当然、龍聖には母の死について話した事などないのだ。
「なんで・・・」
何で知っているのか・・・
そう聞こうと言葉が漏れるが、龍聖が思い出す様に次の記憶を声に出し始めた。
「だからボクもママを守りたかったんだけど何も出来なかったの・・・」
今にも泣きそうな顔でションボリとしている龍聖を抱きしめる。
「もう良い ゴメンな龍聖・・・悲しい記憶を思い出させてしまったね・・・」
ヒックヒック泣く我が子を優しく抱きしめる。




