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小さな小さな 大冒険!!  作者: 神乃手龍
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小さな小さな 大冒険!73


魔力で身体強化するにしても限度がある。

だからこそ、アキ達3人の修行に巨人化の指輪を作る事になったのだが・・・


話が逸れたが、巨人族と言われる俺達が小人化すると力と速さ、攻撃力と防御力・・・防御力とは皮膚や骨の硬さと言い換えても良いかも知れないが、40分の1以下にならないのだ。


多少のばらつきがあったが、龍聖君に至っては小人化しても4分の1程度だったのだ。

まぁ・・・5歳の子供だからそこまで早く走れないし力もないが、それでも通常の小人族の5倍以上の能力と言ったところだった。


その状態で、自由自在に魔法を扱う龍聖を見ていたら、どんなに敵が強かろうと魔物でない限りは、子供同士のケンカ程度の傷で済むだろうと判断してしまった。


実際、ナツ達を鍛えた理由が魔の森を超える為の戦闘力を身に付ける為の物だったのだ。

正直、魔の森さえ抜けてしまえばどうにでもなると考えていた。


多少は戦闘になると思っていたが、俺達の相手が務まる訳がないと思っていた。

だから相手が剣を持っていたとしても剣など使う訳がない。


万が一殺してしまえば生涯の汚点となってしまうだろう。

そんな事を我が子にさせる訳にもいかない。

一般兵程度であれば拳を繰り出す風圧だけで制圧する事が出来た。


ところが、陰邪石によって凶悪な化け物が現れただけではなく龍まで登場したとなれば話が違う。

あれ程の一撃を龍聖が掠りでもしたら場合によっては致命傷になりかねない。


まあ、龍聖の場合は4属性の完全融合・・・オッと!龍聖君曰く『カッコいいからパーフェクトフュージョンって名前にしたの♪』・・・だった。


ハッキリ言って子供だからと侮る事は出来ない。

場合によっては俺より強いかも知れない。

そう思う程4属性のフュージョンは完ぺきな防御、完璧な速度、完璧な攻撃力、完璧な治癒力を備えている。


実は隠れてコッソリ練習している事は龍聖君には内緒である。

それは、兎も角! 最悪を考えると龍聖の事が心配で仕方がない。

だからこそ今からでも自分の親に預けた方が良いと判断したのだ。



「パパも龍聖君といつでも一緒が良いんだけど・・・この先本当に危険なんだよ・・・

だからおじいちゃんのところで待ってて貰えないかなぁ~?」


「いぃ~やっ!」

「そんなこと言わないで・・・ねっ?」


「やっ!」

「帰ったらいっぱい遊んであげるから♪」


「・・・・・やっ!」

『ちょっと心が揺らいだな♪』


「じゃ~遊園地に連れて行ってあげるから♪」

「ん~・・・・・やっ!」


『もうひと声だな♪』

「じゃ~キャンプにも連れて行ってあげるから♪」


「やっ!」

「なんで~? 前にキャンプしたいって言ってたじゃないか?」


「キャンプは一杯したから良いの!」

「そ・そうだった・・・良く考えたら・・・此処に来るまで毎日キャンプしてたんだった・・・」

『ほのぼのしたキャンプじゃないから忘れてた・・・』



「パパ・・・龍聖君の事嫌いなんだ・・・」

「なっ! ななななな・・・何でだ? パパが龍聖君を嫌いになるなんて宇宙が反転しても有り得ないからね?」


「だったら龍聖君を置いていかないで! パパがいないと寂しいの・・・」

可愛い目に涙を浮かべてションボリし始めた。


「なぁ~!! わっ! 分かった!」

『馬鹿か俺は・・・母親がいないから寂しい思いはさせないって誓ったんじゃなかったのか?・・・』


目を伏せて唇を噛みしめると自分の手で自分の頬を叩く。

「ゴメンな龍聖・・・」


母親の分も愛情を注ぐ・・・

我が子に悲しい思いは絶対にさせない・・・


生まれて来た我が子と生まれて来た我が子を抱きしめる事さえ出来ず無くなってしまった妻に誓ったのだ。

絶対に子供を寂しがらせない!

絶対に子供を不安にさせない!


そう誓って今まで来たのだ。

その龍聖が龍徳の前で見せた事のない悲しそうな顔を浮かべている。


『馬鹿だ俺は・・・龍聖の為に・・・龍聖を守れる強さが欲しくて鍛えて来たんじゃなかったのか?』


目の前の最愛の息子を優しく抱きしめると

「ゴメンな・・・龍聖・・・」


その瞬間、堰を切った様に龍聖が大声で泣き始めた。

「ゴメン・・・パパが悪かった・・・」


泣きじゃくる我が子の背中を優しく叩くと

「パパが必ず守るから・・・一緒に行こうな♪」


「エ~ン・・・パパと離れたくないぃ~・・・ウェ~ン・・・」

「ゴメン・・・」


「ヒック・・・ヒック・・・パパと一緒にいても良いの?ヒック・・・」

「ああ♪ パパが必ず守ってあげるから♪」


「ヒック・・・龍聖君が邪魔なんじゃないの?」

この言葉に胸が張り裂けそうになる・・・

この歳で自分が邪魔だと思ったのだ・・・


自分の命より大事な我が子がどれ程、傷ついたのか・・・

「龍聖君が邪魔な訳ないだろう♪」

「ほんとう~?」


努めて明るく言葉を返したものの

『俺が弱いから・・・』

「ああ♪ パパには龍聖君が必要だよ♪ 龍聖君がいないとパパは生きて行けない♪」


「フフ♪ 龍聖君もぉ~♪」

「そうか♪ じゃ~パパと一緒に行こうな♪」

「あいっ!」


『何があっても龍聖は守る・・・何があっても・・・必ず・・・』


そして、3日後・・・決戦の日を迎える事となったのだった。





■SIDE:レイナ&ナターシャ


「ナツさん・・・この戦いが終わったらどうするの?」

「終わったら・・・」


その言葉にナツは遠くを見つめて何やら考え込んでいる。

「ナツ・・・さん?」


「あっ! ご・ごめんなさい・・・」

「どうしたの?」


「いえ・・・正直この戦いが終わるなんて考えた事もなかったから・・・」

「そうなんだ・・・」


「ええ・・・実際、レイナさんや龍徳様がいて下さらなかったら・・・そっか・・・3日後の決戦が終われば元通りになるのよね・・・」


「フフ♪ どうしたの?ポカ~ンとした顔をして♪ ナツさんが珍しいわね♪」

「だって・・・味方なんていないと思っていましたから・・・それなのに・・・戦いの終わりが見えて来たなんて・・・」


「そっか・・・良く考えたら当然よね~ 国家を相手に戦いを挑むなんて・・・普通なら不可能ですもんね♪」

「ええ・・・龍徳様が言う事を信じて・・・龍徳様の言われた通り付いて来て・・・気が付いたら・・・」


「フフ♪ 神谷部長なら当然かも♪ あの人には本当に不可能って言葉が無いんじゃないかと何度思った事か・・・」


「そ・そうでわね・・・レイナさんは龍徳様の姿を見て来られたんですものね・・・」

「ええ♪ 何十人と集まって知恵を絞った事も部長が一人で考えた事に及ばない事など卒中だし・・・あぁ~見えても神谷部長って元々喧嘩も強かったからなぁ~♪」


「喧嘩ですか?」

「うん♪ 喧嘩♪」


「龍徳様が喧嘩するなんて・・・ちょっとイメージが湧きませんわ?」

「フフ♪ 弱いものを守る時によ♪」

懐かしむようにレイナの頬が緩む


「ははぁ~弱いものってレイナさんの事ですね♪」

「うん♪ 昔ね・・・昔って言っても数年前だけど・・・私がまだ部長の部下になる前の事なんだけど・・・」

いつものキリっとした顔ではなく龍徳といる時だけ浮かべる笑顔で語りだした。


「仕事が終わって家に帰ろうとしていたら街中で質の悪い奴らに言い寄られた事があるのよ」

「レイナさんは綺麗ですから殿方が放っておかないのでしょうね♪」


「願い下げよ! だから当然シカトしてたんだけど、私の態度が気に食わないって頬をぶたれ、脅された事があるの・・・」

「酷い!・・・女性の頬をブツなんて・・・」


「でしょう! 困り果てて周りに助けを求めたんだけど・・・」

「誰も助けて下さらなかったのですか?」


「ううん・・・何人か助けてくれようとして止めに来たんだけど相手の人が強かったのよ・・・」

「まぁ~」


「アッという間に倒されて・・・私も強引に連れ去られそうだったんだけど・・・」

「ははぁ~ん♪ その時に助けてくれたのが龍徳様だったって事ですね♪」


静かに目を閉じてコクンっと頷く。

「フフ♪ カッコ良かったなぁ~♪ もぅ~これ以上ないってタイミング♪」

そう言いながら妄想の中へと旅立っていく・・・





「こっち来いアマ!」

「誰か助けてよ!」


「ハッ♪ お行儀が良いから目も合わさねぇ~よ!」

「誰かぁ~!」


「うるせえな・・・落としちまえ!」

「そうだな♪ オラッ!!」


一人に羽交い絞めにされもう一人のやくざ風の男がレイナの鳩尾にパンチを入れようとした瞬間

「おいおい・・・公衆の面前で何をやろうとしているんだ?」


来るであろうパンチの衝撃が襲ってこない・・・恐る恐るレイナが目を開けると目の前に龍徳の姿があった。

『この人知ってる・・・入社して3ヶ月でメチャクチャな成績を上げた人だ・・・名前は~確か・・・』


殴り掛かった拳を平然とした顔で受け止める龍徳の姿があった。

「なんだテメェ!」


「俺か? 俺はこの子の・・・この子の・・・同僚か?」

「はぁ? 知らねえよそんな事!」


「ど・同僚です!」

「だそうだ♪」

クスっと笑いながら相槌を打つ。


その瞬間やくざ風の男のもう片方の拳が龍徳を襲うが

「おいおい・・・イキナリ襲い掛かって来るって・・・脳みそついているのか?」

サッと華麗に拳を躱すとよろめいた男の背をポンと押しだけなのに相手が吹っ飛んでしまった。


「大袈裟な奴・・・さぁ~その子を放してもらえるかな♪」

「何しやがったテメェ~!」


「何しやがったって・・・見てただろう? 勝手に吹っ飛んだ♪」

「嘘言え!」


『嘘言えって・・・会話にならないな・・・しょうがない・・・』

倒れた相手に一瞬目を向ける。



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