小さな小さな 大冒険!62
「そう言えば、そうでしたわね・・・それと性格・・・ですか?」
「ああ♪ 疑問に思ったら解明しないと気が済まない・・・厄介な性格だよ♪」
「それで、魔法の原理を解明されたと?」
「全てではないけどね♪ お陰で、基本属性の精霊だけでも大半の魔法が使える事が分かったよ♪」
「は・はぁ?」
「フフ♪ 言葉で言うのは簡単だけど分からなくても当然かもな♪
例えば、ウォーターボール!!」
そう言ってナツの前に水球を浮かべる。
「この水球の原子・・・正確にはマナだけどね♪ これを高速で加速させていくと・・・」
すると水球の中からグツグツと泡が立ち始める。
「この状態は火属性を使っているのでは?」
「最初は俺もそうしてたんだけどね♪ 原理が分かったら炎も氷も同じ熱魔法・・・本来区分けされる魔法ではないんだよ♪」
「そうだったんですか・・・」
ナツの知識が音を立てて崩れていく。
「さらに! 加速させると!!」
そう言って魔力を注ぐとともにマナをコントロールすると・・・
水球の一部から凄まじい量の煙がモクモクと立ち上って行く。
「ちょっと面白い事をするから、ちょっと離れていてね♪」
そう言われて龍徳の右後方へと移動すると頭上に先程の水蒸気が雲の形を成して浮かび上がっていた。
「へっ?」
「フフ♪ 驚くよね♪ 水蒸気となってもマナが消えた訳じゃないから魔力操作のレベルが高くなると水蒸気となったマナを雲に変える事が可能なんだ♪」
「全く・・・気にした事もありませんでした・・・」
「だろうな♪ で、ここからが複雑なんだが・・・・」
そう言って両手に魔力を込めて雲に新たな魔力を注ぐとガツン!ゴツ!っと音が鳴り響きだした。
「龍徳様・・・今のは?」
「これは高さが低いから風魔法で落ちて来ない様にフォローしながら雲の温度をどんどん下げて雲の中に氷を作って、それを雲の中で高速でぶつけ合っているんだ♪」
「何でその様な事を・・・あら・・・先程より雲が大きくなったような・・・」
ナツの目には高さを増していく雲が目に映る。
「良く気が付いたね♪ さっきの水球への水は常に補充し続け同時に水蒸気へと変換。
さらにその水蒸気を雲へと変換。本当であれば風さえも熱魔法で起こせるんだが、今回は省略♪
こうして、雲の中の密度を上げていきながら何百何千もの氷の粒をぶつけ合うと・・・」
そう言って目を雲に向ける龍徳に釣られナツが上を向くと
「こ・これは雷雲!!」
その瞬間、規模が小さいだけで雨雲の中でピカピカと小さな光を放ち始めた。
「最小限の威力にしているから、この雨雲ではこれが限界かな♪ それでも・・・こうすると・・・」
そう言って魔力を込めた人差し指を雨雲から大地へと落とした瞬間。
「なっ!!」
ピカッ!ゴロゴロごろズドーン!っと空気を切り裂く雷の音と共に小さな雷が落ちたのだった。
「面白いだろう? 魔法名ではなく魔力の完全操作だから魔法名が存在しなくとも魔法を使う事が出来る。
まぁ~弱点は時間が掛かるって事だけどね♪それも練習次第で早く発動させる事も可能だと思う。」
「うそ・・・」
「驚いたようだね♪ まぁ~実際には魔法名で発動した方が圧倒的に戦闘では有利だけど・・・原理を知ってさえいればただのファイアでも凄まじい威力になる。」
そう言って今度は目には見えないが純粋なマナの球を空中に浮かばせるとどんどん加速させ始めていく。
「今度は、マナを加速させる・・・さらに・・・さらに早く・・・すると・・・」
ボッ!っと空中に炎が突然出現したのだった。
「そ・そんな・・・」
「この炎は当然マナで出来ているから・・・魔力を注ぐ限り炎が消える事はない・・・だから魔力の供給を増やしながら・・・マナを加速していくと!!」
ブワッッと炎が一気に拡大すると共に色が変化していく。
「なっ・何て熱・・・」
そして、青白い炎がナツの前に浮かび上がる。
「さて・・・この原理を理解して使いこなす事が出来ると・・・ファイア!」
大き過ぎると威力があり過ぎてシャレにならないと思った龍徳が10㎝程度の小さな炎を放つが
「うそ・・・何て威力なの・・・」
青白い炎が火炎放射の如く噴き出し辺り一面を一瞬で消し炭に変えてしまった。
「これが・・・ファイアなんて・・・」
「これは、魔法名を唱える前に何倍もの魔力を練っておき、さら炎の状態を魔力操作でイメージしてからじゃないとこうはならない♪」
「要するに先程の私との模擬戦で龍徳様は常にこの状態で魔法を使っていたと?」
「まぁ~そう言う事だね♪ ナツは強くなりたいんだったね♪」
「えっ? は・はい!」
「だったらナツの魔力を操作してあげるからちょっとおいで♪」
「へっ? は・はい!」
恐る恐る龍徳の懐によると後ろから両手を握られる。
『うぅぅ~心臓がドキドキする・・・』
「良いかナツ・・・先ずは魔力をこんな感じで・・・」
『あぅ・・・私の中を龍徳様が・・・ンン♪』
「す・凄い・・・」
「今から放つのは只のアイスだ。」
「はい!」
「イメージは直径10メートル以上のアイスが上空から地面に向けて放たれるイメージ・・・それを描きつつマナを操作する・・・」
「ああ♪・・・クゥゥゥ~♪ 凄い・・・アン♪・・・凄いです・・・」
『何でいつも色っぽい声を出すんだろう・・・マジで変な気持ちになるから勘弁してほしいな・・・』
「コホン! これだとイメージに程遠いもっと魔力を注ぐぞ!」
「ハァ~ン♪ クゥ~ す・すごい・・・」
「イメージは出来ているかナツ?」
「はぁはぁはぁ・・・はい♪」
身体を小刻みに痙攣させてはいるが必死で龍徳に応える。
「準備は良いか? もう行くぞ!」
「ハン♪ 行く・・・はい! 行って下さいまし♪」
『なんか卑猥に聞こえるが・・・』
「じゃぁ~行け! 魔法名を唱えるんだ!」
「アン♪・・・いく・・・いきます・・・」
『えっと・・・エロ過ぎるんだけど・・・』
「アイス!!」
その瞬間! 上空に巨大な氷塊が出現すると同時に中心に向け落ちていく。
その破壊力は周囲の木々をバキバキバキッ!っと砕きながら地面にクレーターを残す。
「はぁはぁはぁ・・・こ・これが・・・アイスなのですか?」
「アイスの魔法でもこれ位の事は出来るって事だ♪ 分かり易かったと思うが・・・どうだ?」
「はい・・・龍徳様の魔力が私の中を駆け巡っています・・・こんな複雑な魔力操作をされていたとは・・・」
「まぁ~最初っからこんな感じだったからもう慣れちゃったけどな♪」
「でも・・・これを極めさえすれば・・・」
「そうだね♪ 氷属性勝負では俺は絶対にナツに勝てないだろうね♪ ナツなら出来るよ♪」
その龍徳の言葉にナツの目が輝きを取り戻す。
「はい!」
「レイナ君にも同じ様な事を教えたんだけど・・・この方法は新しい魔法なんだろうね♪ だから俺はこの方法に名前を付けようと思うんだけど♪」
「はい♪ それは素晴らしいと思います♪ それで何と名付けたのですか?」
「ハハ♪ ちょっと恥ずかしいんだけど龍聖君の見ていたアニメにあった言葉を借りて・・・」
「この魔法は・・・トルゥース魔法 アルファ―オメガ・・・魔法の真理を最初から最後まで突き詰めた龍徳様から教わった究極の魔力操作ですわ♪
「トゥルース?・・・真理?」
「あっ!これは話したらダメだったんでしたっけ?」
「知らないわよ!そんな事!」
「申し訳ありませんが、内緒にしておいて頂けますか?」
「ハッ♪ 黙っていても良いけど・・・」
「まぁ~♪ それは助かりますわ♪」
「私が此処から逃げ出せなかったらね! アイスブリザードランス!!」
「そんな・・・・・方法で良いのでしたら・・・真理魔法!オメガブリザード!!」
氷帝ジーンの放った巨大なランスが加速し回転しながらナツに襲い掛かるが、途轍もない規模の破壊のブリザードが全てを飲み込み押し潰す。
「ギャァァァ~!!」
ピキッピキッピキッとジーンが凍り付きやがて一つの氷像が出来上がった。
「う~ん・・・この魔法は威力が強過ぎるのが弱点ですね・・・生きていれば良いんですけど・・・」
その頃、龍徳と龍聖は・・・
「さて・・・龍聖君は心配だけど・・・」
そう言って後ろを振り返るとスッカリヒーローごっこを楽しむ龍聖の姿があった。
「悪は絶対に許さない!」
「「ふざけるなチビ!」」
「チビじゃないもん!」
「「「「「どう見てもチビだろう!!」」」」」
「ムムゥ~! こうなったら!合体! ジャジャァ~ン♪ 龍聖王!!」
「既に合体してるぞ龍聖!」
「そうだよぉ~」
龍聖のセリフに精霊達もツッコミを入れる。
「う~ん・・・だったら龍聖王じゃなくって真龍聖王になるよ!」
「「「「えぇ~大丈夫?」」」」
『なに?・・・真龍聖王って・・・? パパ興味津々なんだけど・・・』
普段は大人な龍徳も龍聖には驚かされっぱなしなのだ。
精霊達さえも驚いているところを見ると自分の想像を超えるものだと容易に想像が付いたようだ。
「大丈夫♪ パパに魔力を増やして貰ったから♪」
「「「「そうなの?」」」」
『そうなの!? その為にあんなに頑張ってたの!?』
「だから行くよ~♪ 変身~♪ 真龍聖王♪」
「「「「おぉ~!!」」」」
すると前回の部分的な融合ではなく全ての精霊が龍聖の身体の中へと入って行った。
「何がしてぇ~んだ!このチビ!!」
「子供を殺すのは後味が悪いがかまいやしねぇ~!!」
そう言って荒くれ共が龍聖へと襲い掛かる。
が!
「なっ!?」
『なっ!? 大丈夫とは思ったが・・・何だ・・・あの姿は・・・』
そこには、精霊が鎧の姿となって合体した龍聖の姿があったのだった。
イメージ的には自分の身体より一回り大きいロボットを纏っている様な感じである。
身長110㎝程度の龍聖の姿が160㎝程度の大きさとなって居る。
兜の角を合わせれば170㎝程度に見えてしまう。
そして、左右の籠手の部分に小さな盾が付いていて、その盾から80㎝位の炎の剣と氷の剣が突き出していた。全体的には黒を基調としている事から闇属性が防御の中心となっているのかも知れない。
「「「「「なんじゃそりゃぁ~!!」」」」」
『なんだそりゃ~!! ヤバい・・・時間がないんだけど・・・目が離せない・・・』
その時、龍徳の方へと龍聖が目を向けた。
「パパ メッ!だよ!」
「オッと・・・そうだった・・・じゃ~パパ行くぞ♪」
「あ~い♪」
「信じらんねぇ~あの親・・・子供を置いていきやがった・・・」
「だったらコイツを捕まえれば!」
そう言って無造作に龍聖を鷲掴みにしようと襲い掛かると
「クフフ♪ この盾ねぇ~♪ ドォ~ン♪」
それを盾で防ぐのかと思えば敵が触れた瞬間爆風が渦を巻き遠くに服とばされたのだった。




