小さな小さな 大冒険!61
それは、レイナが精霊融合を覚えた後の話だ。
「雷って一直線に相手を攻撃するだけじゃないですか? 威力は強いのに勿体ないですよねぇ~」
「ふむ・・・流石はレイナ君♪ 良い着眼点だ♪」
「そ・そうですか♪」
「うむ。 それが分かっているなら出来るかも知れないな♪」
「何がですか?」
「ふむ・・・その前に自然の雷と魔法の雷の簡単な違いは分かるかい?」
「違いですか?・・・あるんですか?」
「フフ♪ 大ありだよ♪ そもそも・・・魔法は魔力の量や操作で自由に魔法を操る事が出来る。
分かり易く言えばフォーミングと言えば伝わるかな?」
「あぁ~そう言えば命中精度の悪かったサンダーがフォーミングを追加したら相手に目掛けて落ちる様になりましたもんね・・・」
「そうそれだ。 要するに魔法とは、自然現象とは異なりいくつかの魔法を付与する事で変化させる事が出来る。それが一番の違いだろうな♪」
「なるほど・・・そう言えばそうですね♪」
「そこで、一番大事な事はイメージ力! 既成概念に捕らわれない自由な発想力が必要なんだ。」
「へぇ~」
「簡単に言えば龍聖君の魔法は俺でも驚かされてばかりだ♪」
「なるほどぉ~♪ 今の例えは凄く分かり易かったです♪」
「フフ♪ でだ! 結論から言えば、雷は必ず落ちるものにする必要はない♪」
「でも雷って・・・電気が流れやすい方に・・・ってこれは科学の話か・・・」
「そうそれだ♪ 魔法とはもっと自由なものだ。」
「でも難しくって・・・」
「ふむ・・・では、前みたいに俺がレイナ君の魔力を操作するからサンダーを唱えて貰えるか?」
「へっ? よ・宜しいんですか?」
「宜しいも何も感覚が分からないんだろう? それとも嫌か?」
「めめめめ・滅相もございません! どうぞ!どうぞ私の身体を自由にお使い下いさい!」
「自由にって・・・まぁ良いか・・・じゃぁ~手を前に出して♪」
「こうですか? ヒャッ!♪ な・なにを・・・」
後ろから抱き着くようにレイナの腕を取る龍徳。
「こうしないと俺に魔法が当たるだろうが?」
「そ・そうですよねぇ~・・・」
高鳴る胸の鼓動を隠す事もなく見る見るうちに顔が赤く染まって行く
新たな魔法の取得のための善意で龍徳がやっているだけなのだが、どんどん妄想が膨らんで行くようだ
「変な奴だな・・・じゃぁ~魔力を練ってサンダーを放ってもらえるか?」
「ヒャイ! こ・こうでしょうか・・・・」
「そうだ・・・」
「では、サン・・・」
「ストップ!!」
「へっ?」
「先ずこの状態の魔力操作だと一方個にしか魔力が流れていかない・・・分かるか?」
「えっと・・・あっ!・・・なるほど・・・」
「だから・・・この時・・・ちょっとレイナ君の魔力を操作するぞ♪」
「は・はい。・・・ヒッ!・・・ンン♪・・・あぅ・・・・」
「ちょっと我慢してな♪ 分かるか? さっきまで頭上から地面まで一直線に流れていた魔力を場に留める・・・」
「はぁはぁはぁ・・・場に留める?」
「こうだ!」
「あう♪」
「この状態でサンダーを唱えろ!」
「ハァ~ン♪ サ・サンダ~♪」
『何でそんなに艶っぽい声を出す必要があるんだ?』
「あっ!」
「ふむ・・・初めてにしては上々じゃないか?」
そこには空中に浮かび上がる光の玉があった。
「部長・・・これって・・・」
「そう!これが雷の玉・・・まぁ~サンダーボールと言ったところか♪」
「サンダーボール・・・」
「さらにこの状態で・・・もう一度魔力を操作するぞ! フン!」
「あぁ♪ 私の中がかき回されて・・・ンン♪」
「一々変な声を出すな!」
「だってぇ~」
「それよりも見ろ!」
そう言って先程のサンダーボールを指さす。
「見ろって・・・えっ?」
そこには、先程とは比べ物にならない程の大きさの光の玉が浮かんでいる。
「さっきは分からなかったけど・・・中でスパークしてたのね・・・」
「そうだ。エネルギーは一方向へ流れる性質を持つが、それを魔法で留める、
すると行き場を失った雷が球体の中で永遠に反射し続ける。」
「凄い・・・」
「これに、フォーミング・・・要するに小さな雷の動線を相手に撃てば・・・」
「フォーミング!こ・こうですか?・・・・あっ!?」
対象物とした一本杉に小さな雷が付いた瞬間。
球体のエネルギーが一気にそこへと引っ張られていく。
そして、球体が一本杉を飲み込むと凄まじい放電現象を引き起こした。
「なっ!?・・・なんて威力なの・・・」
「まぁ~当然の結果だろうな・・・あの球体の中で何千回と反射する雷のエネルギーを余す事無くぶつけるんだ・・・結果は・・・」
そう言って指を指した一本杉がプスプスと黒焦げになって燃え尽きていた。
「ただのサンダーであの威力・・・」
「そうだな♪ コントロールが難しいだろうが・・・身に付けたらレイナ君の最強魔法になるかも知れないな♪」
・・・
「この魔法は、ギガボルテックスボール・・・私の最強の魔法よ!!」
その瞬間、レイナからもう一本の雷の線がガガンへと伸びて接触した。
「・・・時間は掛かったけど・・・やっと身に付けたわ・・・フフ♪ 食らいなさい!!
フォーミングギガボルテックスボール!!」
5メートル以上もある雷球がガガンを飲み込むと目が眩むほどの放電現象が巻き起こる。
「こ・こんなもの・・・こんな・・・ギャァァァ~!!」
数十秒も続くスパークが終わるとスゥーっと収縮していく雷球の中から現れたのは、プスプスプスと黒焦げになったガガンの姿だった。
「さすがはレイナ様♪ お見事でございます!」
「ヤレヤレね。」
そして、時を同じくしてナツはと言うと・・・
「そ・そんな・・・」
「もう諦めなさい!」
周囲が凍土と化した世界に2人の姿がある。
「なんで・・・私は氷帝ジーンなのよ! 私より強い氷魔法使いなんて・・・いる訳・・・」
「少し前まででしたらもう少し苦労したかもしれませんね・・・。」
「クッ! 貴方・・・強いからって生意気だわ・・・」
「強い?・・・なまいき?・・・アハッ♪」
「何笑っているのよ!」
「クスクスクス♪ 笑ってしまってゴメンなさいね♪ ですが貴方に笑ったのではありませんわ♪」
可愛らしく笑っていたかと思えば、今度は優しい目に変わっている。
「だったら何なのよ!」
「いえ♪ 私がそう言われる程、強くなれたんだなぁ~って思いまして♪」
「それのどこが面白いのよ!」
「ジーンさんでしたね♪・・・先に行っておきますが、私などあのお方からすれば足元にも及びません。」
「あのお方?」
「ええ♪ 私に力を授けてくれた・・・私にとって掛け替えのないお方ですわ♪」
「それに、貴方が足元にも及ばないなんて・・・ちょっと話を盛り過ぎよ!」
「盛り過ぎ?・・・あぁ~そうかも知れませんわね♪」
そう言われて自分の言葉を思い出す。
「でしょうね。そんな化け物・・・」
「足元に及ばないどころ例え私が何百人いようが数分も持たないでしょうから♪」
「へっ?」
そんな強い小人など居る訳がないと言ったつもりだった一言だったのだが、ナターシャから帰ってきた言葉は、それ以上の答えだった事に思考が追い付かない。
「出来れば同じ小人族・・・大人しくして下さるのであればこれ以上は傷付けたくないのですが?」
「ハッ♪・・・氷帝と恐れられた私が・・・まさか私よりも上手がいたとわね・・・」
「では、負けを認めて下さいますか♪」
本当に同族を傷付けたくなかったのだろうナツの周りに花が見えるような気さえする。
「そうね・・・ですが・・・それは私の最強の魔法を攻略した時にね!」
「えっ?」
「魔力を全て使うけど・・・この魔法なら・・・ハアァァァ~!!
食らいなさい! 全身全霊の・・・ヘル・・・ブリザード!!」
白ではなく微かに青みがかった猛吹雪がナツを襲う。
「レイン! 力を借りますよ!」
「畏まりました。 ナターシャ様!」
「サクション!!」
その瞬間、氷帝ジーンの放った魔法がナツの魔法に吸収されていく。
「なっ!・・・一体何を・・・」
「残念ながら今の私には氷属性の魔法は効きません!」
「そんな馬鹿な・・・」
「お気持ちは分かります♪ 少し前まで私も同じ気持ちでしたから♪ この魔法は・・・」
そう言って少し前の龍徳との特訓を思い返す。
少し前の事・・・
「あ・有難うございました・・・。」
「うん♪ ナツも随分強くなって来たね♪」
そこには、龍徳に魔法戦闘の特訓を付き合ってもらうナツの姿があった。
「そうなのですか? とてもその様には思えないのですが・・・」
「そんな事ないって♪」
「ですが、私のアイスランスは当たり前の様に龍徳様のアイスで防がれ・・・アイスブリザードは吸収され・・・」
ナツがそう言うのも無理はない。
何故なら大精霊とはいえ氷属性の下位互換に当たる水属性しかない龍徳にあしらわれていたからであった。
「イヤイヤ♪ アイスブリザードも進化したし、凍てつく世界なんて小人状態でも凄まじい魔法になったよ♪」
「そうは仰られても龍徳様には何一つ通じませんので・・・」
「あぁ~・・・」
褒めているのに浮かない顔をしているナツが何に悩んでいるのかに気が付き話を続ける。
「前にも話したけど魔力をコントロールすれば水属性でも氷の魔法が使えるからね♪」
「それは教えていただきましたが・・・でも本来水属性より氷属性の方が上位になるハズ・・・ですが、結果はこのありさまですもの・・・」
「ふむ・・・以前誰に話したか忘れたけど・・・魔法と科学は別の物ではあるんだけど、同じ理屈を辿る事も出来る。 俺の水属性の魔法は、科学と同じ原理を使って発動しているから魔力の精度によっては氷属性に比肩するんだろうな・・・。」
「そうれは?」
「前にも話したかもしれないが、熱量とは原子の動きの速度の事だから科学では、その原子を加速させれば高熱を帯びるし減速させていけば氷になっていく。」
「そう言えばその様な事を以前聞いた気がします。」
「フフ♪ だが、魔法の原理は、原子に関係なく氷、もしくは炎って・・・否、正確には魔法の源であるマナが原子の代わりに作用しているんだけど、どの道科学とは違う現象だ。」
「なるほど・・・マナを加速、原則・・・あまり考えた事がありませんでしたわ。」
「そうりゃ~そうだろうね♪ 何せ魔法名を唱えるだけで現象として現れるんだから♪」
「でしたら何故、龍徳様は、その様な事までご存知なのですか?」
「ん~性格もあるけど・・・最初に覚えた魔法が無属性魔法だって知ったからかな?」




