小さな小さな 大冒険!54
「まさか貴族達も情報が筒抜けだとは思わないだろうなぁ・・・」
「じゃな・・・まさか盗聴する魔道具とは・・・」
「それにしても・・・いつの間にこんな魔道具を・・・」
『『『流石、帝王級の錬金術師・・・』』』
「「「ハハハハハ・・・・」」」
そんな白い目で乾いた笑いを上げながら小人たちが話し合っているとガチャっとドアの開く音と共に龍徳達が戻って来た。
「ただいまぁ~♪ 龍聖君帰って来たよぉ~♪」
「ただいまぁ~♪ はぁ~疲れたぁ~♪」
「コラコラ!股を開いて寝転がるな!」
「オホホホホ♪ 私とした事がお恥ずかしい♪」
「お帰りなさいレイナさん♪」
「ただいま♪ ちょっと面白い情報が手に入ったぞ♪」
「お帰りなさいませ龍徳様♪ こちらもちょっと怪しい会話になっていそうですわ」
「ほぅ~・・・どうんな感じなんだいアキ?」
「うむ・・・先程からフューラー様の話が頻繁に出ておるところじゃ」
「それとベンジャミン様とは違って3年前の事件の前後で性格が変わったらしいですわ」
「後はねぇ~ヤッパリ半年位前から姿を見せなくなってきたみたい・・・」
「ほぅ~・・・」
「今もその話の最中じゃな・・・今話を聞いている貴族はアルバン・スフレ・クェードと言う侯爵でフューラー様の右腕とも言われていたお方だから信用しても良いじゃろうな・・・。」
「なるほど・・・」
「もう片方は武器の町アルマの領主補佐であるミッシェル・エドワルドですわね。」
「ん? それってアルマの領主の右腕の様なものだよな?」
「そうですわね。」
「って事は、ミステーロの右腕とアルマの右腕が談話しているのか?」
「そうなりますわね。」
「だから話が怪しいんだよ♪」
「なるほど・・・」
「龍徳さんの方はどうだったの?」
「どうやら明々後日から3日間はミステーロのお祭りがあるらしい。」
「あっ!そう言えば・・・建国祭の時期だわ!」
「その場には、領主も顔を出すと話していたわよ♪」
「ちょうどこっちもその話になっておる・・・」
「どんな話になって居るの?」
「うむ・・・驚く話が出てきたな・・・」
その後も話を聞いていったアキが驚愕の顔をした事で、静かに成り行きを見守る事となった。
そして、盗聴用の魔道具を外したアキが俺達に語り始めた。それによると・・・
税収が上がり続け年々苦しめられて来た国民が限界に来ている事
武器の町アルマの領主であるゼグリッド・アルマが3年前の事件の後、謎の死を遂げていた事。
現状は、ソンメルの後任として商人都市パドロネの領主となったソーマ・グロリアスによって3都市が言いなりになっている事。
そんな状況下においても中立国家であるはずのミステーロの領主フューラー公爵が、ソーマ・グロリアスの言いなりで、国民に無理を強いている事。
アルケミーの話やベンジャミン侯爵がおかしくなった事も話していたが、割愛する。
ミステーロのアルバン侯爵とアルマのミッシェル伯爵は水面下でソンメル打倒に動いている事。
そして、建国祭の最終日に領主フューラー・ランド・レインベール公爵の抹殺を考えている事であった。
この話を受け危険ではあったが2人と接触を試みる事となった。
そして、最上階の602号室の扉をノックした。
コン!ココン! コン!ココン!
「ルームサービスは必要ないぞ!」
「生誕祭の打ち合わせに参りました。」
これは、アキ達が仕入れた合言葉であるらしい。
本来であれば建国祭なのだが、それを生誕祭と変えるらしい。
「生誕祭? 何かの間違いだな。」
「申し訳ございません。“誕生祭”言い間違えました。」
これは、革命軍として新たな国家を誕生させるとの合言葉らしい。
するとカチャと音が鳴った後、静かな声で
「入れ」
そして、恐る恐る扉を開いて中に入る
「オッと♪ イキナリ切りかかるとは♪」
龍徳が最初に扉を潜ると左右から同時に頭目掛けて剣が振り下ろされたのだった。
それを予知していたかの如くアッサリと手で鷲掴みにする。
「「なっ!!」」
「大丈夫だったかいナツ♪」
「ええ♪ 助かりましたわ龍徳様♪」
「何者だ・・・」
「そう身構えなくても大丈夫だ。ただ話し合いに来ただけだ。」
すると左右の兵士がもう一本の剣に手を掛けて再び切りかかって来た。
「入り口で騒ぎを起こすなよ・・・正当防衛だから許せ!」
そう言って左の兵士の剣をスッと身を半回転させながら左手で巻き込むように受け止めると同時にもう一方の剣を拳で砕きながら一人の兵士を部屋の端まで吹き飛ばした。
「!? グエッ・・・」
その流れのまま、左の兵士の左手を引き寄せながら殴り終えた右腕で肱を鎧に叩き込みながら一人目の兵士の上に投げ飛ばす。
この間、0.3秒の早業だ。
「なっ!! 今何をした・・・」
その言葉を無視してゾロゾロと部屋の中に入り込むと扉を閉めた。
「クソッ! ソンメルの手の者か! 何処で合言葉を・・・」
「それは企業秘密♪ だが、勘違いするな♪ 俺達は敵ではない。」
「敵ではないだと?」
「寧ろ仲間になるかも知れないな♪」
「何を言って・・・」
「アルバン・・・ミッシェル・・・久方ぶりですわね。」
「「!? 誰だ?」」
そう言ってアルバンと顔を見合わせる。
「ナターシャ様・・・変身を解かんと分かりませんぞ?」
「あら?私とした事が・・・」
そう言って指輪に触れながら魔力を注ぎ始めた。
「お・お主はアナーキン殿か?」
「間違いない・・・アナーキン・・・なっ!!」
スゥーっとナツの姿が元に戻って行く。
「バ・バカな・・・そのお姿・・・ナターシャ様・・・」
「誠にナターシャ様なのですか?」
「やっぱり苦労を掛けたようですね・・・」
「「生きておられたとは・・・」」
「私の話を聞いて貰えますね?」
「「ハッ!!」」
そして、ナツ達は3年前から今に至るまでを2人に話して聞かせていく。
その話に涙を浮かべながら聞き入る2人だったが、途中俺を見る目が気になった。
レイナも調子に乗ってまたしても俺の自慢話をするし、ハルやアキも便乗するもんだから初めて会った人なのに変な目で見られてしまった。
そして・・・
「話は分かりました。」
「まさかアルケミーのベンジャミン侯爵がその様な事になっておったとは・・・」
「だが、話をお聞きするにフューラー様も陰邪石を埋め込まれている可能性は高いであろうな。」
「そうですな。まず間違いないと・・・」
「なので、お2人にはフューラーに接触出来るよう手配して頂きたかったのですが・・・」
「申し訳ございません。 先程もお話した様に・・・」
「まさかミッシェル様が1ヵ月以上顔を見ていないとは・・・」
「今では、2人の騎士に話を通さねばなりません。」
「それって何とかキラーって2つ名が付いた騎士の事か?」
「良くご存知で・・・その通りです。フューラー様の部屋の前にアントキラーのゲイルとスタッグキラーのジョージが常に警護している状態ですな。」
「ふむ・・・城には忍び込めないか?」
「忍び込むのは無理でしょうな・・・」
「ですが、先程見た龍徳殿の力であれば忍び込むのは無理でも城に入る事は出来るかもしれませんな。」
「流石に大事になっちゃうんじゃない?」
「かと言って建国祭の最中って言うのもなぁ~」
「国民に被害が及ぶのであれば、城に攻め込む方が良いですね・・・」
「その場合、夜だから逃げられる可能性もあるし、そうなるとハル達の存在がバレちゃうんじゃない?」
「じゃが、建国祭の最中となれば多くの民がいる中での戦いになる事は必至であろうな。」
「ぱぱ~?」
「ゴメンな♪ お話が詰まらないよね♪」
「うん・・・お話が簡単すぎて詰まんない・・・」
「んん!? 話が簡単? えっと~どう言う事かなぁ~?」
『はぅっ! 龍聖君と喋っている部長も素敵♪』
「だって敵を逃がさなければ良いんでしょう?」
『確かに・・・敵を逃がさなければ話が漏れる事はないな・・・まぁ~それが難しいんだが・・・』
「そうだね♪ だから今はそれで悩んでいるんだよ♪」
「だったら橋を壊せば良いんでしょう?」
「んん!?・・・敢えて壊すのか・・・『子供の発想って凄いな・・・』」
「橋を壊す・・・確かにミステーロであればこその発想ですわね・・・」
「ハッハッハ♪ 確かにそれなら逃げられんが、我々も外に出れなくなっちゃうんだよ坊や♪」
「なんでぇ~?」
「何でって・・・あの橋を修復するとなったら物凄い時間が掛かるんだ♪」
「えぇ~? あんなの簡単に治せるよ?」
「「へっ?」」
「そ・そうですわ・・・今の私達であれば・・・」
「龍聖君天才♪ 流石はパパの子だ♪」
「ウフフ♪ 龍聖君パパみたい?」
「はぁ~♪なんて可愛い生き物なんでしょう♪ 龍聖君はパパそっくり♪」
「やったぁ~♪ パパと一緒♪」
『はぁ~ん♪ なんて可愛いの♪ 早く龍聖君のママになりたい♪』
「先程の話でナターシャ様達が凄まじい強さなのは分かりましたが・・・可能なのですか?」
「ええ♪ 恐らく15分程で修復可能でしょうね♪」
「ハハハ・・・予想以上でしたな・・・。」
「ですが、それであればこれ程、良い手はありませんな」
「こりゃ~盲点じゃったな・・・」
「確かに前だったら不可能だったもんね・・・」
「決まりましたわね・・・建国祭の最中に国民だけを逃がし・・・」
「あいつ等だけを閉じ込めるんだね!」
「じゃが、そのタイミングはどうすんじゃ?」
「それでしたら例年通り建国祭の3日目の朝にフューラー様の挨拶がありますので、夜中から朝方にかけて移動させれば可能でしょうな。」
「民衆の手引きはお2人に任せても宜しいですね。」
「「はっ!!」」
「決まりですね♪」
「ああ♪」




