小さな小さな 大冒険!!47
しかも風圧が尋常ではない!
攻撃を回避しても通過される度に吹き飛ばされてしまう。
突風ではなく竜巻のイメージだ。
バンバン魔法を使って応戦するも時速200㎞以上にもなる速度にかすりもしなかった。
以前デビルバットに使った結界も巨体を覆う事が出来ず、捉えたとしても簡単に結界を貫かれてしまった。
瞬間的に防げるストーンウォールも凄まじい鉤爪により簡単に破壊されてしまう。
スピードはなくなるが、そうすると凶悪な嘴による攻撃が始まるのだ。
体制を整える暇が無い程の連続攻撃に冷や汗がつたう。
人間のサイズでも危険な猛禽類・・・天空の王様
ゴールデンイーグル!
せめて巨大化して戦った方が良いのではないかと思うだろうが、小人の国は全部で3つの結界が張られていて“魔の森”からは、二重結界が張られている為、巨大化する事が出来ないのだ。
その為、襲われる寸前に全属性の魔法による弾幕で回避しつつ全力で逃げ続けていた。
それでも、ゴールデンイーグルの風圧は凄まじく50m位まで接近を許してしまう度に吹き飛ばされてしまった。
身体強化を掛けながら休む間もなく全員が魔法を討ち続けているせいか全員に疲労の色が見え始めた。
この先に三つ目の結界が張られているので、そこまで行けば追って来れないらしいが・・・その場所まで残り10㎞もある。
秒速2㎞だと大半の魔法の射程外だ。
雷の魔法であれば何とか攻撃を当てる事が出来るのだが、魔力を最大限に練っていない魔法では、殆どダメージが与えられない。
唯一ナツの“凍てつく世界”が有効であったが、攻撃を防ぐ程度だった。
「これは、仕方がないな・・・」
そう一人呟くと俺は、レイナに龍聖を預けた。
四人に全力で土魔法による囲いを作って隠れている様に指示を出し一人でゴールデンイーグルと戦う事を告げた。
当然、全員が反対したが、どんなに強固なストーンドームや結界であっても奴が本気になれば一溜りもないことは分かっている事だ。
「ですが、危険すぎます!責めて私も一緒に戦います!」
レイナが心配そうな表情を浮かべて口を開くが・・・
「それでは、結界の強度が足らないだろうな・・・兎に角!これ以上話している余裕はない!」
そう言うと半ば出来上がったストーンドームの中にレイナを押し込みその上から結界を張った。
ドンドンと俺が這った結界をレイナが叩く。
「安心しろ!俺に考えがある! その代り全力で結界を張り続けるんだぞ!」
その言葉が聞こえたかどうか・・・俺が這った結界の上にさらにストーンドームが構築されていく。
遥か上空まで飛翔したゴールデンイーグルが、その本性を現す。
上空からの最高速による攻撃だ。
恐らく、小人状態でのイメージではマッハ10と言った速度になる。
風圧だけでも近距離で喰らえば数百メートルは吹き飛ばされてしまうだろう。
「ふぅ~やれやれ・・・。流石に怖いな・・・」
これから先は、全力戦闘になる。
今まで俺は、自分の魔力による魔法しか使ってこなかった。
精霊の力を借りてしまえば想像を絶する威力が容易に想像できたからだ。
人間の世界で使ってしまえば大惨事になりかねない。
だから・・・
「流石に怖い・・・本気で戦う事が。」
そう呟くと四人の精霊を顕現させ命令を下した。
「敵を殲滅する!全員!俺に力を貸せ!」
「「「「おぉぉぉ~!」」」」
そして、最大限に膨れ上がった魔力を精霊達に注ぎ込む
歓喜に満ちた精霊達が俺に力を注ぎ込む
イフリートは“攻撃力”を
オン=ディーナは“回復力”を
シルフィードは“速度”を
グノム=アースは“防御力”を
先程まで上空200m小人状態で言うところの9㎞地点にいたゴールデンイーグルが俺目掛けて凄まじい速さで急降下している。
既に奴の射程距離内だ。
瞬発力が上がった事で、ギリギリで回避するものの凄まじい風の暴威が襲い来る。
シルフィーの加護で吹き飛ばされるのを回避すると
「うぉぉぉぉぉぉ~!」
次々と小石や小枝が大砲の様に襲い掛かってきた。それを両腕で次々と叩き割る。
小人状態での小石は、直径60cm以上
小枝は3m以上もの大きさだ。
もはや、攻城兵器と言った印象の弾幕が襲うのだ無傷で済むはずもない。
数十もの巨大な岩や木を叩き付けると俺の身体にも多少の裂傷によるダメージがあった。
「くそ!」
ゴールデンイーグルを睨み付けるとまたしても上空へ飛び上がり再び急降下による攻撃を仕掛けてきた。
それを今度は、ディーナの水障壁で防ぐ
「ギガントアクアフォール!」
ゴールデンイーグルの手前に現れた水障壁は、幅2㎞、長さ500mにも及ぶ滝の様ものだ。
圧倒的な水量により流石に飛び上がる事が出来ず徐々に地面へと落ちてきた。
地面にはゲリラ豪雨の何十倍もの水圧が襲い掛かるが、ディーナの加護により俺の周囲には一滴の水さえも届かない。
そして、ゴールデンイーグルがたたらを踏むかの如く空中でバサバサっと翼を振る。
突如として竜巻が巻き起こるが、俺の周囲をシルフィーに支えて貰う事で、吹き飛ぶ事はなかったが、周囲の小枝や小石が凄まじい速度で襲い掛かってきた。
「くっ!グノム!頼むぞ!ギガントゴーレム創生!」
魔法の発動と同時に大地に描かれる巨大な魔法陣より100mもの巨大なゴーレムが姿を顕した。
ガンガンとゴーレムに当たり俺に敵の攻撃は届かない。
羽ばたくゴールデンイーグルに向けグノムの巨大ストーンゴーレムで鉤爪を掴むと強引に地面に叩き付け・・・・・られなかった。
逆にストーンゴーレムの手首を鉤爪で掴み上空に飛翔を開始する。
さすがにストーンゴーレムの重さで速度が鈍っていたので、この好機を逃す事はなかった。
「行くぞ!シルフィー! スーパーストーム!」
俺が魔法を唱えたと同時にストーンゴーレムの手首が破壊されゴールデンイーグルが上空へと飛翔を開始した。
しかし、そのゴールデンイーグルの下から巨大な竜巻が発生し飲みこんだ。
幅300m高さ4㎞にもなる風速80mを超える巨大な竜巻に飲まれたゴールデンイーグルが風に抗う事が出来ず上空へと昇っていく。
その光景は、風の龍が天に駆け上がるかのようだった。
「シルフィー!次行くぞ! ダウンバースト!
上空へ伸びた風の龍が、今度は地表へと凄まじい速度で落ちてくる。
ドーン!と凄まじい轟音と共に突如として巻き起こる爆風。
ゴールデンイーグルの巻き起こす風どころではない。
草原とは言え木々も当然ある。
その木々を根こそぎ吹き飛ばし地表にクレーターを残した。
「よし!」
さすがにピクリとも動かないゴールデンイーグルに安心した瞬間
もう一羽のゴールデンイーグルが襲い掛かってきた。
「ぐぅぅっ!」
一瞬にして周囲が暗くなったので、ギリギリ躱したもののゴールデンイーグルの翼に触れてしまい数百メートルも吹き飛ばされてしまい流石に大ダメージを受けてしまった。
「グハッ!」
どうやら手足や肋骨が折れただけじゃなく肺にも突き刺さったようだ。
咳き込む自分の口元を手で拭うとべったりと血が付いていた。
「ディーナ!頼む・・・アクア・・・ハイヒール!」
擦れる声で、魔法を発動させると俺の周囲をゼリー状の液体が取り囲む
不思議な感覚だ・・・。
イメージだと・・・母なる海はこんな感じだろうか・・・。
その効果に我が目を疑う
あちこちにあった裂傷や打撲による痣、さらには骨折による痛みまでもがみるみる内に消えて行った。
僅か10秒程で、自分の手足を動かすと何処にも痛みが無くなっていた。
「やれやれ・・・。」
ディーナによる回復魔法がなかったら・・・死んでいてもおかしくなかった。
プチン・・・。
俺の頭の中で何かが切れた音が聞こえた。
「ちょっと・・・教えてやる必要がありそうだな・・・この俺に歯向かう事がどんな事なのかを!」
その瞬間、以前感じた感覚が再び起こった。
時間がゆっくりと流れ自分の体内を巡る魔力の一つ一つ細胞の一つ一つさえハッキリと分かるような奇妙な感覚・・・。
そして、最大に魔力を高め始める。
まるで、今までの状態が手抜きだったのかと思える程の圧倒的な魔力が溢れ出す。
「うぉぉぉぉぉぉ~!!!」
以前よりも大きくなった黄金のオーラを身に纏った。
二羽目のゴールデンイーグルがレイナ達の作ったストーンドームを凶悪な鉤爪でこじ開けようとしているのが見えた。
「ふざけるなよ・・・俺の子供に手を出すって事が・・・どう言う事なのかを今教えてやる!」
数百メートルもの距離を一足飛びで縮めるとその勢いのままゴールデンイーグルの脇腹目掛けて蹴りを放つ。
「スパイラルシュート!」
自分の身体を極限まで高速回転させインパクトの瞬間弾丸の様に捻りを加えて叩き込む。
バゴ~ンっと轟音を立てて吹き飛ぶゴールデンイーグルに追撃する為にストーンドームの壁を蹴る
樹木に叩き付けられ地面に横たわるゴールデンイーグルの眉間に拳を叩き込む
「イフリート!行くぞ! インフェルノブロー!」
右腕に纏う地獄の業火を最高速度と強化状態による腕力で叩き込む
メキッ!ベキッ!グシャッ!っと嫌な音を響かせながら龍徳の拳がゴールデンイーグルの眉間に突き刺さった。
拳を引き抜きながら後方へ跳躍した瞬間・・・
ゴールデンイーグルの眉間から青白い炎が巻き起こり消し炭に変えていく。
「馬鹿が!鳥の分際で歯向かうとは、俺の命である龍聖に少しでも危害を加えた事は許されない。」
スタスタっと歩いて龍聖達のドームに向かうと俺の周りにいた精霊達がビクビクとしていたので、声を掛けた。
「みんな・・・本当に助かったよ♪ ありがとうな♪」
俺は、四人の精霊に頭を下げた。
「頭を上げてくだされ主よ!」
「そ・そうだよ!当たり前の事をしただけだからね!」
「ご主人様のお力になれたんだったら私達は本望ですからね?」
「龍徳カッコ良かったよ♪」
「クスクスクス♪ そうか?でも・・・ありがとうな♪」
そして、龍徳の言葉に満足した精霊達は姿をゆっくりと消していった。
ドームに近づくとドームの横に大きな穴が開いていて驚いた龍徳が表情を変えて覗き込んだ。
「大丈夫か龍聖! みんなも怪我はないか!」
何重にも張られた結界とドームの大半が崩壊していたが、一番内側のドームだけは無事だった。
「ふぅ~・・・焦った~」
そして、龍徳がドームに手を当てると全ての防御壁が消えて行った。
「パパぁ~♪」
龍徳の事が心配だった龍聖がトタトタと駆け寄ると両手を上げて抱き着いた。
「パパァ~怖かったぁ~ エ~ン エ~ン」
泣きじゃくる我が子を愛おしそうに抱きしめながら優しく頭を撫でると徐々に落ち着きを取り戻したようだ。
周りを見るとレイナ達の無事な姿が見えホッと一安心したのだった。
ゴールデンイーグルがどうなったのかを興味津々でレイナが聞いてきたので、2羽とも倒したと伝えると四人共メチャクチャ驚いていた。
当然の事だろう。
一羽でも凶悪な魔物が2羽いたと聞きさらに、それを2羽とも倒したのだ。
周囲を見渡す四人が、変わり果てた景色を呆然と眺めていた。
辺り一面に水溜まりがありあまつさえ川まで出来ている。
大地の至る所に亀裂が入っており巨大なクレーター迄出来ていた。
周りにあった木々が全てなくなっており離れた場所には、巨大なゴールデンイーグルが横たわっていた。
反対側に目を向けると恐らくもう一羽のゴールデンイーグルであったであろう物体が消し炭となっていた。
四人はゴールデンイーグルが防御壁をこじ開けようとしていた事に気が付いていたが、一際凄まじい打撃音が起きたのは、龍徳によるものであろうと思っていたが、決して口に出す事はなかった。




