小さな小さな 大冒険!! 37
タコは、レイナとナツが気持ち悪がったので、そのままクーラーボックスの中に入れ後で親父に上げる事にした。
イカは、イカソーメンと柵切りにして醤油で味付け
アキ達はイカソーメンを初めて食べたらしくかなり興奮していた。
エビは、そのまま焼くだけでメチャクチャ美味しかった。
「ハァ~美味しい~♪」
これはハルが相当気に入ったようだ。
それ以外の食材も本当に美味しかった。
かなり多めに取ったつもりだったのだが、ペロッと食べ終わってしまった。
その後、レイナ達も及びたいとの事で、皆で泳ぐ事となった。
龍聖君は水際で遊ばせようと思っていたのだが、
「龍聖君も泳ぐ~♪」
と言い出した。
「龍聖君は、まだ泳げないでしょう? だったらパパと一緒に泳ごうか?」
と声を掛けると
「大丈夫♪龍聖君一人で泳げるよ♪」
何!去年は泳げなかったし、今年は、泳ぎの練習をしていないのだが・・・
すると俺の静止もお構いなく龍聖君が海に頭から飛び込んでしまった。
メチャクチャ慌てた・・・。
急いで、海の中に入ると俺は、驚愕せずにはいられなかった。
「りゅ・・・龍聖君? それ・・・どうなってるんだ?」
水の中なのに頭だけが透明な空間に覆われていた。
水の中を自由自在にスイスイと動き回っている。
頭をピョコっと上げた瞬間に質問すると
「う~んとねぇ~ソヨとゼリーが教えてくれたの~♪」
なんですと?
「龍聖君が泳げないって言ったらゼリーが悲しがったの・・・そうしたら・・・ソヨが危険がない様に頭を囲ってくれて、ゼリーが動かしてくれるの♪」
言葉がたどたどしいが、何となく意味は分かった。
これには正直、興味が湧いた・・・なので、
「シルフィー!」
「は~い♪ 何ですかご主人様♪」
ナツのビーチだからかシルフィーの妖艶な姿が一際眩しかった。
「俺の龍聖君の頭を囲っているのは空気だよね?」
シルフィーは龍聖の方を見つめると
「そうですわね♪・・・空気魔法の結界ですわ♪」
「なるほど・・・だけど・・・あれポッチじゃ直ぐ中の空気が無くなるんじゃないのか?」
するとシルフィーには珍しく笑い出した。
「クスクスクス♪ 良く見て下さいませ♪ リュウセイ様が潜られると水面上に小さな穴が開いているのが見えると思うのですが♪」
シルフィーに言われ龍聖の周辺を注視すると確かに5㎝程の穴が水面上に開いていた。
「なんだあれ・・・? 違和感が半端ないな・・・って! もしかして・・・外まで繋がっているのか?」
「クスクスクス♪ はい♪ なので、結果以内の酸素がなくなる事はありませんわね♪」
「メチャクチャ便利じゃないか! どうやれば出来るんだ?」
「ウフフ♪ あれは、精霊の力を使っていますので、魔法だけだと難しいかも知れませんわね♪」
「へぇ~♪ そうしたら・・・悪いんだけど俺にも同じ様にして貰えるかな?」
「は・・・はい♪ では・・・失礼します♪」
そう言うとシルフィーが俺の背中に胸を押し付けた。
「うわっ! 何故そうなる?」
「あの・・・アレは、風の精霊が主と融合している様なものでして・・・恥ずかしいですが・・・私!頑張りますね♪」
そう言うとシルフィーの二つのスイカが俺の身体に圧し掛かった。
するとスゥ~っと姿が消えると同時に俺の頭の周囲に結界が張られている事が分かった。
なので、シルフィーの事が気になるが、龍聖君の近くまで潜っていった。
潜った事で、さらに驚いた。
何故かと言うとゴーグルで見るよりも綺麗に見えるだけじゃなく視界を遮断するものが、ないから海の中にいる違和感が全く無い。
龍聖君を見つけ近くに行くとさらに驚かされた。
「パパ~♪ 海の中って楽しいねぇ~♪」
龍聖君が当たり前の如く俺に話しかけてきたのだった。
「なんで・・・龍聖の声が?・・・もしかして・・・龍聖! パパの声が聞こえるのかい?」
「何言ってるの~? パパの声が聞こえるに決まってるでしょう~?」
さすが、子供・・・。
「凄いな・・・酸素ボンベがないから動きやすいし・・・水の精霊のお陰で海の中でも自由自在だし・・・視界はクリアだし・・・極めつけに会話迄出来るとは・・・」
恐怖心が、全くない龍聖君がどんどん深いところに潜っていってしまうので、慌てて後を追いかけると水深10mを過ぎた辺りで肌寒くなってきた。
「龍聖!それ以上は、水が冷たいから上がってきなさい♪」
心配して上に来るように話しかけると
「なんで~?龍聖君寒くないよ~? パパ寒いの?」
何でだ? 確かに寒いって程ではないけど・・・ダイバースーツ着ていないんだから水が冷たいんだけど・・・
「水が冷たくなってきたから上の方で遊びなさい!?」
その時、龍聖君が寒くない理由がハッキリと分かった。
目を凝らさないと分からなかったが、頭だけじゃなく龍聖の周囲50cm程にも結界が張られている。
その結界が龍聖君の動きに合わせて動いているのだ。
「龍聖君?もしかして・・・風と水の精霊だけじゃなくって火の精霊さんも使っているのかな?」
疑問が尽きないが取り敢えず龍聖にしつもんすると
「そうだよ~♪ だって海の中って冷たいもん♪ だから火の精霊さんも使ってるよ~♪」
「うちの子・・・マジ天才! 何その発想力!って事は、龍聖君の周囲にあるのは火の精霊さんの結界なのかな?」
「そうだよ~♪ パパ~♪ そろそろ上に上がるよ~♪」
すると凄い速さで上昇していく。
「ハハハ・・・子供って・・・凄いな♪」
登っていく龍聖君を下から覗いていたのだが、何故か水面近くで龍聖君の姿がぼやけて見えた。
不思議に思って後を追いかけても水中に龍聖の姿がない。
そして、水面に顔を出した時、目を見開いて驚いている4人の姿が目に入った。
「何を驚いているんだ? 龍聖君はどこだ?」
周囲には龍聖の姿が無かったので、後ろに振り返るとまたしても驚かされる事となった。
なんと・・・龍聖君が・・・
「み・・・水の上を歩いているのか?」
「キャハハハ~♪ たのしぃ~♪ パパァ~♪ パパも早く来てよ~♪」
と言われましても・・・どうすれば良いんだ?
「だから・・・水中から見えなくなったのか・・・。取り敢えず一旦砂浜に戻るぞ! おいで、龍聖♪」
そして、全員で、砂浜へと戻ると龍聖君に質問を開始した。
「先にハッキリ言っておくぞ! 俺も驚いているからね?」
「そうなんですか? 龍徳さんが教えたのかと思いました・・・。」
「龍聖君? 水の上に立って歩いていた技はどうやっていたのかパパに教えてくれない?」
「良いよ~♪ あのねぇ~歩くとこだけ、お水を堅くするの! でね~倒れないようにねぇ~風の精霊さんに守って貰うの♪」
子供の語学力では要領を得ないが・・・
「エェ~っと・・・水の上に上がるのはどうやったのかな?」
「お水の上に上がるの~? そんなのこうすれば出来るよ?」
そう言うと龍聖君の足の裏からジェット噴射の様に水流が噴き出した。
数メートル上空に浮き上がるとピタッと静止している。
良く見ると風の精霊が龍聖君の周りに干渉して絶妙なバランスを取っているようだ。
さすがに、この現象には俺を含む全員が声を失った。
数秒の沈黙の後・・・
「マジか・・・。」
「たのしぃ~♪ ねぇ~簡単でしょう?」
「簡単かどうかは分かんないけど・・・パパもやってみるか・・・」
契約精霊を呼び出し龍聖君と同じ様に魔法を発動させた。
そうだ!言い忘れていたな!
通常の魔法とは違い契約精霊を召喚した状態で使用する魔法は、“精霊魔法”と呼ばれる。
通常の自然現象への干渉を行う魔法とは違い精霊魔法は、精霊自身の能力や魔力も使えるので、威力も凄いが、通常魔法では出来ない様な事が出来るようだ。
思えば、俺も無意識にやっていた事だが、グノムが良い例だな。
地中深く埋まっている魔石を掘り返すなど俺が使える魔法だけでは出来ない。
なので、土の精霊であるグノムに頼んだのだが・・・あれが、精霊魔法って事みたいだ。
そして、少しだけ悪戦苦闘したものの直ぐに感覚が掴めるようになってきた。
「なるほど・・・最初から自分の足元を水で囲っていたのか・・・。」
実際やってみると、かなり高度な魔法の組み合わせだと思う。
龍聖は簡単にやっているが、実際には幾つもの魔法の組み合わせである事が分かった。
足には、水で出来た靴を履くイメージで、その水の靴に生活魔法であるウォーターを使い続けながら圧縮。
通常よりは魔力を使うが、せいぜい3倍程度。元からの魔力消費が少ないので誤差の範囲だ。
そして、超圧縮した足底の10ヵ所から小さく水流を噴出させる。
重量に応じて水の量を増やし圧力を高める必要があるが、難しい点はその程度である。
空中でのバランスを取る事が難しいので、常に身体が垂直となる様に風の精霊がバランスを保ってもらう。
移動方法は足の向きを変えても良いが、風魔法を使うだけで移動が容易だった。
そして、水の上を歩く方法は、水の精霊も土の精霊同様に属性に該当する者は変形させる事が容易で、抵抗の少ない水を創生する事から粘土の様に堅さを持った水を創生するまで出来るらしい。
さらに、磁石の様に水と水を反発させる事が出来るとの事だった。
考えもしなかったが、水の攻撃魔法であるアクアボールやアクアバレット等は、水を高質化して放っているので、水に硬度を持たせる事は簡単だった。
攻撃を防ぐ水の防御結界も同じ事なのだが、本来、炎の魔法に有効と聞いていたのだが、水魔法に関してはリフレクト・・・要は、反射させる事も出来るらしい。
これが、磁石と同じ要領と言う事だ。
なので、水の上を歩く場合も足底に硬質化させた水の靴を履かせ同時に足が接地する水の部分だけ同時に硬質化させると同時にリフレクトさせる。
これで、水の上に立つ事が可能だった
しかし、海の場合は波があるので、バランスを取る事が難しいのだが、それも風の精霊にバランスを取らせる事で、問題なく走る事が出来たのだった。
「パパ~♪ 出来た~? ねぇ~♪ 簡単だったでしょう?」
「簡単と言えば・・・簡単だけど・・・龍聖君は本当に天才♪」
空中に浮かび上がっている龍聖を追いかけて俺も上昇すると愛しの我が子を抱きしめた。
「えヘヘヘ~♪ 龍聖君・・・天才?」
「あぁ~龍聖は超・・・超・・・超~天才! さすが、パパの子だ♪」
「わ~い♪ わ~い♪ 龍聖君天才!」
天才の意味が解っているのかは分からないが、龍徳に褒められた事が嬉しいのか小躍りしていた。
その後、龍徳と龍聖の遣り取りを呆然と眺めていたレイナ達四人にも使い方を教授すると意外にも皆手こずっていた。
魔法に対しての概念がないレイナは、一早く修得したが、ナツ達三人は、複雑高度な魔法だと出来るようになるまで小一時間掛かっていた。
しかし、自転車に乗るのと同じで、一旦出来れば、どんどん上達するので、夕方前には全員が使いこなせる様になったのである。
ただ・・・
「キャハハハ~♪ たのしぃ~♪」
元から出来ていた龍聖だけは、水中から一気に上空10m迄飛び上がり、かなりの速度で空中を移動すると、そこから一気に水中に潜ると言った魚をも凌駕するような遊びを繰り返していた。
「なんと言うか・・・さすが・・・龍徳殿のお子様だな・・・。」
「あそこ迄、出来るのに時間が掛かりそうだねぇ~・・・。」
「お~に~さん、こちら♪ 手の鳴る方~へ♪ キャハハハ~♪」
良く見ると龍徳が龍聖を追いかけるように同じ様な事をしているが、その差は開く一方のようだ。
「ゼェ~ゼェ~ 追いつけん! 我が子ながら・・・何て奴だ! 絶対捕まえてやるぞ!」
負けず嫌いな俺は、龍聖と遊ぶ為にも全力で、やっているのだが・・・龍聖は魚の化身か?
イメージだと龍聖は水中で時速35㎞程の速度で移動している。
泳いでいる訳ではないので、違和感が半端ない。
水中から上空への移動がメチャクチャスムーズで複雑な魔力操作をいとも簡単に行っているのだが、本人は難しいなどと少しも思っていない。




