小さな小さな 大冒険!! 34
これを見ていたアキとハルが、自分達にもとアドバイスを求めたので、それぞれに俺の考えを教えると目を丸くして驚いていたが、実際に使った事で、今度は興奮しながら喜んでいた。
アキには、やっぱり雨と土魔法の合体魔法で“泥沼”だ!
この魔法により大半の魔物の機動力が落ちる事となった。
上手に使えば大型の魔物であっても動きを封じる事が可能だ。
さらにレベルが上がれば倒す事も可能になるだろう。
ただし、諸刃の剣でもある。
当然自分達にも同じ事が言えるのだ。
使うタイミングと場所を考えなければならいない。
小人状態の俺達が泥沼に嵌ってしまったら魔法を解除しない限り抜け出す事も難しいだろう。
それと、土魔法が進化したアキの闇魔法と土魔法を合わせ“ゴーレム創生”を提案した。
レベルが上がったアキは、土魔法で様々な形を作る事が出来ていたので、闇魔法の“仮初の命”と言う魔法と合わせ可能ではないかと提案した。
アキは、恐る恐る試していたのだが、意外と操作が難しかったようだ。
なので、複雑な操作はアキの意志で操作させる事にした。
結果、自由自在に操れるようになったが、今の魔力量とレベルだと一体が限界だ。
しかし、一体だと言っても不死身のゴーレムを自由に動かせるのだ。
創世し続けていると大量の魔力を使ってしまうので、出し続ける事は出来ないが、今後は複数体同時に操作する事も出来るようになるだろう。
ハルには、進化した光魔法で覚えた結界と炎魔法の合わせ技だ♪
結果だけで言うとこの魔法は結構えげつなかった。
本来であれば対象物を結界で封じ込め全てを遮断する魔法なのだが、大半の魔物が大き過ぎて完全に全てを包む事は難しい・・・当然だ。相手が眠っているのであればどうにかなるが、動いている相手に使うのだ! 敵の全てを結界で包み込もうとしたら実際のお気差で2m位は最低でも必要だろう。
小人の大きさで言えば80m級の結界など魔力の消費量を考えると使えないと思ってしまうのも無理もない。
なので、ハルが対小人族や昆虫程度にしか使えない魔法と言っていたのだが、俺はこの結界魔法を敵の鼻と口に使うように指示を出した。
ハルは、ピンポイントで狙うのが難しいし、もし狙えたとしても行動を束縛する効果が無いと言っていたが、何の問題もなかった。
レイナに教えたフォーミングを結界魔法に使用する事で、ピンポイントで発動が可能だ。
そして、結界で相手の鼻と口を覆うと同時にその空間内にフレアを発生させる。
空間を断絶する結界の中の酸素が一瞬で燃焼され魔物が酸欠を起こし1分程度で絶命する事となった。
これには、ハルは目を丸くして
「こ・・・こんな簡単に倒せるなんて・・・。」と驚いていた。
この魔法は酸素を燃焼させるので“バーニング”と名前を付けた。
敵を倒す方法は、切ったり穿ったり焼いたりだけではないという事だな♪
但し、弱い敵であれば問題ないが、結界の強度を高めないと大型魔獣には壊されてしまう可能性が高い。
元の状態に戻った俺に使って貰ったが、ブーストを軽く使っただけで結界が壊れてしまった。
なので、ハルにはもう一つ炎を大きく噴出させて刃を作り出す魔法を提案した。
その名も“ファイアブレード”
威力的にはフレイムの方が上なのだが魔力をかなり消費してしまうらしくレベルが上がるまではファイアの魔法で使う事となった。
どちらにしても威力を上げないといけないので、ハルはフローとブーストの練習を充填的に行う事となった。
とこんな感じで、成長していくと次第に自分達の山に敵がいなくなってしまった。
実際、鳥や小さな鳥なども強敵なのだったが、小さ過ぎてレベルの上がった俺達の敵ではなくなっていた。
物足りなくなってきたので、さらなる実践訓練の為に新たに小さい山を購入する事となった。
最初の頃は、そこで捕まえた危険な害獣を捕まえては、持ち帰って実践訓練をしていたのだが、レイナが“効率が悪くないですか?”と言い出したので、龍聖君が親父の家に遊びに行くタイミングを利用して実際に現地で害獣駆除を行う事となった。
場所は山梨県。東京都と山梨県の県境を過ぎたあたりの場所だ。
景観の素晴らしい自然豊かな環境だが、小人状態だと危険極まりない場所となった。
そして、現在・・・
俺達は、戦闘中だった。
「レイナ! シマヘビに向けてフォーミングサンダーで倒せ!」
「分かりました! フォーミングサンダー!」
一瞬にして巨大な蛇の魔物に雷が落ち感電させた。
ピクンピクンと痙攣している。
「ハルは、まだ炎は使うなよ! 森林火災になったら大変だ! 上空から地面に向けて止めを刺してくれ!」
「了解!」
「ナツ! そっちのアオダイショウを“凍てつく世界“で倒してくれ!」
「分かりましたわ! 凍てつく世界!」
アオダイショウの周辺に一瞬で靄が掛かると同時にその空間が凍り付いた。
「アキ!上からモズが襲ってくるぞ!」
「うぉぉ~! やらせるか! アースドーム!」
泥の円球状の防御壁がアキの頭上に現れ敵の攻撃を躱している。
「部長!シマヘビが死んだと思うんですけど・・・怖くて確認できません!」
「だよな・・・ハル!そっちのシマヘビに止めを刺してもらえるか?」
「OK~♪ いっくよ~! 全力!ファイアブレード!」
ハルが放ったのは、20m程にもなる巨大な炎の刃だ!
上空に出現するとそのままシマヘビの頭部を落とし焼き尽くしていた。
「イエ~イ♪」
「龍徳様! 私の方も倒しましたわ♪ あっ! 危ない!」
ナツが勝利の報告を告げると共にモズと戦っているアキの方を見た。
「鳥類は、戦いずらいな・・・しかし! これでどうだ!」
アキが大地に手を付いて
「ゴーレム創生!」
すると20m(実際には40cm強)程の大きさのゴーレムが出現しモズの攻撃を防いだ。
さらに、ゴーレムの腕が伸びると空中のモズを捕まえて拘束したのだった。
「お父さん!ナイス~♪」
「おう! まだまだお前には負けておれんからな♪」
「ふぅ~ さすがに以前とは大きさも迫力も違うな・・・。」
「そうだよね~♪ でも!ハッキリ言ってここまで戦えるとは思はなかったよ♪」
「そうですな・・・今までであれば、見つかった瞬間に死を覚悟しなければなりませんでしたからな・・・。」
それが今では戦えるまでに成長したのだ・・・三人の表情には歓喜の笑みが浮かんでいた。
「これも・・・本当に龍徳様のお陰ですわね♪」
「だから~皆が頑張ったからでしょう?」
「部長・・・それにしても・・・改めて見ると本当に大きかったですね・・・。」
「だな・・・レイナ君もスッカリ慣れたな♪ 最初の頃はキャーキャー言っていたのに♪」
「それは!最初の頃だけですからね! ですが・・・私もこんな自分に正直驚いていますけど・・・」
「クスクスクス♪ レイナ君も狩られるより狩る側だったって事なんだろうな♪」
「狩る側・・・ですか?・・・なるほど・・・そうかも知れませんね♪」
俺の言葉に最初は小首を傾げていたが、龍徳の顔を見るなり何故か納得していた。
何故俺を見ながら納得しているのか・・・何かブルッと来るからやめて欲しいのだが・・・
「それにしても・・・デカいな・・・。」
これも当然の事だ。
新居の山に潜んでいるアオダイショウなど精々80㎝程度だった。
他にもスズメ程度だったので、ここでは倍の大きさだ。
こんな興奮する事が起こるんだから人生って本当に面白い。
シマヘビとアオダイショウの体調は実際のサイズで150cm!俺達から見たら60mを超える大きさに見えるし、モズも実際に20㎝位だ!羽を広げれば40cm! と言う事はだ!俺達から見れば15mをゆうに超える怪鳥にしか見えていない。
恐竜なんてハッキリ言って目じゃない!
一瞬の気の緩みで、全てが終わってしまう。
「はぁ~怖かった~」
「そうですわね・・・。」
ハルとナツはかなりの恐怖だったのだろうが、レイナが先陣を切って戦っている姿を見て勇気を振り絞って戦っていた。
「そうだね♪ じゃ~今日は、ここ迄にするか?」
俺とレイナもそうだが、今では、アキ達も危なくなったら巨大化すれば最悪の事態を免れるのだ。
これ位の保険がなければ、とてもじゃないが危なすぎる。
そうだ!以前から言い忘れていた事だけど!
何で俺達がこんな事をしているかと言えば、アキ達が小人の国に用事があるのだと言う。
小人の国は富士の樹海の中にあるらしいのだが、危険すぎて今までは戻る事が出来なかったらしい。
その話を聞いた俺は、彼らの魔力を強制的に広げ、レベルアップを図る事にしたのだ。
最初は、巨人化した状態で行けば楽なんじゃないかと思って作った魔道具の指輪だったが、小人の国の周辺にはブッシュが覆い茂っているので、逆に大き過ぎると通る事が出来ないらしい。
これを聞いた時は、なるほどと思った。
確かに高さが1m以上の棘棘の茂みなんか通れるはずもない。
逆に小人であれば茂みの間を通り抜ける事が出来る。
でも、逆を返せばどんな危険があったとしても巨人化出来ないと言う事でもある。
なので、強くなって自分の身を完璧に守れるように鍛える事になったのだった。
だが・・・ハッキリ言ってまだまだ実力不足だと今回の件でも判断した。
正確には実力は問題ないが、俺達に必要なのは経験値だ!
戦闘で一番困るのが間合いだ!
何せ相手にとっては1m程の距離であったとしても小人の状態だと40m以上も離れている
場合によっては、実際の間合いで5mの距離でもだ!
考えて見て欲しい。
小人で5mと言えば200m以上だよ?
それ程の距離があったとしても1秒前後で間合いに入られる
怖いなんてものじゃない!
体感的は新幹線や飛行機が意志を持って攻撃してくるようなイメージが一番近いだろうか?
その距離を一瞬で飛び掛かられては一溜りもない!
しかも鳥に至っては上空からだ!
その危険性は分かって貰えるだろうか?
俺達はもっと実力を付けないとならない。
巨大化して戻ろうと思っていたら
「龍徳さん!まだ、もう少し訓練したいんだけど・・・ダメかな~?」
「私も!もう少し戦おうと思います!」
「だな・・・」
と三人が意志の強い目を俺に向けたので、
「分かった・・・レイナはどうす・・・」
「私は、神谷部長がやるのであれば嫌はありませんからね♪」
どうやら聞くまでもなかったらしい。
なので、買い取った山に元から残っていた別荘へ戻りながら魔力が半分を切るまで実地訓練をする事になった。




