小さな小さな 大冒険!! 33
風のシルフィーは、相変わらず妖艶な姿をしているが、見た目に反して未だに恥ずかしがり屋だ。
話を聞くと俺の為に精霊界で魔法の修行をしたので、新たな能力を身に付けたらしい。
その名も“エアバースト”! 圧縮した大気を急降下させて敵にぶつける魔法らしいが、威力を弱めて使ってみたところ・・・これも危険と判断したので封印する事とした。
理由は簡単! かなり弱めに放った魔法であるにも拘らず頑丈に作ったブースが揺れた・・・。
しかも!これだけの威力にも拘わらず地面に衝突する前の音が殆どしなかった。
レベルが高くなれば大気への干渉が抑えられると聞いていた事を考えると危険な匂いしかしなかった。
シルフィーを始めてみたレイナが、何を勘違いしたのか・・・
「へぇ~♪ 神谷部長って・・・こう言うのが好みなのかなぁ~?」
勘違いも甚だしい!
俺は至ってノーマルだからな! まぁ・・・こう言うのも悪くないとは思うけど・・・。
水のディーナは、大精霊へと進化した事で姿が変化するかと思ったのだが、未だに少女の姿のままだった。
“アクアランス”と言う魔法が使い勝手が良い♪
それと、回復系の“アクアヒール”を覚える事が出来たので、かなり重宝する事になった。
最後に土のグノムだが・・・この子もかなりの頑張り屋さんだった。
最初のイメージは、引きこもりだったのだが、今では一番使っているかも知れない。
ラノベの様な異世界ならともかく現実世界で魔法を使うとなると現実的に難しい。
なので、土魔法は日常的にも非常に使い勝手が良いのだ♪
そのせいなのか、今では、“アースクエイク”・・・要するに地震を引き起こす魔法が使えるようになっていた。
最初にこの魔法を教えて貰った時には、何の冗談かと思ったものだ・・・。
ある日の事・・・。
「龍徳~♪ 僕、新しい魔法を使えるようになったから使ってみてね♪」
と軽~く言われたので、練習を兼ねて使った事がある・・・。
この時は正直・・・魔法とは何なのかを改めて考えさせられた。
この魔法は魔力を注げば注ぐだけ地震の強さが変わる事とどんな対象物にでも影響を与える事が出来る。
さらに影響を与える範囲も指定できる魔法だったので、試しにステンレスボトルに向けて少しだけ強めに使ったところ分かった事がある。
結論・・・この魔法は、封印はしないが使い方を間違えるとかなり危険だ。
ステンレスボトルに向けて放ったアースクエイクは、ステンレスボトルだけを激しく揺らし共鳴振動を起こし、あっという間にバラバラになってしまった。
小人状態であれば15mもの大きさが・・・だ!
耐久値の限界を迎えたステンレスの水筒は、グニャグニャにひしゃげ千切れていた。
また、普通の地震としても当然使う事が出来た。
威力がある魔法は嬉しい事でもあるのだが、誰もいない時じゃないと周りにも被害が出てしまうので、練習を控える事にした。
なので、バレットとランスと言った連射型の魔法の練習と単発魔法のボールの魔法に力を注ぐ事にした。
俺を含む全員のこの数日間の成長は本当に目覚ましいたものがあった。
魔法なしだと凶悪な昆虫も今では、全員が普通に倒せるまで力を付けていた。
但し比較的に安全な昆虫だ・・・。
新しい新居は、小さいが山であった為、危険な昆虫も多かった。
また、害獣駆除と言う名目の実践訓練が出来た事は僥倖と言えだ。
例えば、大スズメバチだ!
小人状態だと体長1.5mもの超危険な魔物だ!
一匹であれば問題ないのだが、此奴らは集団で攻めてくる。
しかも威力の弱い魔法で撃ち落としても地面を這いながら襲い掛かって来る。
ハル達は、高威力の魔法が使えるようになったと言っても、まだまだ経験値不足であり強大な魔法を使おうとするとどうしても魔力の溜めが必要らしくまだまだ実戦で使える代物ではなかった。
今では、詠唱の必要なくなった“ボール系”や“バレット系”が一番実践向きと言える。
威力の無さは手数で相殺する。
それでも大スズメバチは一度で数十匹以上で襲い掛かって来るのだ堪ったものでは無い。
しかも俊敏性に優れている。
奴らの恐ろしい攻撃は毒針だけではなく噛みつきによる攻撃も恐ろしい。
手足の鉤爪も掴まれれば肉に食い込む。
効率的な倒し方が分からない時は、本当に恐ろしい敵だったが、何度も戦闘訓練を繰り返している内に攻略方法が確立されていった。
当たり前だが、飛べない様にする事が一番の攻略方法だ。
なので、最初は水魔法を使っていたのだが、小人状態での範囲魔法だと規模が小さいため効果が薄かった。
さらに、少量の水程度は奴らにとって何の問題にもならない。
なので、水と土の魔法を同時に使用する泥魔法が効果的だった。
通常のアースウォールではなくマッドウォールが効果的だった。
なぜ英語なのかは分からないが、蜂の魔物は“ビー”と呼んでいた。
試しにアキ達は、大スズメバチの事をキングビーと呼んでいたが、ちょっと納得してしまった。
他にも恐ろしいのが蟷螂だ!
大型のカマキリの事を同じ様にキングマンティスと呼んでいたが、此奴も恐ろしい敵だった。
体長が大きい物だと3m50cmもあり恐ろしくタフな魔獣だった。
度の魔物にも言える事だが、接近戦は今のところタブーだ。
魔法による攻撃以外は、話にならない。
今日までに殆どの敵に摑まれたり噛まれたりした事があったが、一瞬で助けないと本当に危険だ。
俺とレイナは元が巨人だからなのか小人化してもアキ達と比べて力がかなり強い。
魔力を上げる為に造った巨大化の魔道具の嬉しい誤算で、巨大化状態で何度も彼女達が生活している事で、普通の小人よりもはるかに強い力を身に付けた事で、ギリギリ助かった場面が何度もあった。
ある時、キングマンティスにアキが腕を挟まれた時の事。
アキは、腕が切断されたと思ったらしいが、実際にはかなりの深手ではあったものの千切れるまでは行かなかった。
レイナが襲われそうになった時に助けようと割って入ったら巨大な鎌で鋏まれてしまったが、皮膚に食い込んだだけで、問題なかった。
イメージで言うと
俺とレイナは、小人化すると元の強さの25%前後になる感じだ。
100m走で例えるのであれば、小人状態は2.5mなのでハル達は、この距離を12~13秒程で走る。
ところが、俺は1秒で、レイナは1.5秒も掛からない。
基本能力で10倍程の差があったのだが、先程も言ったように彼女達が巨大化を繰り返した事で、今では2.5mを4秒程で、走れるようになっていた。
この結果に彼女達が大喜びしていた事は言うまでもないだろう。
だが、昆虫系の魔物は、そんなパワーアップを嘲笑うほど力が強い。
正直俺がギリギリ抜け出せるかどうかなので、魔力ブースト状態でもなければ、とてもじゃないが抜け出す事は不可能と言えるだろう。
なので、今では、新居のトレーニングルームで、筋トレをする事が、全員の日課となっていた。
なんにしても、そんな実践を繰り返した事で、一人では危険だが、3名以上いれば大半の昆虫系の魔物を普通に倒せるようになったのだった。
何故、こんなにも実践訓練を繰り返すのかには理由がある。
それは・・・・
「龍徳様!キラーマウスに気付かれましたわ!」
おっと・・・この話はまた今度だ。
今は、戦闘中!
俺達の目に映るのは、3匹の化け物鼠だ!
体長9mはあろうかと言う鼠の魔物が、目を光らせて俺達を狙っている。
昆虫を倒せるようになった俺達は、次のステップアップとして、選んだのが、キラーマウスだった。
ハッキリ言って今までの魔物がかわいく思える程の圧倒的な強さだった。
ファイアボールやファイアバレットは、球数を重視すると精々30㎝の大きさが限界で、実際のサイズに換算すると8㎜程度の小さな炎なので、魔物に当たったところで、怯みはするが体毛が少しだけ焦げる程度のダメージしか与えられなかった。
他のエアカッターやストーンバレットであっても威力が足りない為、何十発魔法を放っても倒すどころか弱らせる事も出来なかったのだった。
本来であれば、自分が契約した精霊を媒介に魔法を使えば威力が何倍にも上がるのだからそうすれば良かっただけなのだが、ナツ達はそれを良しとしなかった。
本人たち曰く
「最低でもキラーマウスを精霊を使わないで、自分達で倒せるようにならなければ、辿り着けない」
との事だった。
そうそう!
この戦闘訓練の目標についてをまだ伝えていなかったね♪
「それは・・・」
「部長!ハルさんが!」
この話は、また今度!
「魔力ブースト全開!」
以前イフリート相手に使った身体強化を施した俺は、ハルに襲い掛かろうとしていた魔物の前に一瞬で立ちはだかった。
「龍徳さん!」
しゃがみこんで両手で自分の頭をガードしているハルの前に着くと同時にストーンウォールを展開した。
壁にぶつかる音が聞こえるが、こんなもの奴らにとっては痛くも痒くもない。
「立てるかハル!」
「うん♪ ありがとう龍徳さん♪」
「そろそろレイナに倒させても良いか?」
「悔しいですが、魔力も少なくなってきたのでお願いするしかなさそうですな・・・。」
「分かった・・・レイナ!!」
「やった~♪やっと私の出番ね♪ いっくよ~♪ フォーミングサンダー!」
レイナが使用した魔法はフォーミングサンダー・・・。
これは、ただのサンダーだと命中率がメチャクチャ悪かったので、悩んでいたレイナに俺がアドバイスした。
標的をロックする事で、追跡機能を持たしたのだ・・・これにより今では百発百中の制度を誇る。
レイナが魔法を唱えると一瞬で上空から雷が雷鳴と共の魔物に直撃した。
プスプスと生き物が焦げる嫌な匂いが鼻を掠めていく・・・。
そして、この魔法の威力と音に驚いた他の2匹の魔物が逃げていった。
「ありがとう♪レイナさん♪ それにしても・・・レイナさんの雷魔法は凄いよね~!」
「ウフフ♪ そう? ありがとう♪ 部長~♪ どうでした私?」
「あぁ・・・上出来だ♪ 良くやったな♪」
頭を撫でろと頭を突き出してくるので、仕方なく頭を撫でてやると目を細めたレイナが子猫の様に喜んでいた。
「私も氷系の魔法発動をもう少し早めないとダメですね・・・。」
ナツが悔しそうな表情を浮かべてそう呟いた。
なので、後日ナツの修行に付き合うとある意味魔法のメカニズムの様なものが分かった気がした。
ナツが使う氷魔法は威力範囲共に素晴らしいのだが、逆に時間がかかる弱点があった。
考えてみれば分かるが、魔法と言うとラノベでは自然現象とは違う位置づけ見たいだが、現実には精霊の力を借りて現実世界である自然に干渉するのだ・・・。
液体窒素の様な物であれば、一瞬で対象物を冷やす事も可能だろうが・・・とここまで考えた時に良い事を思いついた。
ナツの氷魔法は、最低温度に至るまで10数秒掛かってしまうのが弱点。
分かり易く言えば1秒でマイナス10度づつ下がっていく感じだね。
だから最初は寒いだけで、一瞬で凍り付く訳ではなかった。
さらに言えば、魔法の中心点から徐々に広がっていくので、範囲を広げれば広げる程時間が掛かってしまう。
なので・・・
「ナツ! 水魔法と氷魔法を同時に操る練習をしてみようか♪」
と提案した。
ナツは、不思議そうに思っていたみたいだが、結果は圧巻だった。
「ま・・・まさか・・・これ程とは・・・ふぅ~流石は龍徳様ですね♪ 私には思いつきもしなかったですわ♪」
「そうかい? でも俺って言うか・・・龍聖からヒントを得たんだけどね♪」
そう・・・以前龍聖君が、風と土の魔法を別々に操っていた事を思い出したのだった。
様は、霧雨の様な魔法であれば短時間で発生させる事が出来る“ミスト”と呼ばれる初級魔法だ。
本来であれば、ブラインドの様な敵に発券され難くする魔法なのだが、この魔法とほぼ同時にブリザードの魔法を併用した事で、僅か2秒で氷の世界が現れた。
考えてみれば当たり前だが、空気は凍らない。
なので、時間が掛かっていたのだ。
ならば・・・凍りやすい環境を作り出す!
この時のナツの魔法を見て次から魔法がイメージし易くなるように見たままの名前をプレゼントした
そのなは“凍てつく世界”
どうやらナツもイメージがしやすいとの事で、魔法発動も短くなった。
他にもいくつかの水魔法と併用する事で、ナツの魔法が凶悪な魔法へと進化して言った。




