小さな小さな 大冒険!314
「カハッ・・・」
ガクッと意識なく膝から崩れ落ちるとすかさずナツとレイナがハルを部屋へと連れて行き隷属か洗脳の魔道具を調べ始めた。
そして、部屋から出てきたレイナの顔が青ざめていた。
「どうした・・・何があった!」
「それが・・・クッ・・・見て貰った方が早いかも知れません・・・」
そう言われてハルが眠る部屋へと入るとナツが泣き崩れていた。
「ナツ・・・」
「グス・・・龍徳様・・・」
椅子から立ち上がり龍徳の胸へ顔を埋めて泣き出した。
フワッと抱き付かれた瞬間に香るナツの髪を優しく撫でながら声を掛ける。
「一体何があったんだ・・・」
「グス・・・申し訳ございません。・・・」
「部長・・・これを・・・」
涙が止まらないナツの代わりにレイナがハルの身体に触れ声を掛けて来た。
「ナツ・・・ちょっと良いか?」
ナツの肩を持って自分から離すとハルの身体に目を向けた。
「これは・・・」
布団を取るとハルの身体が露わになった。
その瞬間目に入ったのは、身体に埋め込まれた魔道具。
腕と太腿に一つずつ。
そして・・・心臓の部分にも埋め込まれていた。
「まさか・・・嘘だよな・・・」
「グルル・・・これは昔見た記憶がある・・・チッ・・・悪魔どもが・・・」
それを見たソーマの顔が怒りに染まる。
「心臓は・・・心臓は動いているんだよな・・・」
「・・・・・」
「何黙っているんだレイナ・・・」
「グルル・・・レイナやナターシャ姫では答えづらいだろうな・・・」
そう言ったソーマが代りに話を続けた。
「これは、悪魔共が昔からやっている傀儡の魔道具だ・・・死んだ人間を操る非道な魔道具だ・・・」
「おい・・・ハル! 嘘だよな・・・」
ハルの身体を揺さぶって起こそうとするが目を覚まさない。
「グルル・・・どうやら魔力が切れたようだな・・・この魔道具は魔力が無くなれば動くかなくなるからな・・・」
ソーマの言う通りプツリと糸が切れた人形の様に動かない。
『遺跡でナツが回復魔法をいくらかけても回復が遅かったっけ・・・あれは、重症だからだと思ってたけど・・・既に死んでいたんだね・・・グス・・・こんなの酷いよ・・・』
静まり返る部屋の中口火を切ったのはソーマ。
「グルル・・・アキを探すぞ龍徳。」
「ああ・・・そうだな・・・」
たったそれだけの言葉だが、それを龍徳が口にした瞬間部屋に置いてあったガラス全てにヒビが入った。
ゾクッ・・・
龍徳から沸き上がるプレッシャーに3人の頬に冷や汗が流れる。
「キレたぜ・・・久しぶりに・・・」
「うむ・・・吾もだ。」
「龍徳さん・・・」
『部長のあの顔・・・一度だけ見た事がある・・・』
一度だけ常軌を逸した理不尽な出来事に初めて龍徳が切れた姿をレイナに見せた事があった。
その時も凄まじかったが今回は比較にならない。
「レイナとナツは、ここで龍聖とハルを見てやってくれ・・・」
「わたくしもご一緒致します!」
自分の国の戦い・・・その上、身内とも言えるアキが絡んでいる話なのに何もせずジッとしているだけなど出来る訳がない。
そう言う思いを含んだナツの意志を感じる。
「ダメだ。」
「何故ですか!」
「今のナツが満足に戦えるとは思わん。」
ベッドに横たわるハルにそっと目線を向ける。
「大丈夫ですわ!それに、これは私の戦い・・・私が何もせずジッとしている事など・・・」
「では聞くが、今のナツがアキを見付けたとして冷静な判断で動けると本気で思っているのか?」
「そ・それは・・・・・」
冷たい口調で言いきられてしまうと言い返す事が出来ず口籠ってしまう。
「悪いが戦力的に考えても足手纏いだ。」
「クッ・・・」
ナツとしては珍しく自分の不甲斐なさに唇を噛みしめた。
ナツには悪いが・・・悪魔がいつまでもアキを大事に扱うとは思えない。
恐らく、神の涙が敵の手に渡った時点で用済み・・・。
グレーターデーモンクラスの敵ならまだしも、この戦いの最中にアキを救い出し連れて帰る事は不可能に近い。
だからこそ、ナツやレイナを連れて行く訳にはいかない・・・。
特にナツ・・・優し過ぎるナツを連れて行けば、俺達が窮地に陥る事が容易に想像がつく。
冷酷だと罵られようが、これ以上の救出は出来ない。
口には出せない本音。
いくら偽善者と言われようが、無理と無謀を履き違える龍徳ではない。
アストゥーの正体が、大悪魔であると神シッダー・ルー・ターキリスから既に聞かされているのだ。
であれば、目的の優先順位を明確にしなければ相手に隙を与えるだけなのだ。
敵を万が一にも逃がしてしまえば、外の世界で、どれ程の被害が出るか想像もつかない。
小人の国など比較にならない世界に逃げられてしまえば、見つける事さえ困難なのだ。
何が一神級魔法を大都市部に放たれようものなら死傷者の数は、一撃で数十万。下手したら数百万にも上るだろう。
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