小さな小さな 大冒険!313
「クッ・・・まさかあのお2人が倒されるなんて・・・オッと!それ以上は近づかないでね龍徳さん。」
「チッ!」
『無属性魔法を使っての光のヒールは、今の俺だとまだ時間が掛かる・・・早く来てくれレイナ・・・。』
「ちょっとそこどいて貰えるかなぁ~?」
「ハル・・・お前は洗脳されているだけだ・・・お前なら洗脳を解けるはずだ!」
「フフ♪ どうだろうね~・・・どうでも良いからどいてくれないかなぁ~ウッカリ魔法を撃っちゃうかも」
そう言って右手に込めて魔力が膨れ上がる。
「わ・分かった・・・」
『この距離なら俺なら抑えられるか・・・』
距離として僅か10メートル。
今の龍徳なら間違いなくハルが魔法を放つ前に取り押える事が出来るとは思う・・・だが、その際魔法を誤射される可能性がゼロではないのだ。
龍聖の意識があるのであれば、何の問題もなく取り押える事が出来るが、今の龍聖は一切の魔力を纏っていない。
言い換えれば身体能力が高い普通の子供と同じだ。
万が一ハルの魔法が直撃すれば最悪死ぬ事さえあり得る。
それを考えると動けなくなってしまうのは仕方がない事だ。
だが、龍聖を人質に取られ流石の龍徳も冷静さを失い大きな勘違いをしている。
今の龍聖は、途轍もなく強いと言う事。
ハルも以前一緒に修行をした事で、普通の兵士達と比べれば何百倍も強いとはいえ、この一年での成長の差は圧倒的に開いているのだ。
小人のサイズでさえ10㎏もの体重がある龍聖の肉体の強度は、多少の魔法であれば命の危険など有り得ない程に強い。
かと言っても怪我をしない訳ではない。
例えて言うのであれば、マッチの火が皮膚に当たれば火傷を負うようなもの。
アスファルトで走って転ぶ事で擦り傷を負うようなものだ。
ハルの最大の魔法であれば、確かに危険だが、そんな魔法を使えばハル自身がただでは済まない。
だからこそ、今の龍聖の強さを知らないハルが右手に込めている魔力は、フレイムランス程度のものであった。
実際、龍聖を攫いに来たハルが抱き上げようとしたが、龍聖がビクともしなかったのだ。
その為、ハルは身体強化の魔法を全力で展開している。
『何でこんなに重いのよ・・・』
傍から見れば、全力の身体強化をしているハルがプルプルと震え興奮している様に見える。
余りの重さに眉を凝らして力を込めている為、顔付さ和えもキツイ顔に見えていた。
「もっと離れて!」
先程から同じ言葉を言っているのは正直身体がキツイ抱けなのだが、それさえも周りから見れば切羽詰まった迫力が籠っている様に見えてしまう。
僅か3㎝の龍聖の重さが10㎏。
これは、ハルが全力の身体強化を使用してギリギリ片手で抱き上げる事が可能な重さであった。
ナツもソーマも龍徳に強引に魔力を注がれ地獄の特訓と神の試練を乗り越えたからこそ1年前の数十倍の力を身に付けただけなのだ。
ハルの身体能力が他の小人より優れていると言ってもパワーは3㎏程度のものなのだ。
今のナツであれば、普通に体当たりするだけで、殺してしまいかねない程の戦闘力の差がある。
そして、数分後レイナ達が戻って来た。
「レイナ!良く戻って来てくれた!」
「予想通りでしたね・・・でも・・・何でハルを捕まえないんですか?」
「見れば分かるだろうが、ハルが龍聖の心臓に魔法を当てている・・・」
「えっと・・・多少の危険はあるとは思いますが・・・神様の加護が掛かっているんじゃなかったでしたっけ?」
そう言われてハッとする。
「そう言えば言っていたな・・・」
「フフ♪ 流石の龍徳さんも愛しの我が子には冷静さを失うんですね♪ 慌てている龍徳さんなんか滅多に見られないからちょっと嬉しいかも♪」
「クッ・・・悔しいが反論の余地がないな。」
「フフ・・・でも私が来たからには、サッサと済ませちゃいましょう・・・光のテラエリアヒール!!」
エリアヒールにしたのは、ハルとの距離が離れているからだ。
「あれ・・・おかしいですね・・・」
「何をやっているんですレイナさん。」
苦しむ様子の無いハルがレイナに話しかけた
「ハルちゃん・・・」
「チッ! 隷属の魔道具か!」
「フフ・・・まさか私が洗脳されていると思っていましたか?」
「だったら仕方がないな・・・」
「オッと!龍徳さんは動かないでね・・・少しでも動いたら・・・」
「分かった俺は動かない・・・俺はな・・・」
「他の人も少しでも動いたら・・・分かってるよね。」
「分かったこの広場にいる俺達は動かない・・・」
「へぇ~聞き分けが良いんだね・・・」
「まあな・・・だが、ソーマ!!」
レイナの言葉で覚悟を決めた龍徳が上空で待機していたソーマへと声を向ける。
「グルル・・・待っておったぞ!」
シュッっと一瞬でハルの背後へと接近しハルの腕を取って羽交い絞めにする。
「クッ・・・嘘つき!」
「だから言っただろう・・・広場にいる俺達は動かないって・・・」
ハルへと話しかけながら歩いて近づくと倒れている龍聖を大事そうに抱き上げた。
トクン、トクン、トクン・・・
規則正しく動く龍聖の心臓の音を聞き幸せそうに微笑む。
「龍聖・・・ごめんな・・・」」
「グルル・・・洗脳魔道具があるはずだ。」
「クッ・・・離せ!!」
暴れるハルの鳩尾にソーマが軽く拳を叩き込む。
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