小さな小さな 大冒険!301
≪なるほど・・・それなら1日を約1時間程で見る事が出来るからか・・・そこまでして見守りたい場所だったって事か・・・≫
≪フフ。当然だろう。≫
≪で?その墓に俺の白骨が未だに残っているんだろう?≫
≪へぇ~・・・否にあっさりと受け入れたね・・・≫
≪ハハ。実感がないだけだ。≫
≪それもそうか・・・ハハ。何にしても君の行動に私の心が動いたのは事実だよ。その時、私自身で墓を作って君を埋葬したんだ・・・その時流した私の涙と君の身体が結びついた物・・・それが“神の涙”の正体だよ。≫
≪神が涙を流す程の出来事・・・それが口伝として残った訳か・・・だが、敵がそれを欲している理由は何なんだ? あるのは俺の大昔の死体だろ?≫
≪良い質問だね。さっきも話したけど私の涙と君の死体が結びついた時、一つのオーブに姿を変えたんだ。≫
≪死体が・・・流石、神様だな・・・≫
≪いや・・・あればかりは私にも予想外の出来事だったのじゃ・・・≫
≪予想外?≫
≪うむ。本来であれば、君の亡骸を棺に入れておくだけだったんだ・・・だが、私が涙を流した事で、余の理に干渉してしまったようじゃ・・・要するに黄金のオーブには、メシアとしての龍の因子と神の因子の一部が結合した物・・・と言う事じゃな。≫
≪龍と神の因子が混ざったオーブ・・・≫
≪そう・・・故に神の涙の事を今では、龍命石とも言うようじゃな。≫
≪龍命石・・・神に与えられた龍の因子を宿す生命の石・・・何かヤバそうだな・・・≫
≪うむ。確かに凄まじい力を持つ石なんだけど・・・≫
≪ん? 何だけど・・・?≫
≪ん~・・・本当なら悪魔にとっては、相反する力なんだよね・・・上位悪魔程度であれば、手に触れただけでも消滅する程だし、魔将クラスであっても触れる事が出来ないはずなんだよね・・・≫
≪なるほど・・・聖と邪、神と悪魔・・・相反する力って事か・・・それなのに敵が狙っている理由は何だ?≫
≪分からん。今話した通り、悪魔にとっては最悪なアイテムと言ったも過言では無いものじゃからな。≫
≪でも・・・万が一使いこなす事が出来たとしたら?≫
≪ふむ・・・そんな事があったら・・・記憶が戻らん今のお主には勝ち目がないであろうな。≫
≪話を聞いた限りでは、そんな事がしたよ。 嫌な予感がするな・・・。≫
≪ふむ・・・敵の正体が古の悪魔であれば知っているはず・・・ふむ・・・確かに只事ではないかも知れんな・・・何としても神の涙を敵の手に渡してはならん。≫
「ああ。勿論・・・渡しはしないさ。」
ルーとの会話を思い出している間に地下9階層へと辿り着いた。
「龍徳様!!」
階段を降り、9階層の大広間へと足を踏み入れた瞬間ナツが目を見開いて指をさす。
「あれは・・・ハルとアキ!!」
拷問器具の様な十字架に手足を貫かれて意識を失っている2人の姿があった。
その前にいるのは2体の悪魔。
遺跡に来てから常に身体強化を発動させている事で、5感の全てが強化されているからこそ見えるし敵の会話も聞こえて来る。
「クックック・・・気を失っても無駄だぞ・・・」
そう言って失神している様子のハルとアキに手を振れ闇の魔力を流した途端。
「グァァァァ~!!」
「ギャァァァァ~!!」
強制的に意識を戻された。
「答えよ!ナターシャはどこにいる!」
「応えんと今度こそ娘を殺すぞ!」
今まで何度も繰り返された拷問なのだろう・・・張り付けられたハルとアキの足元には様々な体液が飛び散っている。
「ゼヒュ~ゼヒュ~ゼヒュ~・・・知らないって言ってるでしょう・・・」
「ヒュ~ゼェ~ハァ~ゼァ~・・・早く殺せば良いじゃろうが・・・」
苦しそうな呼吸とは裏腹に目だけは力を放っている。
「だったら殺してくれるわ!!」
「「ギャァァァァ~!!」」
余りの苦痛に2人の目がグルンっと周り白目をむいて意識を失った。
「クッ・・・」
今にも2人を救出に飛び出そうとしているナツを手で制す。
「待つんだナツ!気持ちは分かるが、敵の注意を引くのが先だ。」
「そうですね。2人を人質にされては・・・」
「グルル・・・この距離なら行けるのではないか?」
確かに距離としては1㎞程もあるが、実際の距離で25メートル。
「そうだな・・・近づこうにもこれ以上進めば靴の音で気が付かれる恐れがある・・・」
「どうしますか部長。」
「よし・・・俺とソーマの2人で、敵を引き離す。レイナとナツは、その間にハルとアキを救出してくれ。」
「「はい!!」」
「了解だ。では、吾は右の悪魔を龍徳には左の悪魔を任せたぞ」
「分かった。敵を引き離したら結界を張れば被害を最小限に抑えられるはずだ。」
「グルル・・・そうだな。」
「全力で行くぞ・・・」
「うむ。」
見通しの良すぎる場所だからこそ作戦と呼べるようなものはない。
小石を投げて敵の注意を惹く様な真似も無駄だと分かるからこそ一か八かにかけるしかない。
「行くぞ!」
龍徳の掛け声と共に2人が壁を蹴って敵へと走り出す。
『流石は、神が作った墓だ・・・』
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