小さな小さな 大冒険!268
戦闘から僅か2分の出来事。
短時間で一気に決めるつもりだからこそ無謀とも言える魔力を使っていたのだ。
ここまでに龍徳が使用した魔力量の合計は既に9000万以上。
2分間で魔力が1700万は回復したものの魔力の残量は4700万となっていた。
短時間で魔力の半分失うと魔力枯渇が起こる。
先程も伝えたが、例えるなら短距離走の様な物。
僅か10秒の時間に全ての筋肉を使いきって走ると体力の消耗が激しいのと同じだ。
その行為を2分以上続けるとなれば無謀に決まっている。
出来る事であれば、毎分500万程度の魔力を注ぎたかったが、敵の接近がそれを許さない。
「はぁはぁはぁ・・・あ・あと・・・20秒・・・」
結界に注ぐ魔力は毎秒100万。
毎秒50万であっても厳しいのだが、何としてでも敵が来る前に結界を再構築し終えなければと無理に無理を重ねた龍徳らしからぬ無謀であった。
だが、これには理由がある。
敵の接近速度を計算したところ小人の体感速度で、時速8000㎞を超えているのだ。
これは、外の世界でも時速200㎞もの速度があると言う事。
この速度が、地面を走る速度なのであれば、龍徳も一旦手を止めて迎え撃ったのだが、未だ死の大地はノアズアークの影響で、地面をまともに走る事が出来ない状態だ。
更に付け加えるのであれば、密林の様に生い茂る死の大地の樹木の上を走るとしても他の3つの神級魔法によって全てではないが、半分以上の樹木が薙ぎ倒され雷によって燃え盛っているのだ。
魔法の効果は既に無くなっていると言っても、まともに樹木の上を走れるような状態ではなかった。
それなのに敵は、時速200㎞程で、龍徳へと向かっている事を考えると少なくとも音速を超える程の速度の持ち主と言う事になる。
魔力が枯渇している状態で、体力が低下している状態なのだ。
何としても敵の接近前に死の大地から脱出を図る必要があった。
「チッ・・・早過ぎる・・・時間を稼いでくれよ!巨神兵!!」
その瞬間、敵の影が日に照らされ浮かび上がったのだった。
■SIDE:アストゥー
これは、龍徳の決戦の少し前の話だ・・・
眠りについていたアストゥーが突如目をカッと見開いて王座から腰を上げた。
「やはり既に侵入しておったか・・・クッ・・・緊急を要する未来視でなければ、もう少し未来を見続けれたものを!! 忌々しいメシアが!!」
未来視によって龍徳の未来を見たアストゥーが眼光鋭く中を睨み付けた。
「こ奴らが目覚めていれば・・・否・・・これは、余の復讐だ・・・ちょうど良い・・・まだ間に合う・・・クカカカカ!・・・このまま余、自ら殺してくれるわ!!」
そう叫ぶと隣に置いてあった水晶球に手を翳し号令をかける。
「我が配下達よ!忌々しいメシアが死の大地の結界を修復しにやってきたようだ!! 直ちに奴を殺すのだ!!」
そこまで話した時だった。
目の前の3体の繭の内、一番右の繭が突如割れ始めた。
「おお!ビネガーが目覚めたか!!」
すると割れた繭の中から手が出て来て身体全体が見え始めた。
「良いタイミングで良くぞ目覚めたビネガーよ!!」
覚醒したばかりだからかキョロキョロと辺りを見渡しボォーっとした様子。
ツカツカとアストゥーが近づくとハッと我に返ったようにアストゥーの前に跪いた。
「進化に時間が掛かったのだな・・・済まなかったアストゥー様。」
「ふむ・・・記憶の障害はなさそうだな・・・」
「ああ。何の問題もなさそうだ。」
「ふむ・・・では、早速お前に命令を下すとしよう。」
「ほぅ・・・」
そして、ある命令をビネガーに下すと・・・
「面白い事になってるじゃねぇ~かよ!!」
「うむ。お主も余同様にメシアに辛酸を嘗めさせられたのだ・・・」
「ああ・・・あの忌々しいメシア野郎・・・今度は殺してやる・・・」
「まぁ待て!お主には、他にやって貰いたい事がある。
「ほぅ・・・」
そして、アストゥーがビネガーに話し終えると・・・
憎悪が表情を形作る。
20代半ばと言った中性的な顔ではあるが、鋭い眼光を放つ冷たい目が印象的だ。
体長は175㎝程度と大きくはないし、どちらかと言うとヒョロっとした感じだ。
漆黒の軍服の様な服装に着替えるとアストゥーに背を向けた。
「俺は行く。ヒャァ~ハハハハ・・・」
その顔は、凡そ人間と言うにはほど遠い何かが取り付いているかのようだった。
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